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地下要塞
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目の前には草一本すらない砂地が広がり、ほこらのようなものが一つだけある。ミリィは、ほこらにしるされているカイト・シールドと絡み合う蔦の紋様を知っていた。この紋様は、フィーリアンの国旗と同じものだったからだ。
数歩下がってほこらを見上げたミリィは、もう1つ気付いた。多分これは、ほこらではない。天を貫く鋭いランスのような尖塔は、フィーリアン城の屋根といっしょだ。ミリィは、砂に埋まってしまった砦なのだろう、と予想した。今はほこらと化しているが――。
ミリィの知っているフィーリアン特有のゴシック様式の建物と同じだとすれば、尖頭アーチ状の本体と数本の高い尖塔で構成されているはずだ。そのうちの1本が顔を出しているのだろう。
入口(窓であった部分)に法術トラップが仕掛けられている様子はないが、中に何者かがいるのは確実だ。ケースからここまで約半日、むかつくほどウジャウジャ出てきたゾンビやグールやスケルトンは、明らかにここへ近づけないようにしていた。
扉(木の窓)を開けると、内部は湿気っていて、壁中からネバネバした緑色の液体(スライムの一種)が噴出し、腐ったような匂いを放ちながら、外からの光で微かに光っている。入口から少し離れたサラは、手のひらに火の精霊を召喚し、祠に入るよう指示した。
数秒待つとゴォォォという爆音が轟き、奥に爆炎の光が見えたかと思うと、まるで火炎竜が炎を吐いたかのように、ほこらの入り口から一直線に炎が噴出した。2人は危うく丸焦げになるところだった。
黒い煤のついたほこらに近づくと、あの悪臭はなくなっている。サラの周辺にいる精霊が囁いてくれなかったら、毒気にやられて、すぐに死んでしまっただろう。
石で出来た壁は、崩れる様子もない。今の爆発でもほこらが倒壊しないところを見ると、相当強い造りをしている。
底の見えない螺旋階段を下りきり一つだけある扉をぬけると、そこはもう入り口からの光が届かなかった。本来なら一階部分であるはずのここは、完全な闇に閉ざされている。サラのそばにいる火の精霊だけが辺りを照らしてくれていた。松明も持っていたが、大きいだけで、何人もいる小さな火の精霊に比べては明るいとはいえない。
やはり、地上に造られたもののようだ。溢れた砂で埋まっているものの窓がある。
薄暗くはあるが、10メートルほど先まで見通せる。何が出てきてもすぐに反応できそうだ。しかし、あまり見たくないものも見えてしまう。魔術的に埋められたのか、壁と融合した白骨が覗いている。火の精霊が起こす炎にユラユラ揺れるその姿は、恐ろしく無気味だ。
「人骨? 羽(コウモリ風の)が生えてる・・・。 骨の形も歪だし、これ――デミヒューマンかしら。それともキメラ?」
魔術的に色々な種を融合させたキメラは、融合前と比べて桁外れの戦闘能力を持つ。大抵は頭が鳥で体が犬、といったつぎはぎの生き物である。だが、まれに完全に融合して新しい種が誕生する場合がある。現在は人類を使ったキメラは禁止されているが、過去の記録では、人工的に誕生した亜人種も存在する。
同じ合成生命体でもキメラと呼ばれない所以は、人類として交配が可能であったことと、創造主に従わずとも個として行動できることだ。実際、今なお絶滅せずに繁殖できている種(大抵の場合人獣)もいる。
数歩下がってほこらを見上げたミリィは、もう1つ気付いた。多分これは、ほこらではない。天を貫く鋭いランスのような尖塔は、フィーリアン城の屋根といっしょだ。ミリィは、砂に埋まってしまった砦なのだろう、と予想した。今はほこらと化しているが――。
ミリィの知っているフィーリアン特有のゴシック様式の建物と同じだとすれば、尖頭アーチ状の本体と数本の高い尖塔で構成されているはずだ。そのうちの1本が顔を出しているのだろう。
入口(窓であった部分)に法術トラップが仕掛けられている様子はないが、中に何者かがいるのは確実だ。ケースからここまで約半日、むかつくほどウジャウジャ出てきたゾンビやグールやスケルトンは、明らかにここへ近づけないようにしていた。
扉(木の窓)を開けると、内部は湿気っていて、壁中からネバネバした緑色の液体(スライムの一種)が噴出し、腐ったような匂いを放ちながら、外からの光で微かに光っている。入口から少し離れたサラは、手のひらに火の精霊を召喚し、祠に入るよう指示した。
数秒待つとゴォォォという爆音が轟き、奥に爆炎の光が見えたかと思うと、まるで火炎竜が炎を吐いたかのように、ほこらの入り口から一直線に炎が噴出した。2人は危うく丸焦げになるところだった。
黒い煤のついたほこらに近づくと、あの悪臭はなくなっている。サラの周辺にいる精霊が囁いてくれなかったら、毒気にやられて、すぐに死んでしまっただろう。
石で出来た壁は、崩れる様子もない。今の爆発でもほこらが倒壊しないところを見ると、相当強い造りをしている。
底の見えない螺旋階段を下りきり一つだけある扉をぬけると、そこはもう入り口からの光が届かなかった。本来なら一階部分であるはずのここは、完全な闇に閉ざされている。サラのそばにいる火の精霊だけが辺りを照らしてくれていた。松明も持っていたが、大きいだけで、何人もいる小さな火の精霊に比べては明るいとはいえない。
やはり、地上に造られたもののようだ。溢れた砂で埋まっているものの窓がある。
薄暗くはあるが、10メートルほど先まで見通せる。何が出てきてもすぐに反応できそうだ。しかし、あまり見たくないものも見えてしまう。魔術的に埋められたのか、壁と融合した白骨が覗いている。火の精霊が起こす炎にユラユラ揺れるその姿は、恐ろしく無気味だ。
「人骨? 羽(コウモリ風の)が生えてる・・・。 骨の形も歪だし、これ――デミヒューマンかしら。それともキメラ?」
魔術的に色々な種を融合させたキメラは、融合前と比べて桁外れの戦闘能力を持つ。大抵は頭が鳥で体が犬、といったつぎはぎの生き物である。だが、まれに完全に融合して新しい種が誕生する場合がある。現在は人類を使ったキメラは禁止されているが、過去の記録では、人工的に誕生した亜人種も存在する。
同じ合成生命体でもキメラと呼ばれない所以は、人類として交配が可能であったことと、創造主に従わずとも個として行動できることだ。実際、今なお絶滅せずに繁殖できている種(大抵の場合人獣)もいる。
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