FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
347 / 838
二年生の一学期

第百十一話 上下関係の変化

しおりを挟む


 隣のテントからは、絶え間なく子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。青いベンチも白い席も空きが無くなるまでの盛況ぶりで、その光景は、エコみらい とごしの成功を物語っていた。
 奈緒が、ハッと何かに気がついたような深刻な相貌で視線を上げると、南の大きな瞳を見据えて戦慄く。
「今何時?」
「十二時ちょい前。心配しなくても、まだ大丈夫でしょ」
「そうか。ないしょね、これ、ないしょ。みんなのこと忘れて ま し た。いいよね、思い出したから」
「なんだかんだで雨降ってこないから助かったね。もしかしてこのまま晴れるんじゃない? ほら、雲の隙間から日光が差し込んでるよ」南が、静謐な光のベールを仰ぐ。
 カレーを食べ終わった奈緒は、青いペダル発電機でレースを楽しむ子供たちを応援したのち、南に案内されてエコステーションへと向かい、ひだまり高校のジャージを着た一年生に器を返した。
 美術部のそばへと続く階段を下り終えると奈緒が立ち止まって、青と白の縞々テントを後ろから見やる。
「少しお散歩していこう。公園広いから、みんな見て回りたい」
そう言って美術部のテントの横を通り過ぎて、小学校への道を歩く。
 しばらくの間二人は、会話がないまま進んでいって、途中の道を左折すると、池の上に伸びる橋を真ん中まで渡る。そこで眼下で遊んでいる子葉高校の生徒と子供たちを見つけて立ち止まり、それを眺めた。
 子供たちを瞠目しながら「なにをしているの?」と二、三質問した奈緒に答えた南が、手すりに手をついてそのまま黙りこくる。
 空気の変化に気がついた様子のこの子が、隣の頬へと視線を移ろわせていると、南は少し寂しげな表情を浮かべながらも微笑を絶やさずに言った。
「クラス違う子たちとも仲良くなれたんだね。そういえば、星野とも仲良さそうに廊下で話してるの見たことあるし、入学してきたばかりの頃がうそみたい。二年に上がった初日に、奈緒はコミュが作れるか心配していたけど、全然問題ない。入学した時から色々なところに友達の種を撒いていて、今それが芽を吹いてきたんだよ。心配なんてなかった。奈緒には、もうわたしなんて必要ないじゃん」
「なに言ってるの。しんにゅう…ちがう。しんにゅう。なんだっけ? わたしたちしんにゅう」
「親友?」
「そう。わたしにとって南ちゃんは、かけがえのない“しんにゅう”」
「そう言ってもらえると嬉しいけど、なんか申し訳ない気もする」
「それに、美術部の、あの子たちは、たぶん 友達じゃないの。三年と一年は当然そうだし、同級生の人たちは、三人とも心愛ちゃんの友達。がんばって話しかけたけど、よそよそしいし。それより、南ちゃんにも卓球のお友達ができて、わたしと遊んでくれなくて、寂しいです」
「あれは友達じゃないよ。卓球で混ぜてもらっているだけの関係だし。距離感ある」






































しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

処理中です...