FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
613 / 838
二年生の二学期

第百九十七話 おめでとう、十八歳

しおりを挟む
 花屋の左側から高架下を抜けると、公道に出る手前で奈緒が改まって三人を見やる。
「それでは、わたくし成瀬奈緒の、お誕生日会を始めたいと思います。“はっぷぃーばぁーすでー”、奈 緒」
 みんなが「ハーピーバースデー」と続ける。最後だけ、南と春樹が奈緒と付け加え、務だけが成瀬さんと言った。
「それでこれから、どうするの?」南がヒロインに訊く。
「はい、それでは、わたしが ご案内しますので、ついてきてください。楽しい、お誕生会を、ご堪能 あ れ」
 そう言って公道に出ると、すぐそばにある一軒のこじんまりとしたお店へと足を運ぶ。
南が頭を上げて、きょとんとした眼差しを送った。
「和菓子製造販売店? ここでなにか買うの?」
「そう。こんにちは。また来ました」
 そう言った奈緒は、左右をす巻きにして立てかけられた簾に挟まれた奥にあるショーケースの前に歩み寄る。
 筆の手書きで赤飯だのいなりずしだのと書かれた短冊が並ぶ向こうにかかった暖簾の奥から、男の人の声がする。
「いらっしゃいませ。今日は、大福と草餅とおはぎが作りたてですよ」
「塩大福を四つくださいな」
 奈緒が注文した直後、務が砂色のチノパンに包まれた足でこの子に歩み寄った。
「僕が出すよ」
 彼が代金を確認している間に、春樹が自分の財布をおしりのポケットから取り出すと、値段の約半分の小銭を、乾いた金属音と共にトレイの上へと置く。
「じゃあ、わたしも出すよ」と南が申し出たが、男子二人が軽く断った。
「それでは、いただきます」奈緒が、あんぐりと口を開けると、他の三人も一斉に塩大福を口にする。
咀嚼した甘い塊を咽喉に落とし込んだ南が、ぺろりと舌を出してから唇を開いた。
「ほんのり塩気があって、あんこの甘さを引き立ててるね。こういう和菓子屋さんで作りたてを買うことないから新鮮。心なしかどことなく瑞々しく感じる」
 春樹が思い出したように、まったりとした表情の奈緒を見やる。
「そういえば、また来ましたって言ってたな。バースデープラン立てるために一度来て食べて、本番でまた食べてるってことか」
「もちろん」
 呆れかえる三人に奈緒は、羨ましいでしょ、と言いたげな様子で微笑みかける。
「それじゃあ、始まったばかりで、まだまだ回るところがあるので、出発しまーす」






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

讃美歌 ① 出逢いの章              「礼拝堂の同級生」~「もうひとつの兆し」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う

もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。 将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。 サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。 そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。 サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。

処理中です...