FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第二十六話 手料理

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 ティーポットから橙赤色の摘出湯が注がれると、沸き立つ草いきれめいたマスカット系のふくよかな香りが広がる。光沢のある白いマントルピースに飾られた小さな額縁や磁器の花束、そして時計と猫の置物を見ていた奈緒が、その香気に視線がさそわれて、ティーカップを見る。
「とっても広くて、びっくりした。それに、お と ぎ の 世界 みたいで き れ い」
「LDKがつながっているだけ。一部屋一部屋は広くないわ」
 まんざらでもない様子の杏奈に、南が声をかける。
「キッチンだけで1ルームマンション並みに広いよ。リビング一つで、二十畳くらいあるんじゃないの? ピアノがある隣の部屋もリビングだし。それにそのティーポットなによ。ベルサイユ宮殿にでもあったやつなの?」
「閉じ口にヒダがある時点で高級決定だよな。金で縁どられてるし」
 春樹が、ティーポットに描かれた桃色の牡丹の絵をのぞき込むように見る。それを気に留める様子も見せない杏奈が、同じ模様のティーカップをみんなに配り終えて言った。
「ちょっと待って」
 嫋やかに立ち上がってリビングから離れた杏奈は、象牙色で長毛のムートンを三枚持ってきて床に敷くと、みんなを見て音頭を取った。
「それじゃあ、食べましょうか」
 待ってましたとばかりに、四人は舌で唇をなめてソファからムートンへと腰を下ろす。
 奈緒が袋からパンを出しながら言った。
「“すこんる” だけでも 何種類もあるの よ。これとこれ なんか二種類あるの」
「別々のパンだけど……」
 杏奈がきょとんとしていると、南がフードパックを取って、強調するように持ち上げる。
「こっちとこっちでしょ」
 納得した様子の杏奈が、商品名を口ずさむ。
「アップルクラブルね。皮がある方が赤で、剥いてある方が黄色」
 そう補足して、次々とテーブルに並べられるパンを、唖然とした様子で二度見三度見して、眼輪筋を強張らせた。
「まだあるの?」
「まだまだある」嬉しそうに答えたこの子が、もういくつか出して「はい、これでおしまい」と締めくくった。
「全種類買ってきたんじゃないの?」
「ううん。全部じゃないよ」
 奈緒は、呆れる杏奈に真面目に答えた。一瞬、全員が沈黙する。
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