FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

第百五十七話 杏奈の真意

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 瞼を下ろして杏奈の肩に顔をうずめていた奈緒が大きく深呼吸すると、ぎょろりと大きな両目を開いて道路を睨みつけた。
「わだじはやずまない。杏奈ぢゃん、そんなに想ってぐれるなら、がっごうにいがせてください、おねがいします。わだじ、うまくやるから、見捨てないでください。いつも 迷惑かけて申し訳ないけれど、助けてぐださい。お願いします。 わたしもみんなにお願いじて、仲良くする努力を します。よだれもたらしませんっ。わすれませんっ。字も書きますっ。ほいでから、つっ、つっ、ぅぅ――つぅっかえません。お願いじます。だから、見捨てないでぐださいっ」
 奈緒はギターの切れた弦ように叫びながら、絞り染めの濃紺の袖口を鷲掴みにしてこぶしを引き下ろす。
 眼球の表面に霜が降りたような眼差しの杏奈が静かに身を離して双眸を見やると、奈緒の瞳から溢れ出て頬を濡らす涙を白いハンカチで拭う。
「まだ分からないの? 味方になってくれる子たちは声を上げられないの。もし成瀬さんを庇って目をつけられたりしたら、今度は自分がいじめられてしまう。そんなふうに怯えている子たちに、どうして助けてって言えるの? みんな、あなたやわたしや小沢さんみたいに強くないんだよ。それでも自分のためにみんなをいじめの危険に晒すの?」
 答えない奈緒に対して、諭すような口調で続ける。
「みんな堪えられなくて、成瀬さんのこと恨んでしまうと思うよ、きっと。みんなが声を上げても大丈夫だって思える環境を作るのが先決。急がば回れって言うでしょ、お休みすることはなにも悪いことじゃないんだよ、今まで急ぎすぎてきたんだよ、ポジティブに考えて少し休もう。ね」
 憂悶する様子で頷く奈緒を見て、杏奈は笑っているのかにやけているのか分からない玉虫色の表情を浮かべた。
 奈緒が、小刻みに震えながら言葉の粒を落とす。
「じゃあ、わたし、どうすれば、いいの? そんなの、友達じゃ、ないじゃん。“ひよみ みどり”、どうこうどうこうって、友達じゃ、ないじゃん。わたしは、身体 障がい者で、不幸 なのに、五体満足の人が、見捨てたら、わたしは、生きては、いかれません。 だけれども、友達も、で“け”ません。だけれども、だけれども、助けてくれる、友達がいるって、信じ たいから、学校に 行 き ます」友達、友達、という言葉ばかりが粒立つ。奈緒は必死に訴えた。
「わたしがいるじゃない。今ここにいるじゃない」







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