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二年生の一学期
第百十一話 上下関係の変化
しおりを挟む隣のテントからは、絶え間なく子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。青いベンチも白い席も空きが無くなるまでの盛況ぶりで、その光景は、エコみらい とごしの成功を物語っていた。
奈緒が、ハッと何かに気がついたような深刻な相貌で視線を上げると、南の大きな瞳を見据えて戦慄く。
「今何時?」
「十二時ちょい前。心配しなくても、まだ大丈夫でしょ」
「そうか。ないしょね、これ、ないしょ。みんなのこと忘れて ま し た。いいよね、思い出したから」
「なんだかんだで雨降ってこないから助かったね。もしかしてこのまま晴れるんじゃない? ほら、雲の隙間から日光が差し込んでるよ」南が、静謐な光のベールを仰ぐ。
カレーを食べ終わった奈緒は、青いペダル発電機でレースを楽しむ子供たちを応援したのち、南に案内されてエコステーションへと向かい、ひだまり高校のジャージを着た一年生に器を返した。
美術部のそばへと続く階段を下り終えると奈緒が立ち止まって、青と白の縞々テントを後ろから見やる。
「少しお散歩していこう。公園広いから、みんな見て回りたい」
そう言って美術部のテントの横を通り過ぎて、小学校への道を歩く。
しばらくの間二人は、会話がないまま進んでいって、途中の道を左折すると、池の上に伸びる橋を真ん中まで渡る。そこで眼下で遊んでいる子葉高校の生徒と子供たちを見つけて立ち止まり、それを眺めた。
子供たちを瞠目しながら「なにをしているの?」と二、三質問した奈緒に答えた南が、手すりに手をついてそのまま黙りこくる。
空気の変化に気がついた様子のこの子が、隣の頬へと視線を移ろわせていると、南は少し寂しげな表情を浮かべながらも微笑を絶やさずに言った。
「クラス違う子たちとも仲良くなれたんだね。そういえば、星野とも仲良さそうに廊下で話してるの見たことあるし、入学してきたばかりの頃がうそみたい。二年に上がった初日に、奈緒はコミュが作れるか心配していたけど、全然問題ない。入学した時から色々なところに友達の種を撒いていて、今それが芽を吹いてきたんだよ。心配なんてなかった。奈緒には、もうわたしなんて必要ないじゃん」
「なに言ってるの。しんにゅう…ちがう。しんにゅう。なんだっけ? わたしたちしんにゅう」
「親友?」
「そう。わたしにとって南ちゃんは、かけがえのない“しんにゅう”」
「そう言ってもらえると嬉しいけど、なんか申し訳ない気もする」
「それに、美術部の、あの子たちは、たぶん 友達じゃないの。三年と一年は当然そうだし、同級生の人たちは、三人とも心愛ちゃんの友達。がんばって話しかけたけど、よそよそしいし。それより、南ちゃんにも卓球のお友達ができて、わたしと遊んでくれなくて、寂しいです」
「あれは友達じゃないよ。卓球で混ぜてもらっているだけの関係だし。距離感ある」
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