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二年生の一学期
🐿️
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スニーカーの踵を潰して履いた魚子がシューズロッカー側に向き直り、左足を上げてヒールカウンターに指を引っかける。その正面には、前かがみになって黒いローファーをたたき[土間]に置くかおりがいる。
なんのやり取りもないまま、奈緒はこの三人と下校する方向に漂流していく。
ウィップスに囲まれた形で流されるままに校舎をあとにしたこの子は、話す言葉も見つからない様子で、魚子に続く二番目をてっくてっくと歩いていた。すぐ右後ろには暖乃、左後ろにはかおりがいて、見えない檻に閉じ込められて運ばれていくようだ。
ひだまり公園に差し掛かった頃、奈緒を取り巻く空気は手足にまとわりついて、どんな気体よりも重くてドロリとしたガスが充満しているような環境だった。
この重苦しい空気をなんとか変えたいと思ったのか、怖々と縮こまって眼球を震わせながら奈緒は、躍動するツインテールに話しかける。
「また、すごい髪型……だね、エクステ使ってないんでしょ」
「……ああ、お手入れが大変だけどね」魚子は、少しドスをきかせた低い声で答える。
「前の三つ編みもかっこよかったけど、今もかっこいい」
「三つ編み? ああ、ブレイズね。それほどいてスプリングにしたの」
「スプリング? それが? ほえぇ、ほんと螺旋 みたく くるくる巻いてきれい」
会話が続かない。何を発言しても邪慳な態度で返された奈緒は、諦めた様子で黙りこくる。それほど早い歩速ではなかったが、半身不随の身は少し早歩き気味で、どことなく必死さがうかがえた。
ゆらゆらと揺れるスカートから半分以上晒された太腿を視線でなぞり上げて、内腿の間に空いた逆三角形の隙間から向こうを見ていた奈緒を、魚子が一瞥もせず一つの質問を唐突に浴びせた。
「成瀬って彼氏いんの?」
びっくりした奈緒は瞳を白黒させ、その様子を目の端に寄せた黒目で見てくる魚子の横顔に向かって、ぶんぶんと手のひらを振って否定しながら、上目遣いでひきつる笑顔を向ける。
「えへっ、でもやっぱり憧れはある。今までちゃんと付き合ったことのある男子 い な いし。 おしゃべりしたり、一緒に帰ったり、デートしたり してみたいし、 あ こ が れ が あ る 。 だから ほしい かな? カレシ」
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