FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
496 / 838
二年生の一学期

🐿️

しおりを挟む
 杏奈が奈緒を伴って車両から離れると、そっと抱きしめた。
「でもよかったぁ。署名集めしようと思っていたのよ。成瀬さんを復学させてくださいって。一時は転校って話が出ていたから、学年を越えたコンセンサスを得るのに必死だったの。段取りをつけたら報告しに行こうと思っていたんだけど、なかなか顔見せられなくてごめんね」
「ううん。杏奈ちゃんのこと信じてたから。南ちゃんからも、わたしを心配してくれるみんなを まとめてくれてるよって、教えてもらってた」
「そう、小沢さん来てたの」
 意外そうにそう言って南を見つめた杏奈に、彼女が言葉を返す。
「んー、そっとしておいたほうがいいって言われたけど、あんまり長く休みすぎるから心配でさ」
 務が、くすりと鼻を鳴らす。
「今日はたまたま生徒会の都合で朝早かったけれど、普段はいつも通りだから一緒に学校に行こうよ」
 はにかんだ様子で頬の内側に笑みを湛えた奈緒が上目遣いで務を見上げると、無言のそよ風が吹いたほんの一瞬を裂いて、杏奈が「そろそろ学校に行こうよ」と口を挟む。
 学校に着いて昇降口までやって来るとそこには、バスケのドリブルの練習をする体操着姿の春樹がいた。
「ようやく登校か。奈緒がいなくて寂しかったぞ。休んでいる間に区大会終わっちゃったし」
「またあったの? どんだけ~?」奈緒が驚く。
「インターハイは予選敗退だったから、反省試合みたいなもん。いつもの如くうちらはベスト8.品川区からは本戦に進めた学校なかったしな。そんでもって俺ら優勝」
「すごい」
 奈緒が褒め称える横で、南が冷めた目で二人を見やる。
「優勝ったって、練習試合ででしょ」
 ワイワイ大笑いしながらエレベーターで五階まで上がっていった奈緒だったが、教室を目前にするとしょんぼりしだした。心臓が打つ早鐘が鳴り止まない。
 誰も無理強いをしなかったが、無言で教室に入ろうと促すみんなの真ん中にいたこの子が、怯えて震えながらも恐る恐る教室の中を見やる。
「あ、成瀬さん、来たんだ学校。もう体調大丈夫なの?」
 奈緒の位置から対局にある窓側最前列の席にいた市川穂香が、驚きの声を上げで立ち上がった。すると、一緒にお喋りをしていた後ろの席の露木美奈子が振り向く。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
ライト文芸
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。 美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者! だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。 幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?! そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。 だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった! これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。 果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか? これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。 *** イラストは、全て自作です。 カクヨムにて、先行連載中。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

処理中です...