FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

第八十三話 生活の足跡

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 獣道じみた私道を戻った四人は、公道に出たところで夜陰に溶け込んだ建物がある方向を振り向く。今までいたアパートはシルエットすら見出すことが出来ない。
「なんか……過去にタイムスリップしたような感覚」杏奈が呟く。
「しかし、どうするか。手だてを失った以上、もうどうすることも出来ないぜ」
 春樹がそう言ってみんなを見渡すと、務が言った。
「もう一度警察署へ行こう。小沢さんのうちのあの感じなら、もしかしたら父子家庭かもしれない。そうなれば、引き取りに来てくれる人なんていないよ。事情を説明して、なんとか警察を説得しないと」
 杏奈と春樹が顔を見合わせる。それを見た奈緒が、「うん」と頷き、務を見てから一歩足を出した。務がそれに続くと、渋々といった感じを醸し出しながらではあるものの、他の二人も追随する。
「なんでそこまでして、小沢さんのことを?」杏奈が不安げな表情を見せて、務の背中を視線で追う。
 すぐに春樹が、嘆息交じりに言葉を吐く。
「なんか、ただののんべえだったな」
「たばこと無糖チョコレートが似合いそうなかっこいい人なのに、アルコール中毒だなんて、なんかもったいない。そういえば昔、海上保安庁の映画あったの知ってる? その主演俳優みたいだった」杏奈が答える。
「確かにあれ系統の顔立ちだったな。も少しスマートにした感じ」
 奈緒が、後ろの二人の会話に加わる形で、務に言った。
「背の高いお父さんだったね。ドアの枠に頭ぶつけ そう」
「うん。僕が百七十二センチだから、百八十はあったんじゃないかな」
 後ろから杏奈と春樹も返してくる。
「Tシャツにハーフのジョガーパンツが、とてもだらしなく見えたわね」
「ああ、袖なしアンダーシャツに青白[あおしろ]の縞々トランクスと変わらん見た目。Tシャツ白で、ボトムス灰色だったけど、記憶がなぜか改ざんされてく」
 奈緒が、思い出したように口を開いた。
「“あぱあと”は おんぼろけだった けど、部屋の中はきれいだった よ ね。なんか わたし、内緒だけど言っちゃう? 言っちゃう?」
「うしし」と笑う奈緒は、注目を集めてから続ける。
「部屋の中、もっと汚いと思ってた。シ ン クの 中とか、洗って な い食器が “まんまん”で、ごみ 袋 こんなで。ハエが 飛んでるの。“こでかい”やつ。くさいと思った。うふふ。ないしょ。でもないしょ。南ちゃんには ない しょ ね」





 
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