FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🍭

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「奈緒は、ほんと頑張ったよ。あんな目に遭っても学校辞めるのを拒んでいたんでしょ。誰もができることじゃない。中学の時、ケンカなんて日常茶飯事だったけど、負けたやつはすぐ謝ってた。粋がってるやつらほど人目も気にせずに謝るの、ほんとヘタレだったよ。そう言うわたしもそうだったし」
 口端を少し上げて自嘲をする。
「ウィップス見たでしょ、わたしを前にして、なりふり構わず土下座してたじゃん。みんな、弱いやつには強いけど、強いやつには弱いんだ。でも奈緒は、多勢に無勢なあの状況下でも強かった。それ見てちょっと憧れちゃった。ちょっとうらやましかったよ、わたし実はヘタレだから。だから、あの女が言っていたことなんて気にしちゃだめだよ。そんなことなんて絶対にないんだから」
 甘ったるい香りを放ってベタつく砂糖液が奇麗に拭きとられて本来の可愛さを取り戻し始めると、ようやく奈緒の瞳にビー玉程度の輝きが灯る。そして精気が戻ってくるとすぐ、南の視線を求めるかのように黒目を虚ろに漂わせて、その双眸を弱々しく見張った。
「――ちゃん、南ちゃん……」
 ひどい仕打ちの記憶を反芻するかのように、強張る唇をわなわなと震わせて、かすれる言葉をこぼす。瞳からは、大粒の涙がぽろぽろと溢れて頬を転がってゆき、しまいには滝のように流れ落ち始める。
 さも自分の身に起きた出来事であるかのように顔を歪めた南は、同じように顔中の筋肉を痙攣させて、あふれる涙が溢水するのも堪えることなく、奈緒を見つめ続けた。
「つらかったよね、怖かったよね、ごめんね、わたしが、わたしが……もっと早く助けに来てあげられたら、こんなことにならなかったのに。もっと早くあの女の謀略に気がついていれば、こんなことにならなかったのに。悔しいよね、わたしも……悔しくてたまらない」
 小刻みに震える奈緒の喉から、嗚咽交じりの言葉が漏れ出るように聞こえる。なにか言おうと口をぱくぱくさせるこの子の後頭部をさすりながら南は、弱り切った少女の鼻先に自らの鼻先を近づけて、お互いの吐息が交わるほどの距離で唇を動かす。
「なにも言わないでいいよ。本当によかった、大事に至らなくて。あいつの言動に違和感を覚えていたのに、気がつけなくて本当に申し訳なく思ってる。ごめんね」
 胎膜から解放された赤子のように大声を張り上げて、わんわん泣きだした奈緒が、温もりを求めて肩へとすがりつくように顔をうずめる。
 南がそんな奈緒を抱きしめると、この子は堰を切ったように柔らかい胸の中で更に泣き崩れた。その声は全ての部屋に響き渡ると思えるほど大きかった。




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