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二年生の一学期
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「誰か引導渡してやれよ」
鏡花がほくそ笑んだ瞬間、ガズッと衝撃音が響く。見ると、南が彼女の椅子の背もたれを蹴り飛ばした音だった。
「おお、こわっ。これ暴力、先生に言わないと。みんな見たよね、今の暴力」
鏡花が、教室全体に向かって喜々とした声を上げながら、センターパートのセミロングをかき上げて、押し殺した声で笑った。
半歩歩み寄った杏奈が、声をかける。
「成瀬さんがこんなことするはずないじゃん。みんな落ち着いて、とりあえず席に着こう。雷さん、今のことはちゃんとわたしから小沢さんに言っておくから」
「えー? やだよー」
「わたしが先生に報告しておく」
事態は一向に収拾しない。鏡花と早苗が煽っているのは明らかだった。二年に進級してから、表立ったいじめは教室にはびこってはいなかったが、奈緒の意味不明な言動やのろまな行動。そして何より、度々垂れるよだれを不潔に思っている者たちがいて、ここぞとばかりに攻撃をしだしたのだろう。
登校してきた生徒たちが、続々と集まってくる。黒板一面に描かれたセンセーショナルな文字の大半は、無造作に拭き散らかした黒板けしによって抹消されていたが、全体にちりばめられた細かい文からは、奈緒が万引きをしたという情報がまだ読み取れる。
それを見て、まことしやかに小声で話す生徒たちの声は、一つに混ざり合って怪物の唸りのように、みんなの足元でうねっていた。
杏奈の呼びかけは続いている。
「もうすぐ先生来ちゃうよ。成瀬さんもこんなこと気にしないで――」
わなわなと震えていた奈緒は、杏奈がしゃべり終えるのも待たずに勢いよく反転すると、少しふらつきながらドアを見やり、そのまま廊下へと向かって駆け出す。
すかさず南があとを追おうとする姿勢を見せると、間髪入れずに務も重心を前に傾けた。だが彼の手を掴んだ杏奈が、振り向いた務に向かって首を横に振る。その間にも奈緒は廊下に出て、教室から離れていった。
鏡花がほくそ笑んだ瞬間、ガズッと衝撃音が響く。見ると、南が彼女の椅子の背もたれを蹴り飛ばした音だった。
「おお、こわっ。これ暴力、先生に言わないと。みんな見たよね、今の暴力」
鏡花が、教室全体に向かって喜々とした声を上げながら、センターパートのセミロングをかき上げて、押し殺した声で笑った。
半歩歩み寄った杏奈が、声をかける。
「成瀬さんがこんなことするはずないじゃん。みんな落ち着いて、とりあえず席に着こう。雷さん、今のことはちゃんとわたしから小沢さんに言っておくから」
「えー? やだよー」
「わたしが先生に報告しておく」
事態は一向に収拾しない。鏡花と早苗が煽っているのは明らかだった。二年に進級してから、表立ったいじめは教室にはびこってはいなかったが、奈緒の意味不明な言動やのろまな行動。そして何より、度々垂れるよだれを不潔に思っている者たちがいて、ここぞとばかりに攻撃をしだしたのだろう。
登校してきた生徒たちが、続々と集まってくる。黒板一面に描かれたセンセーショナルな文字の大半は、無造作に拭き散らかした黒板けしによって抹消されていたが、全体にちりばめられた細かい文からは、奈緒が万引きをしたという情報がまだ読み取れる。
それを見て、まことしやかに小声で話す生徒たちの声は、一つに混ざり合って怪物の唸りのように、みんなの足元でうねっていた。
杏奈の呼びかけは続いている。
「もうすぐ先生来ちゃうよ。成瀬さんもこんなこと気にしないで――」
わなわなと震えていた奈緒は、杏奈がしゃべり終えるのも待たずに勢いよく反転すると、少しふらつきながらドアを見やり、そのまま廊下へと向かって駆け出す。
すかさず南があとを追おうとする姿勢を見せると、間髪入れずに務も重心を前に傾けた。だが彼の手を掴んだ杏奈が、振り向いた務に向かって首を横に振る。その間にも奈緒は廊下に出て、教室から離れていった。
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