464 / 838
二年生の一学期
🐿️
しおりを挟む
奈緒がぶっきらぼうに言った。
「映ってないじゃん」
あからさまに気を悪くした店長が言葉を返さないのを見て、この子は「行こ」と一人ごちって背を向ける。
「それじゃあ、かばんから出てきた万年筆はどう説明するんですか? カメラに映っていなければ盗っていないと証明されたわけではないんですけどね」
店長は一矢報いるようにそう言って、VTRの確認を続ける。
下唇をかみしめてモニターを見上げる杏奈は、ライラック色でWガーゼティの二段ティアードのロングスカートを握っており、ここに入った頃から心なしか恐怖を覚えているようだったが、VTRがある部分に差し掛かると、さらに緊張の色を鮮明にした。
「杏奈ちゃんだ」振り返ってモニターを見た奈緒が呟く。
「うん。安いほうの万年筆コーナーで物色してた。わたし初めてここ来るから、高いコーナーがあるって知らなくて」
壁にある画用紙コーナーと一般万年筆コーナーで試し書きをする杏奈は、ふと顔を上げて静止すると、中央の導線へと向かい、カメラの撮影範囲から外れた。
安心した様子で微かに息を吐いた奈緒が口を開く。
「ほら、結局わたし盗ってないよ。こんなひどい扱い受けて、ひどいんだぁ。ぷんぷんだって、怒るかんね」
まくしたてられてムッとした様子の店長が反論した。
「じゃあ、いいですよ、もう警察呼びましょう。わたしでは対処できませんからね。泣いて謝っても店としては許しませんから」
「ええっ⁉」と杏奈が叫ぶ。店長が手を添えた受話器を押さえて哀訴する。
「ちょっと待ってください。この子がお店の物を盗ったのは、わたしから謝ります。でもこの子は身体障がい者で、自分の意思で言動をコントロールできないんです。学校でも勉強や友達関係も上手くいっていなくて、すごくストレスを抱えているんです。それでどうしようもなくて思わず盗ってしまっただけだと思うんです。万引きしようとかって意思があったわけではありません。この子がいい子なのは、友達のわたしが証明します。わたしが言って聞かせますから、二度としないって約束させますから、どうか許してください」
「映ってないじゃん」
あからさまに気を悪くした店長が言葉を返さないのを見て、この子は「行こ」と一人ごちって背を向ける。
「それじゃあ、かばんから出てきた万年筆はどう説明するんですか? カメラに映っていなければ盗っていないと証明されたわけではないんですけどね」
店長は一矢報いるようにそう言って、VTRの確認を続ける。
下唇をかみしめてモニターを見上げる杏奈は、ライラック色でWガーゼティの二段ティアードのロングスカートを握っており、ここに入った頃から心なしか恐怖を覚えているようだったが、VTRがある部分に差し掛かると、さらに緊張の色を鮮明にした。
「杏奈ちゃんだ」振り返ってモニターを見た奈緒が呟く。
「うん。安いほうの万年筆コーナーで物色してた。わたし初めてここ来るから、高いコーナーがあるって知らなくて」
壁にある画用紙コーナーと一般万年筆コーナーで試し書きをする杏奈は、ふと顔を上げて静止すると、中央の導線へと向かい、カメラの撮影範囲から外れた。
安心した様子で微かに息を吐いた奈緒が口を開く。
「ほら、結局わたし盗ってないよ。こんなひどい扱い受けて、ひどいんだぁ。ぷんぷんだって、怒るかんね」
まくしたてられてムッとした様子の店長が反論した。
「じゃあ、いいですよ、もう警察呼びましょう。わたしでは対処できませんからね。泣いて謝っても店としては許しませんから」
「ええっ⁉」と杏奈が叫ぶ。店長が手を添えた受話器を押さえて哀訴する。
「ちょっと待ってください。この子がお店の物を盗ったのは、わたしから謝ります。でもこの子は身体障がい者で、自分の意思で言動をコントロールできないんです。学校でも勉強や友達関係も上手くいっていなくて、すごくストレスを抱えているんです。それでどうしようもなくて思わず盗ってしまっただけだと思うんです。万引きしようとかって意思があったわけではありません。この子がいい子なのは、友達のわたしが証明します。わたしが言って聞かせますから、二度としないって約束させますから、どうか許してください」
0
あなたにおすすめの小説
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる