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二年生の一学期
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瑠衣が頷いた。
「最終的にはぁ、今までのなおちんがあったればこそだよねぇ。小学生のころから絵をやっていて美術部だったんでしょ。エコフェスで描いた絵ハガキ結構出回っているみたいだよぉ。メッセ送りあう時代に、暑中お見舞い送ろうかって話も聞かれたしぃ。ウィップスだってなにも言わなかったもんねぇ、さんざんなおちんのこといじめてたのにさぁ。部員じゃないらしいけど、事実上の部の幹部が敵に回らない以上、部員の中に反対派がいたとしても声高に主張できないもんねぇ」
着やせするタイプだった瑠衣の胸を、奈緒は視線で包む。この子の位置からは、光の加減か薄く桃色に染まった肩紐が見えた。
「迷惑かけてごめんね」
「とんでもない」慌てた様子で右の手のひらを激しく振りながら「わたしたちぃ、なにもしていないよぉ。軽率な行動は控えてみんなで動こうねって言われていたしぃ。なんていうの? 人間関係の合力が働いたっていうのかなぁ。一人一人の分力は小さかったと思うよぉ」と、助けを求めるように奈緒の後ろへと視線を向けた。
髪をかきあげた陽菜子が感嘆の声を上げる。
「でも廣飯さんすごいね、一年にも三年にも説得攻勢かけてたらしいじゃん。先生にも直談判してさ。わたしたちのところにも来たよ、鈴木先生に頼んでほしいって。本気で成瀬さんのこと復帰させたかったんだろうね、一年の時からどれだけ助けてきたかを切々と語るの。クラスの委員長になる人種って、わたしたちとは違うよね。そうやって意思疎通っていうか意思形成がなされていくんだって、ちょっと怖くなったくらいだよ、わたしそういうの苦手だからさ」
「具体的にはなんて?」奈緒が訊く。
「具体的? さあ。なんかあったかな? でも良心に訴えかけてくるっていうか。みんなそう思ってるんだなぁって知って、わたしも廣飯さんに続いて声上げなきゃって思えた」
瑠衣が微笑む。
「このクラスの吹部はみんな、なおちんの味方だよ。ほのの[瑠衣がつけた穂香のあだ名]のたちの歓待ぶりみたでしょ。少なくとも南さんと土屋君とわたしとひなちっちとほののとみっこ[美奈子]とゆうゆう[裕子]の五人は友達だからね」
奈緒のいだいていた心配を吹き流すように、少し強めの風が窓から入ってきた。その心地よさといったら、何事も無かったかのように復帰できたこの子のほっとした心境を表しているようであった。
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「最終的にはぁ、今までのなおちんがあったればこそだよねぇ。小学生のころから絵をやっていて美術部だったんでしょ。エコフェスで描いた絵ハガキ結構出回っているみたいだよぉ。メッセ送りあう時代に、暑中お見舞い送ろうかって話も聞かれたしぃ。ウィップスだってなにも言わなかったもんねぇ、さんざんなおちんのこといじめてたのにさぁ。部員じゃないらしいけど、事実上の部の幹部が敵に回らない以上、部員の中に反対派がいたとしても声高に主張できないもんねぇ」
着やせするタイプだった瑠衣の胸を、奈緒は視線で包む。この子の位置からは、光の加減か薄く桃色に染まった肩紐が見えた。
「迷惑かけてごめんね」
「とんでもない」慌てた様子で右の手のひらを激しく振りながら「わたしたちぃ、なにもしていないよぉ。軽率な行動は控えてみんなで動こうねって言われていたしぃ。なんていうの? 人間関係の合力が働いたっていうのかなぁ。一人一人の分力は小さかったと思うよぉ」と、助けを求めるように奈緒の後ろへと視線を向けた。
髪をかきあげた陽菜子が感嘆の声を上げる。
「でも廣飯さんすごいね、一年にも三年にも説得攻勢かけてたらしいじゃん。先生にも直談判してさ。わたしたちのところにも来たよ、鈴木先生に頼んでほしいって。本気で成瀬さんのこと復帰させたかったんだろうね、一年の時からどれだけ助けてきたかを切々と語るの。クラスの委員長になる人種って、わたしたちとは違うよね。そうやって意思疎通っていうか意思形成がなされていくんだって、ちょっと怖くなったくらいだよ、わたしそういうの苦手だからさ」
「具体的にはなんて?」奈緒が訊く。
「具体的? さあ。なんかあったかな? でも良心に訴えかけてくるっていうか。みんなそう思ってるんだなぁって知って、わたしも廣飯さんに続いて声上げなきゃって思えた」
瑠衣が微笑む。
「このクラスの吹部はみんな、なおちんの味方だよ。ほのの[瑠衣がつけた穂香のあだ名]のたちの歓待ぶりみたでしょ。少なくとも南さんと土屋君とわたしとひなちっちとほののとみっこ[美奈子]とゆうゆう[裕子]の五人は友達だからね」
奈緒のいだいていた心配を吹き流すように、少し強めの風が窓から入ってきた。その心地よさといったら、何事も無かったかのように復帰できたこの子のほっとした心境を表しているようであった。
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