73 / 107
地底湖
1
しおりを挟む
ズド~ン!!
ドドドドドドーッ!!
「なっ何!?」
爆音に飛び起きたミリィは、ドタバタと何度も転びながら、窓の外を見た。港に乱立する倉庫や付近の家々から煙が上がっている。
宿の人に望遠鏡を借りて海を見ると、海賊のものらしき数隻の船が、魔術かなにかで鉄丸をブッ放しながら接近してきていた。砦がなくなったのを聞きつけたのだろうか。
真ん中の一隻は明らかに海賊船だったが、周りの四隻は海賊船とばれないようにカモフラージュした船で、一見民間船に見える小柄な船だ。
甲板の上では、人魚(“じんぎょ”であって“にんぎょ”ではない。魚の人獣)を率いるハンマーシャークの魚人(人類の一種)が騒いでいた。
「ひゃっはっはっはっはっはっ~!!」
「死ね死ね死ね死ね~!!」
『世界生まれし時に生まれた 大いなる力
天空と地上と青き水を奏でし 大いなる力
右に破壊の刃 右に癒しの刃
清めの衣を纏う 偉大なる風の王 わが声に耳傾けよ
破壊の刃もちいて わが前に跪かせ』
ズドゴォォォン!!
「もう終わりか~!? まだ上陸もしてないのに~!!」
意気揚揚で攻め込んできた海賊船は、サラの精霊呪文一発で一瞬のうちに撃沈した。しょぼい海賊たちにはもったいないくらいの巨大な水柱が、数十秒にわたって墓標なり、町へ降り注ぐ海水の雨音が鎮魂歌を歌うように響く。
「それにしても、情報が行くのが早や過ぎないか?」
海水の雨が降り終えたことを確認したラングは、窓を開けながらミリィに話し掛けた。
「誰かが漏らしているとでも?」
「・・・近くに海賊のアジトでもあるんじゃないか?」
ミリィの横から割りいるようにウォーロックが答える。
「本当に在ったらやばいんじゃないの? ここら辺に軍事国が興って、フィーリアン連邦が瓦解したりして」
「フィーリアン騎士の前で言うことじゃないだろう?」
ミリィを除いたフィーリアン出身者一同が沈黙した。ミリィはバツがわるそうだ。
「でっ、でも、そういうことも考えておいたほうがいいでしょう? 公国の存亡を賭けた一大事なんだから・・・」
「まあ…そうだが・・・」
ラングは、ちょっとムカついたような表情で、ミリィの言い訳に答えた。
砦の人々を救出してから3日が経つが、邪教による町への報復は何もなく、ズメホスが復活したと思われる魔力も感じられない。洞窟を見に行くついでに、騎士であることを忘れないラングの主張を汲んで、海賊のアジトがないか調べることにした。
もしそれがあるとすれば、当然砦より外側だろうから、少し多めにお弁当を作ることにする。
まだ陽が昇ったばかりだからだろうか、砲撃を食らった倉庫には、所々赤々と燃えている建物があって消火活動が行われているにも関わらず、民衆は静けさを取り戻し、眠りについてしまったようだ。
建物の大半は石造りだし、巨大な水溜りである海がすぐそこにあるせいか、火事が広がったらという危機感は全くないのかもしれない。
何か特殊な力を習得ているわけでもないのに、自分よりも危機感のない町人に対し、ミリィは平和ボケすることに疑問を抱き、熱く語る。
「ねぇ~、ミリィさんも手伝ってくださいよー」とサラがぼやく。
「わたしは平和について語っているの! 邪魔しないで!!」
「語るっていったって、『平和すぎるのも危ない』ってところから、全然進んでないじゃないですかぁ」
「あっ、ばれてる?」
しぶしぶ、お弁当つくりに参加する。
母親に花嫁修行だとか言われてやらされていたミリィは、結構上手い。毎日が自給自足で自炊だったサラに引けを取ることなく、何とかやり遂げた。
・・・だが、輝かしい微笑みの裏に、自分は材料を切るだけで、調理するのはサラに任せたという巧みな戦術があったことは、言うまでもない。
ドドドドドドーッ!!
