FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

第百二十八話 鳥野目街道

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 春樹はしてやったりと言った顔をしていたが、それでもその敗北を無視した南が、何かに気がついて言った。起死回生とばかりに張り上げた声で。
「あ、ほら、自販機あるよ、おしゃれなコインランドリーの敷地に」と指で示す。
「買わない」奈緒は確固たる意志を示して、頑なに拒絶した。
「こういうところは譲らないよね」
 南が呆れ気味に言ったあと、誰かが何かを言うまでもなく、垣根を越えて道路に影を落とす白い花を咲かせた一本の木に、みんなの注目が集まる。
「桜だ」
「きれーい」
 南と杏奈の声の音階が上がった。すぐにみんなは道路を斜めに横切る。
 春樹が疑問の眼差しを花に向ける。
「ほんとに桜か? 花びらが大きい気がする」
「ほんと、なんか違和感ある。ちがう?」と奈緒。
 花びらから枝を渡って細い幹を辿って頭を下ろしていった務が、またゆっくりと見上げていく。
「幹の感じは別の木だね。でも一本だけ白い花を咲かせているから、存在感が強調されてとっても美しいよ」
「あら?」杏奈が何かに気づく。「垣根の向こうに赤いつつじが咲いてる。しかも満開」
 しばらく鑑賞してから、みんなは再び歩き始めた。少し奥ばったところにバス停とゲートがある。
 春樹一人が歩速を速めて入り口に近づき、感慨深げに叫んだ。
「おおっ! ブリヂウッド[タイヤメーカー]那須工場の看板! ここで俺のバイクは作られているのか。清々しいまでのゴムのにおい。新しいマシーンの香りはうきうきするな」
「ただのママチャリじゃん。そもそも、ここで作られたとは限らないでしょ」
「夢ねーな」
 南に水を浴びせかけられた春樹が、じとっとした視線を送る。
「警備員さんに、あの花がなにか聞いてみよう」
 そう言った務が、先頭を切って歩みだす。だが結局分からずじまいだったので、真相の究明は諦める運びとなった。
 更に行くと「なんだよ、ななまーとあんじゃん」と、春樹が看板を射抜くように言葉を発した。
「本当だ。というか思い出した。ななまーと。昔来た時もあった。忘れてた」南があっけらかんと答える。
 奈緒が微笑ましい声を上げた。
「コンビニで休もう」
「必要ある? そんなに歩いてないでしょ」南が訝しげに訊く。
「あるよぉ。ジュース飲むの。あと、ちきや。ちきやじゃなくて……ちきや。ああもうだめ、言葉が 出 な い。ちきやじゃなくてうんどうやじゃなくて、なにしろ、、、」
「ちきや?」みんながそう呟いて、顔を見合う。
「ううん、ちきやじゃなくて……でもいいよね」
「うん、いいよ」南が適当に答えて、そのままうやむやにすると、唯一土地勘のある者らしく指示を出す。
「この先はさすがにコンビニないから、ここでトイレ済ませちゃいな」





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