FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の二学期

🍭

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 その背中に向かって、恭介が恐る恐る訊く。
「お義母さんは……妻の母親は、俺のことなんて言ってたの?」
「黒磯料理のお店の夢とか話してくれた。まだあきらめきれないみたいだったよ。いつか 叶えてくれるんじゃ ないかって、今でも畑残してるんだって。“もかし” よりも 小さくなったけど」
「小さく?」
「あ、悪く思わないで くださいっ。だってもう年だから、おっきい広さは 一人では無理だって。でもまだいち坪残ってるって。お手伝いしようと思ったけれど、広すぎて無理でした」
「?? 一坪ってこと? それ、このくらいだぞ」恭介が畳を指さして、二枚分を四角くなぞる。
「間違えた。ひと坪の間違い」
「おんなじ意味だけど」
「でも広い。こんなに」奈緒が上がらない右手までも使って大きさを表現しようと、腕を広げる。「うちの“うち”より広い」
 物思いに耽るかのように目を漂わせて、「んー」と生返事を返す恭介に、奈緒がいつになく真剣な眼差しを送る。
「ちゃんと話したほうがいいですよ。すれ違いがあるから。南ちゃんは、黒磯旅行するまで、お父さんに、見捨てられたと、思っていたから」
「そんなこと誰が⁉ 俺が見捨てるわけねぇ」胸から上を上げて叫ぶ。瞳は悲痛さで砕けていた。
「うん。おばあちゃんが、誤解を解いてた。南はお父さんに愛されていますよって。だから、お父さんに対しても、態度 変わらなかった?」
「ああ……」
 思い当たる節があるのか、恭介が思いを巡らせるように視線を右斜め下に下げる。そして、向こうを向いてかたつむりのように丸まる。しばらくして肩が震え始めたかと思うと、おいおいと声を上げて泣き始めた。
 そばによっていってひととき、「ねんねーこー、ころーりーよー、おこーろーりーよー」と歌いながら背中をさすってやっていた奈緒は、静かに立ち上がって食器を流しに持っていくと、それを洗って水切りかごに入れ、仏壇に供えたバナナを袋に戻して玄関へと向かう。
 気がついた恭介が顔を上げ、左手にぶら下がった袋に目をとめた。
「あれ? ちょっと待って、なんでバナナもって帰んの?」
「こりぇ、わたしの“おやちゅ”だから」
「しかも供えたのも持って帰る気?」
「香りを 楽しんで いただきました」
「ちょっと待って、全部持って帰るのかよ。そしたら俺、明日なに食って命繋げていけばいいって言うの?」
 もんどりうって向かってきた恭平にとめる暇を与えず、靴を履いて共用廊下に出た奈緒は、玄関ドアを閉めてアパートをあとにした。

 そのあとこの子は一人、日が暮れるまで南がいそうな場所を色々と探したが梨の礫だった。





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