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二年生の三学期
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小百合が瞳を爛々と輝かせて、小さく拍手を繰り返す。
「すごいすごい。え~、成瀬さんが書いたの? 何枚あるの? 六ページ半? すごいすごい。でもここでは、固形物が食べられない子がいたり、アレルギーのある子がいたりして、お料理は持ち込んじゃいけないの。親御さんが用意したものか、ここで用意されたおやつをあげるだけです」
「そうなんですか」奈緒は残念そうに言った。
「でも成瀬さん、どっちが動かないの? 右? それじゃあ左の脳だ。神経がそうなっているから」
「はい、十五時間手術して、十日間意識不明でした」
「本当、大変」
「でも、生きていただけでよかったと思います」
「本当。介護認定受けてる?」
「介護1で、身体障がい者のは、3」
「そう。わたしの旦那も脳梗塞で寝たきりなの。だから成瀬さんみたいに出歩けなくて、いつも家にいる。出かける時はわたしが車で連れていってあげるの。レストランとか」
「わたしもおうちで寝ているのが好きです。そしてレストランも大 好き です」
「本当、なにが好きなの?」
「オムライスが好きです」
「あはは、そうなの、可愛い」
「タクシー券がもらえるので、本当に助かります。ありがたいです」
「そうそう、でも使いきれないよね」小百合は大笑いだ。
奈緒も大笑いしながら答える。
「わたしは、絵手紙教室とかに行くので、いつも使いますが、やっぱり余ります」
「へぇ~、すごい。うちの旦那はだめ。億劫で外に出ない。だけどハンバーグが好きだからそれ食べに行く。いつも五反田まで。チェーンのお店に。うん、採用。わたしがここの責任者だから、もう決定。でも珍しいよ。いつもあとで連絡するって伝えてそれから決めるのに、面接で即決って初めてかもしんない」
「えぇ~、うれしいです。がんばりますので、よろしくお願いします」
奈緒も小百合も終始笑顔で、和やかに面接が続いた。お菓子と紅茶が用意されて、夫と奈緒の病気談議に花が咲く。
順風満帆な面接であった。面接というよりお茶しただけといった感じで存分に楽しんだ奈緒たちは時間を忘れて話し続けて、お菓子がなくなった時に二人して我に返ってお開きになった。
初出勤は四月からだ。奈緒は、満足した様子で春宵を見上げて、暖かくほほ笑んだ。
「すごいすごい。え~、成瀬さんが書いたの? 何枚あるの? 六ページ半? すごいすごい。でもここでは、固形物が食べられない子がいたり、アレルギーのある子がいたりして、お料理は持ち込んじゃいけないの。親御さんが用意したものか、ここで用意されたおやつをあげるだけです」
「そうなんですか」奈緒は残念そうに言った。
「でも成瀬さん、どっちが動かないの? 右? それじゃあ左の脳だ。神経がそうなっているから」
「はい、十五時間手術して、十日間意識不明でした」
「本当、大変」
「でも、生きていただけでよかったと思います」
「本当。介護認定受けてる?」
「介護1で、身体障がい者のは、3」
「そう。わたしの旦那も脳梗塞で寝たきりなの。だから成瀬さんみたいに出歩けなくて、いつも家にいる。出かける時はわたしが車で連れていってあげるの。レストランとか」
「わたしもおうちで寝ているのが好きです。そしてレストランも大 好き です」
「本当、なにが好きなの?」
「オムライスが好きです」
「あはは、そうなの、可愛い」
「タクシー券がもらえるので、本当に助かります。ありがたいです」
「そうそう、でも使いきれないよね」小百合は大笑いだ。
奈緒も大笑いしながら答える。
「わたしは、絵手紙教室とかに行くので、いつも使いますが、やっぱり余ります」
「へぇ~、すごい。うちの旦那はだめ。億劫で外に出ない。だけどハンバーグが好きだからそれ食べに行く。いつも五反田まで。チェーンのお店に。うん、採用。わたしがここの責任者だから、もう決定。でも珍しいよ。いつもあとで連絡するって伝えてそれから決めるのに、面接で即決って初めてかもしんない」
「えぇ~、うれしいです。がんばりますので、よろしくお願いします」
奈緒も小百合も終始笑顔で、和やかに面接が続いた。お菓子と紅茶が用意されて、夫と奈緒の病気談議に花が咲く。
順風満帆な面接であった。面接というよりお茶しただけといった感じで存分に楽しんだ奈緒たちは時間を忘れて話し続けて、お菓子がなくなった時に二人して我に返ってお開きになった。
初出勤は四月からだ。奈緒は、満足した様子で春宵を見上げて、暖かくほほ笑んだ。
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