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二年生の三学期
第二百四十二話 思い出のうんもちゃん
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お昼休み、男子たちが使い捨ての容器を買ってきた。みんなに配られていくそれを席で受け取って、「なにするの?」と奈緒が男子に訊く。
「これでお土産のうどん食おうぜ」
「やったー」奈緒がおしりで飛び跳ねるようにして喜んで、浮き浮きした様子で準備する男子たちを見守る。
幾つか借りてきたカセットコンロで鍋にお湯を沸かして、並んだ生徒たちが順々に湯がいてよそっていく。奈緒の分を作りに行ってくれたアンジェリカが、美奈子と香川旅行の話の続きをしながら戻ってきた。
うどんの器を一つ奈緒に渡した彼女が、ぱっつん前髪に隠れた瞼を弓なり閉じて、美奈子との会話を続ける。
「でも、旅行ってそういうほうが楽しいよね。わたしってば、そんなに計画ばったことたてないんだよ。ネットとか情報誌は使わないの」
「え? それで旅行できるの?」
「うん、出来るよ。銀座とか日本橋にあるアンテナショップに行って、パンフレット見てここ行きたいってところのを持ち帰って、それ見ながら時系列で行くとこ決めてくの。それだけ。あいまいだから細かいところ決めてなくって、ちょっと行き当たりばったり感があって楽しいんだ。途中で小さな観光スポット見つけたりして、予定変更って」
「隣の県て、完全に高知旅行破綻してるじゃない。不安じゃないの?」
美奈子が、Aラインの後ろ髪から回り込むようにして、心配そうに顔をのぞき込む。
「そう、それが面白いの。電車の中からなんとかさんのお城の跡があったのが見えたから、それ見物に行って、駅前に戻ってきて観光案内所に行ったんだけど、海の渦潮? みたいなやつとかロープウェーとか色々あるんだ。急いで決めないと陽がくれちゃうぞって思うと焦るんだけど、そのドキドキが楽しいのよ。それでも帰りのことも考えて渦潮は諦めたんだけど、山登りしようって決めてロープウェーのパンフ片手に案内書のおじさんに行き方訊いたらさ、ロープウェーはメンテナンス中で動いてないだって。わたし、うえーって思ったんだけど、よくよく考えたら、雪降ったら明日帰れるのかなって心配になって、本土旅行に変更。駅に行ったら、神戸と岡山に行く電車があって、両方とも新幹線で東京まで行けるから、岡山にした」
「どうして? 神戸のほうが東京から近くていいんじゃない?」
「神戸には行ったことあったから」
「でも、岡山にも行ったよね。フェリー乗りに」奈緒が指摘。
「ぷっ、それは行ったって言わないの」
三人して大笑いだ。クスクス堪えきれない笑いが尾を引く。
「でも確かにそうなんだよね。一度地面踏んじゃってるから、ちょっとした新鮮さに欠ける初旅行ではあったんだけれど、でもすごく楽しかったよ。徳島県でまずホテル取った後、そば雑炊食べた」
「これでお土産のうどん食おうぜ」
「やったー」奈緒がおしりで飛び跳ねるようにして喜んで、浮き浮きした様子で準備する男子たちを見守る。
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うどんの器を一つ奈緒に渡した彼女が、ぱっつん前髪に隠れた瞼を弓なり閉じて、美奈子との会話を続ける。
「でも、旅行ってそういうほうが楽しいよね。わたしってば、そんなに計画ばったことたてないんだよ。ネットとか情報誌は使わないの」
「え? それで旅行できるの?」
「うん、出来るよ。銀座とか日本橋にあるアンテナショップに行って、パンフレット見てここ行きたいってところのを持ち帰って、それ見ながら時系列で行くとこ決めてくの。それだけ。あいまいだから細かいところ決めてなくって、ちょっと行き当たりばったり感があって楽しいんだ。途中で小さな観光スポット見つけたりして、予定変更って」
「隣の県て、完全に高知旅行破綻してるじゃない。不安じゃないの?」
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「どうして? 神戸のほうが東京から近くていいんじゃない?」
「神戸には行ったことあったから」
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「ぷっ、それは行ったって言わないの」
三人して大笑いだ。クスクス堪えきれない笑いが尾を引く。
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