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二年生の一学期
第百六十二話 務の後悔
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お昼休みも折り返し地点を迎えた校舎には、廊下にも校庭にも多くの生徒のはしゃぎまわる声が響いている。奈緒は、自分の席で瑠衣と陽菜子とお昼ごはんを食べてから、半分くらいの生徒がのんびりしている教室に残って、遊びに行く二人と別れて見送ったのち、廊下側から二列目三番目にある南の席に椅子を持っていって座り、楽しくお喋りをしていた。
休んでいる間に起こした失敗談などを楽しげに話していると、ここ最近の教室では聞きなれない男子の声が聞こえてきて、開け放たれた後ろのドアを奈緒が見やる。そこには、外国語で闘士という意味の名を持つ青いロボットについての格好良さ談議に花を咲かせながら務と共に教室へと足を踏み入れてくる春樹がいた。
「おお、奈緒、ちょうどいいところにいた」
喜びを表すかのようなバスケのドリブル風のスキップを踏みながら歩み寄ってくる彼の手には、白い紙袋がぶら下がっている。
「いいもんやるぞ、ほれ、これ」
「食べ物だ」奈緒が瞬時に反応した。
「よく分かったな」
「くれるの? いいの? なんで?」
まくしたてるように訊くこの子に、春樹が南の机越しに答える。
「復帰した日、誕生日だったろ」
奈緒は、彼の言葉を聞き落とすほど興味津々で袋を開けた。
「わっ、たい焼き。三つも入ってる」
そう言って、温かくて湿度の高い袋の中の空気を鼻でいっぱい吸い込んだ。
「奈緒の誕生日なんて、よく知っていたね」南が訊く。
「黒磯で言ってたじゃん。お前友達なのに覚えてないの?」
「面目ない。そういえば、同じ七月だって言っていたっけ」
申し訳なさそうな南を気にせず、奈緒が春樹に顔を上げた。
「全部いいの? 春樹君のは?」
「俺も食ったよ、つぶあんのやつ。だから全部やる」
それを聞いた奈緒は、宝石箱をひっくり返した時に放たれる煌めきのような笑顔で輝いて、「らっきーっ」と1オクターブ低く声を弾ませると、わんこのように溢れる興味を春樹の手元に示した。
その手には、明らかにたい焼きとは違う何かが握られていたが、この子の意識はもらったたい焼きに釘付らしく、とりあえず何から食べようか吟味している様子で袋をのぞき込む。
休んでいる間に起こした失敗談などを楽しげに話していると、ここ最近の教室では聞きなれない男子の声が聞こえてきて、開け放たれた後ろのドアを奈緒が見やる。そこには、外国語で闘士という意味の名を持つ青いロボットについての格好良さ談議に花を咲かせながら務と共に教室へと足を踏み入れてくる春樹がいた。
「おお、奈緒、ちょうどいいところにいた」
喜びを表すかのようなバスケのドリブル風のスキップを踏みながら歩み寄ってくる彼の手には、白い紙袋がぶら下がっている。
「いいもんやるぞ、ほれ、これ」
「食べ物だ」奈緒が瞬時に反応した。
「よく分かったな」
「くれるの? いいの? なんで?」
まくしたてるように訊くこの子に、春樹が南の机越しに答える。
「復帰した日、誕生日だったろ」
奈緒は、彼の言葉を聞き落とすほど興味津々で袋を開けた。
「わっ、たい焼き。三つも入ってる」
そう言って、温かくて湿度の高い袋の中の空気を鼻でいっぱい吸い込んだ。
「奈緒の誕生日なんて、よく知っていたね」南が訊く。
「黒磯で言ってたじゃん。お前友達なのに覚えてないの?」
「面目ない。そういえば、同じ七月だって言っていたっけ」
申し訳なさそうな南を気にせず、奈緒が春樹に顔を上げた。
「全部いいの? 春樹君のは?」
「俺も食ったよ、つぶあんのやつ。だから全部やる」
それを聞いた奈緒は、宝石箱をひっくり返した時に放たれる煌めきのような笑顔で輝いて、「らっきーっ」と1オクターブ低く声を弾ませると、わんこのように溢れる興味を春樹の手元に示した。
その手には、明らかにたい焼きとは違う何かが握られていたが、この子の意識はもらったたい焼きに釘付らしく、とりあえず何から食べようか吟味している様子で袋をのぞき込む。
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