エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

文字の大きさ
24 / 107
王都

しおりを挟む
 フィーリアン城の大きな城門をくぐり城内に入ると、奥に長い階段と大きな踊り場のある演舞の間になっている。階段を上り背の高い扉を抜けた先は、中央にある槍のような宮城へと中庭を横断する、アロー殿の入り口になっていた。衛兵に案内され、アーチを描く高い天井の長い廊下を進んでいった。
 演舞の間もそうだったが、建物全体がとても窓が多い。全て人類の歴史や伝承を伝える物語を描いたものだ。他に印象的だったのは、絵の描かれた陶器製の大きな一枚板のタイルが壁にはめ込まれていること。一枚焼きなんて見るのはみんな初めてだ。
 ここはまだ丘の頂上部分ではないようで、踏面が5歩ほどの距離もある長い階段を上っていく。やっとの思いで宮城へとたどり着き、重そうな扉をくぐって会見の間へと向かった。
 途中、たくさん並んだ普通の窓から外を見ると、王都フィリスがずっと遠くまで広がっている。静かで気品があって活気のある美しい首都だ。
 通された会見の間は、壁じゅうに金や銀や宝石、伝統工芸であるガラス細工の飾りで彩られていた。左右にハイナイトクラスの騎士が整列している。その中央にある赤絨毯の先には、10段ほどの階段と、その上に大きな王座があった。そこに国王ハースティがお座りになられている。
 「おぉ、待ちかねたぞ。そなたらが、ゴブリンから村を救ってくれた者たちか・・・、礼を言うぞ」
 ゴブリンが村を襲おうとした理由がラングにあるとは言っていないので、誰も知らない。
 「あたりまえの事をしただけですから」
 他国の王に跪く気のないミリィは、見るからに平和そうで老いた国王に対し、躊躇することなく答える。
 「ミリィさん、頭が高いですよ」
 サラとラングは、慌ててミリィを跪かせようとする。
 「別にかまわん。それより私は、ゴブリンだけではなく、あの超強い天使さえも倒してしまったそなたたちに、ある頼み事をしたいのだが――」
 「頼みといいますと?」
 天使との戦いの話をしたのは、皇太子だけだ。何故そのことを既に知っているのか疑問に思いながら、ミリィは訊き返した。
 「実は、2日ほど前から・・・、私は・・」
 「・・・?」
 「私は、天使にとり憑かれてしまったんじゃ~! 死んでくれ~!!」
 国王の表情は変貌し、物凄い神気を発し始めた。
 「殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺す!!」
 ドドドドドドッ
 「『精霊よ』我が盾となれ!」 
 突風が吹いたように発せられた神気の中、打ち放たれたセイントクロスは精霊の盾を弾き、3人は入り口の扉まで飛ばされ激突した。こないだ倒した天使に勝らずとも劣らない神力である。
 ミリィは、内在する霊力を絞り出す。
 (マズイわね・・・、戦えるほど回復してない・・・)
 「ミリィさん、オーラでやちゃってください!!」とサラ。
 思いっきり期待しているのが分かる。それがすっごく重い。
 「で・・・できないわよ。王様まで殺しちゃうわ」
 戦うのがつらい状況を天使に悟られないように、王様を理由にオーラの使用を拒否した。
 「ミリィ殿! どうか国王陛下をお助けください!!」(騎士一同)
 そう言い残すと、そそくさと退室した。王室に仕える非戦闘員を避難させるために出て行っただけで、逃げるわけではない。そう叫びながら出て行く騎士の1人の声が、だんだん小さくなっていった。やはり残ったのは、ミリィ、サラ、ラングの3人だけだった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...