104 / 107
剥魔
3
しおりを挟む
一瞬にして、ルーゲイルの周りの空間が歪む。振り向くと、2本の恐ろしげな角を生やした巨大な人型の山羊の悪魔が、防御結界を握りつぶそうとしている。
カラスのような羽をバサバサと羽ばたかせる悪魔を見上げる連合軍の兵士たちは、2体目の魔王が降魔したのだと絶望に打ちひしがれていた。
しかし、新たに現れた魔王が放つ魔力は、兵士たちを沈めたルーゲイルの魔力の海を侵食し、ついには、ルーゲイル本人へとその手を伸ばす。
それを意に介せず、ルーゲイルが言う。
「生きていたのか、バフォメットよ。しかしなぜ魔に堕ちたる神のお前が、大魔王と化した私に牙をむくのだ。
黙って静かにしていれば、我が配下に加えてやったものを」
「わしは、少々長く人間と胃過ぎたようだ。剣の中に封じられてはいたが、退屈はしなかったのだよ。
それにな、少なくとも私より力の強い新しい魔王など必要はないのだ、この地上にはな」
バフォメットは凄まじい魔力を発して、ルーゲイルの殲滅にかかった。雄たけびを上げるルーゲイルはそれを耐え抜き、自らの結界を握りつぶさんとする掌を両手で突いて血肉を握りつぶす。
結界の中にはバフォメットの魔力が充満してルーゲイルを蝕むと同時に、ルーゲイルは、突き立てた手から魔力を発して、バフォメットを侵食した。
「ミリィさん大丈夫ですか?」とサラ。
2号を回収したミリィは、サラの肩を借りて立ち上がった。
ウォーロックが空を見上げながら言う。
「鉄の剣が折れたら、死ぬんじゃなかったのか、騙されたぜ」
ここは魔神から近いせいか、4人の周りを渦巻くバフォメットの魔力によって、ルーゲイルの配下にいる悪魔たちは近づけない。中には、寝返る悪魔が出るほど混乱している。
悪魔教牝馬の爪の幾人かが叫ぶ。
「教祖様! 2体の魔王どちらにつきますか?」
「ルーゲイル様は我々ごと殺そうとしましたよ」
信者たちも真っ二つに割れて荒れ始める。2体の魔王の魔力にあてられた信者と魔獣は、ついに仲間割れをして戦い始めた。
サラに連れられたミリィと、ウォーロックに連れられたラングは、ロンドル将軍と合流して後退を余儀なくされていた。
徐々にではあるが、バフォメットの巨体が縮み始めている。ルーゲイルに比べて魔力の減少が激しいのだ。
そもそもルーゲイルは、もともとが天人という高度な体を有していた上に、現人神と化したミリィを利用して神体を手にいれ、ズメホスを吸収する事によって魔体をも手中に収めている。
もはや、その力は並の魔王を超越するばかりか、セレスティアル・ヒエラルキーの各クラスを束ねる長にも匹敵する力を有していた。まだズメホスと融合しきっていないとはいえ、その力はバフォメットを凌駕している。
「まずいぞ! このままじゃ、バフォメットのやつがやられちまうぞ」
ウォーロックは、落ちていたシルバーグレードを拾って身構えた。
よろめきながらもシルバーグレードを拾ったラングが言う。
「決死の覚悟じゃあないな、もう必死の覚悟か?」
「ちょっと待って、まだ1つ試したいことがあるの」とミリィが2人を制止する。「昔、幼稚園のときにお父様の書斎で見たサイキックの教典に書いてあったのを思い出したのよ」
サラ、ドン引き。
「幼稚園でサイキックの教典て、どんな幼児ですか?」
頭おかしいんじゃないか、という目でサラが見る。
ミリィが続ける。
「なんて書いてあったかは分からないけど、何となくイメージがあるのよ」
「それを使えば、勝てそうなのか?」
ラングの目に希望が灯った。
「分からないわ。でも、わたしが使える技よりも、その技の方が強いのは確かね」
ミリィが憶えているのは、技の名前と本に乗っていた図解のみだ。試みたところで、発動しなければ全てが終わりを迎えてしまう。
これが、最後のチャンスであった。
カラスのような羽をバサバサと羽ばたかせる悪魔を見上げる連合軍の兵士たちは、2体目の魔王が降魔したのだと絶望に打ちひしがれていた。
しかし、新たに現れた魔王が放つ魔力は、兵士たちを沈めたルーゲイルの魔力の海を侵食し、ついには、ルーゲイル本人へとその手を伸ばす。
それを意に介せず、ルーゲイルが言う。
「生きていたのか、バフォメットよ。しかしなぜ魔に堕ちたる神のお前が、大魔王と化した私に牙をむくのだ。
黙って静かにしていれば、我が配下に加えてやったものを」
「わしは、少々長く人間と胃過ぎたようだ。剣の中に封じられてはいたが、退屈はしなかったのだよ。
それにな、少なくとも私より力の強い新しい魔王など必要はないのだ、この地上にはな」
バフォメットは凄まじい魔力を発して、ルーゲイルの殲滅にかかった。雄たけびを上げるルーゲイルはそれを耐え抜き、自らの結界を握りつぶさんとする掌を両手で突いて血肉を握りつぶす。
結界の中にはバフォメットの魔力が充満してルーゲイルを蝕むと同時に、ルーゲイルは、突き立てた手から魔力を発して、バフォメットを侵食した。
「ミリィさん大丈夫ですか?」とサラ。
2号を回収したミリィは、サラの肩を借りて立ち上がった。
ウォーロックが空を見上げながら言う。
「鉄の剣が折れたら、死ぬんじゃなかったのか、騙されたぜ」
ここは魔神から近いせいか、4人の周りを渦巻くバフォメットの魔力によって、ルーゲイルの配下にいる悪魔たちは近づけない。中には、寝返る悪魔が出るほど混乱している。
悪魔教牝馬の爪の幾人かが叫ぶ。
「教祖様! 2体の魔王どちらにつきますか?」
「ルーゲイル様は我々ごと殺そうとしましたよ」
信者たちも真っ二つに割れて荒れ始める。2体の魔王の魔力にあてられた信者と魔獣は、ついに仲間割れをして戦い始めた。
サラに連れられたミリィと、ウォーロックに連れられたラングは、ロンドル将軍と合流して後退を余儀なくされていた。
徐々にではあるが、バフォメットの巨体が縮み始めている。ルーゲイルに比べて魔力の減少が激しいのだ。
そもそもルーゲイルは、もともとが天人という高度な体を有していた上に、現人神と化したミリィを利用して神体を手にいれ、ズメホスを吸収する事によって魔体をも手中に収めている。
もはや、その力は並の魔王を超越するばかりか、セレスティアル・ヒエラルキーの各クラスを束ねる長にも匹敵する力を有していた。まだズメホスと融合しきっていないとはいえ、その力はバフォメットを凌駕している。
「まずいぞ! このままじゃ、バフォメットのやつがやられちまうぞ」
ウォーロックは、落ちていたシルバーグレードを拾って身構えた。
よろめきながらもシルバーグレードを拾ったラングが言う。
「決死の覚悟じゃあないな、もう必死の覚悟か?」
「ちょっと待って、まだ1つ試したいことがあるの」とミリィが2人を制止する。「昔、幼稚園のときにお父様の書斎で見たサイキックの教典に書いてあったのを思い出したのよ」
サラ、ドン引き。
「幼稚園でサイキックの教典て、どんな幼児ですか?」
頭おかしいんじゃないか、という目でサラが見る。
ミリィが続ける。
「なんて書いてあったかは分からないけど、何となくイメージがあるのよ」
「それを使えば、勝てそうなのか?」
ラングの目に希望が灯った。
「分からないわ。でも、わたしが使える技よりも、その技の方が強いのは確かね」
ミリィが憶えているのは、技の名前と本に乗っていた図解のみだ。試みたところで、発動しなければ全てが終わりを迎えてしまう。
これが、最後のチャンスであった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる