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二年生の一学期
第百六十九話 食い違う主張
しおりを挟む無機質な貯水槽室は静寂に包まれていた。
下劣なものでも見やるかのような六つの瞳が、救いを与える余地もないほど冷たい眼光を鈍く放っている。それらの視線を浴びながらシドロモドロ言い訳を広げようとする魚子の表情が耐えきれず、どろどろと溶けて地面にべちょりと落ちた。
務に睨まれて俯いてしまって言葉を返せない彼女の姿を確認した杏奈が、庇護欲を掻き立てるような弱弱しい態度で語り始めた。
「わたしが、成瀬さんをいじめから守るために、ウィップスに相談していたのはほんと。でも今日ここに連れてきて、脅しにかかるだなんて予想もしていなかった。わたしが加担していないのは信じて。わたしは成瀬さんのことを助けに来たの。そしたら案の定、三人が成瀬さんに暴力を振るっていて、ショックだった。わたしこういうのには慣れていないから、どうしていいか分からなかったけれど、必死に止めていたの。のーのが成瀬さんのこと脱がすって言った時だって、ちゃんと止めたのよ」
暖乃とかおりの間から一歩、二歩と歩み出てきた杏奈を、顔を上げた魚子が、それが何者かを確認するように凝視する。
「ちょっと待って、なに言ってるのよ、杏奈。あたしたちは、あんたの希望を叶えるために、成瀬をここに呼んだんだよ。土屋君にばれたからって、すべての罪をあたしらになすりつけるの? じゃあ言わせてもらうよ、全部杏奈が仕組んだことじゃない。成瀬が問題ばかり起こすからヘキヘキしてる、どうにかならないかって言って。パパ活やってるらしいって噂のある雷や茅根にも接触してたでしょ、なにさせる気だったの?」
「雷さんは、成瀬さんをいじめる急先鋒だったから釘を刺しただけよ。茅根さんは雷さんを押さえるために根回ししてた。それ以外の話はしていない。同級生を貶めるようなこと言うのはよして。そんな根も葉もないこと。そうやって勝手に話作って変に勘繰るのやめて。露見した悪事から自分が助かりたいからって、わたしに罪を転嫁しないでくれる?」
「万年筆の時だって、あんたその場にいたんでしょ? 実は自分で仕込んだんじゃないの? 成瀬を貶めるために」
「ひどいこと言わないで。なんでそんなことしなきゃならないの?」
「どうせ、土屋君の気でも惹きたかったんでしょ」
「なにをばかなっ」
杏奈が魚子の発言をやめさせるように、彼女の言葉を遮る。だが、長身から放たれる言葉はやまない。
「好きなんでしょ、土屋君のことがっっ」
「――っ」
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