「なっ何!?」
爆音に飛び起きたミリィは、ドタバタと何度も転びながら、窓の外を見た。港に乱立する倉庫や付近の家々から煙が上がっている。
宿の人に望遠鏡を借りて海を見ると、海賊のものらしき数隻の船が、魔術かなにかで鉄丸をブッ放しながら接近してきていた。砦がなくなったのを聞きつけたのだろうか。
真ん中の一隻は明らかに海賊船だったが、周りの四隻は海賊船とばれないようにカモフラージュした船で、一見民間船に見える小柄な船だ。
甲板の上では、人魚(“じんぎょ”であって“にんぎょ”ではない。魚の人獣)を率いるハンマーシャークの魚人(人類の一種)が騒いでいた。
「ひゃっはっはっはっはっはっ~!!」
「死ね死ね死ね死ね~!!」
『世界生まれし時に生まれた 大いなる力
天空と地上と青き水を奏でし 大いなる力
右に破壊の刃 右に癒しの刃
清めの衣を纏う 偉大なる風の王 わが声に耳傾けよ
破壊の刃もちいて わが前に跪かせ』
ズドゴォォォン!!
「もう終わりか~!? まだ上陸もしてないのに~!!」
意気揚揚で攻め込んできた海賊船は、サラの精霊呪文一発で一瞬のうちに撃沈した。しょぼい海賊たちにはもったいないくらいの巨大な水柱が、数十秒にわたって墓標なり、町へ降り注ぐ海水の雨音が鎮魂歌を歌うように響く。
「それにしても、情報が行くのが早や過ぎないか?」
海水の雨が降り終えたことを確認したラングは、窓を開けながらミリィに話し掛けた。
「誰かが漏らしているとでも?」
「・・・近くに海賊のアジトでもあるんじゃないか?」
ミリィの横から割りいるようにウォーロックが答える。
「本当に在ったらやばいんじゃないの? ここら辺に軍事国が興って、フィーリアン連邦が瓦解したりして」
「フィーリアン騎士の前で言うことじゃないだろう?」
ミリィを除いたフィーリアン出身者一同が沈黙した。ミリィはバツがわるそうだ。
「でっ、でも、そういうことも考えておいたほうがいいでしょう? 公国の存亡を賭けた一大事なんだから・・・」
「まあ…そうだが・・・」
ラングは、ちょっとムカついたような表情で、ミリィの言い訳に答えた。
砦の人々を救出してから3日が経つが、邪教による町への報復は何もなく、ズメホスが復活したと思われる魔力も感じられない。洞窟を見に行くついでに、騎士であることを忘れないラングの主張を汲んで、海賊のアジトがないか調べることにした。
もしそれがあるとすれば、当然砦より外側だろうから、少し多めにお弁当を作ることにする。
まだ陽が昇ったばかりだからだろうか、砲撃を食らった倉庫には、所々赤々と燃えている建物があって消火活動が行われているにも関わらず、民衆は静けさを取り戻し、眠りについてしまったようだ。
建物の大半は石造りだし、巨大な水溜りである海がすぐそこにあるせいか、火事が広がったらという危機感は全くないのかもしれない。
何か特殊な力を習得ているわけでもないのに、自分よりも危機感のない町人に対し、ミリィは平和ボケすることに疑問を抱き、熱く語る。
「ねぇ~、ミリィさんも手伝ってくださいよー」とサラがぼやく。
「わたしは平和について語っているの! 邪魔しないで!!」
「語るっていったって、『平和すぎるのも危ない』ってところから、全然進んでないじゃないですかぁ」
「あっ、ばれてる?」
しぶしぶ、お弁当つくりに参加する。
母親に花嫁修行だとか言われてやらされていたミリィは、結構上手い。毎日が自給自足で自炊だったサラに引けを取ることなく、何とかやり遂げた。
・・・だが、輝かしい微笑みの裏に、自分は材料を切るだけで、調理するのはサラに任せたという巧みな戦術があったことは、言うまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる