FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🐿️

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 建物より何倍も広い敷地を見渡した春樹が呟く。
「贅沢な駐車場だな」
 ななまーとに入ると、真っ先に奈緒が口を開いた。
「こうやってさ、二十四時間の、すごい た す か る よね、あってよかったねぇ」そしてまったりと微笑む。
 春樹が同意するように頷く。
「確かに。東京にいるとあたり前だけど、ないと不便だよな」
 務が吹き出して笑った。
「同じ東京でも、高木のところは特殊だよね。戸越銀座商店街のど真ん中だから」
「まあ、確かに。ないものはないと言っても過言ではない。正直、商店街から出なくても生きていける」
 杏奈が店内を見渡す。
「イートインないね、買って出るしかないよ」
「ケセラセラ、違うな。カフェラテ買う」奈緒はそう言って冷蔵庫を開けて一本取って笑顔を振りまき、「ほんと天国。日本人でよかったぁ」としみじみと言った。だがそれもつかの間、ジュースを買ったあと、水がはられた田んぼを横目にななまーとの裏にある鳥野目街道に入るとすぐに愕然として、L字道路で立ち尽くす。
「これを行くの? どれくらい?」
 さっきまでの意気揚々とした表情は、見る影もない。双眸に映る交差点の向こうの道路は弓なりに右へと伸びていて、その先が見えない。
「さぁ、一時間くらいかな」南が答える。
 みんなで見やる街道の先は、どこまでもまっすぐ続いている。アスファルトの道路はまだ新しいのか少しも欠けたところもひび割れたところもない。左右には家々が立ち並んでいて、隣に図太い板室街道が敷かれているというのに、忘れられた旧街道的な雰囲気は微塵もない。
 春樹が目を細める。
「今までの南の説明に反して、小奇麗な住宅街じゃんな。聞いてた話じゃ、森の中に時々田んぼがあるくらいってことになってるけど、なんかこの街、どこまでも続いていきそうな感じだぞ」
 ばつが悪そうに、南が後頭部を掻く。
「あれぇ? こんなに発展してたかなぁ? この街道って。記憶では左右共々どこまで行っても鬱蒼とした森の中だった気がするけど」
「貸別荘まで、ほんとになんにもないの?」杏奈が訊く。
「さあ、ラーメン屋が一軒あったくらいしか記憶ないけど?」
「最低、タクシーで行こう」奈緒が呟く。
 杏奈が、エメラルドグリーンのラウンドネックをほぐしながら、心配そうにみんなを見た。
「さすがに成瀬さんにはきついかも」
「そうだね、みんなで出し合って、タクシー呼ぼう」務がスマホを出した。
 朗らかに笑った菜緒が、突然意味不明な発言をする。
「ほんとう、べんりで、“たちかわしょねぇ”」
「なにそれ」
 南がつっこむと、ああでもないこうでもないと翻訳を試みる理解できない面々に、菜緒が繰り返した。
「ホントに“たちかわしょねぇ”……ちがう?」
「ほんとに助かるね」
 ベリーショートのスパイキー少女が言い当てると、この子が追随する。
「?? たち…かわ…しょーーねぇ」
「助かるね」みんなが口を揃えた。
「?? たつ…かわ…る…ねぇ。“たつかわるねぇ”」
 何度か言い直して、ついにこの言葉を発する。
「本当、便利で助かる」
 奈緒はほっとしてけらけら笑った。


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