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エピローグ
エスパー
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数年の年月が流れた。色とりどりの外壁をもつロココ調の大建築が立ち並ぶ港町を、1人の美しい女性が歩いていた。
枝毛の1本も無い美しい黒髪をなびかせてさっそうと歩くそのさまに、多くの男性が振り向く。
レアメタル製の軽武装をしているその女性は、右肩に何本かの飾緒が付いたエスプスの軍服を着ている。ジャケットについた階級章を見ると、少佐のようだ。
「あっ、ご苦労様、エルモ、わたしの荷物これで全部ね」
「はい、でも羨ましいですね、フィーリアン宮殿の再建が終わったパーティーに招待されるなんて、わたしもお供したいくらいです。荷物持ちでもボディガードでも何でもしますので、連れて行ってくださいよ」
「あはははは、人選は政府がしたんだから、わたしじゃどうしようもないわ」
「でも、100人単位で行くんですよね? わたし1人くらい混ぜてくれても、ばれませんよ」
部下の下士官であるエルモが食い下がる。
「んー、遊びじゃないのよ」
「分かりますよ、だってハイクラスのサイキックナイトばかりですもの。
普通、士官の護衛ってサイコソルジャーですから、違和感ムンムンです! 護衛する兵がされる兵より数段格上って、ありえません。同盟を周りに見せつけるためですよね」
現在において、“悪しき馬神戦争”と名付けられている戦いの後、疲弊したフィーリアンに代わって、北の亜大陸を治めるラルガルマン帝国と、大河を挟んで隣接する東の亜大陸にあるミッドエル王国の力が増していた。
ラルガルマンは、大河を挟んて南西に位置する西の亜大陸に軍靴を響かせ、同盟を組むミッドエル王国は、東に向かって注意を傾けていた。
長らく両国が軍事行動をとらずにいたのは、一重に中央亜大陸北部を治めるフィーリアン連邦王国と隣接していたため、拮抗した国力を破る事ができなかったからだ。
多くの騎士を戦死させたフィーリアン連邦王国は、新しく連邦に編入した飛び地のウェード王国を、先の戦いで広がった死の大地から守るので精いっぱいだった。そのため、北も東も睨めない状態に陥っている。
そこで、今回の落成式を利用してサイコラーク王国との関係を見せつけ、ラルガルマンとミッドエルに軍事圧力をかけよう、というのだ。サイコラークも、この機に乗じて、大陸に足場を築こうと考えている。
フィーリアン王国に向かう一団は、港を管理する砦で荷物検査を受け、政府が用意した軍船に向かう。
お見送りについてきたエルモが、回りを見渡しながら感嘆した。
「うあ、こんな待合室、こんなことないと使えませんね。わたしだったら、一生かかってもプライベートじゃ利用できませんよ」
「わたしもね」
「まっさかー、名門のお家柄じゃないですか、まだ若いのに少佐様だし」
「特進よ、この間の戦争で大手柄だったから」
手続きが終わった知らせを役人から伝えられて、VIP専用の待合室から出てきた2人は、ゲートの前で別れた。
「必ずお土産買ってきてくださいね。
ミカンのオバケのヤツ」
エルモは笑顔で見送った。
士官は、書類を出国管理の役人渡し、エルモに手を振る。
「サイキックナイト様ですか? お若いのにすごいですね、貴女が最後ですよ」
軍用のパスポートを開いて念写された絵と本人を見比べた役人にそう言われた女性士官は、否定して答えた。
「いいえ、違うわ。わたしはエスパーよ」
THE END
枝毛の1本も無い美しい黒髪をなびかせてさっそうと歩くそのさまに、多くの男性が振り向く。
レアメタル製の軽武装をしているその女性は、右肩に何本かの飾緒が付いたエスプスの軍服を着ている。ジャケットについた階級章を見ると、少佐のようだ。
「あっ、ご苦労様、エルモ、わたしの荷物これで全部ね」
「はい、でも羨ましいですね、フィーリアン宮殿の再建が終わったパーティーに招待されるなんて、わたしもお供したいくらいです。荷物持ちでもボディガードでも何でもしますので、連れて行ってくださいよ」
「あはははは、人選は政府がしたんだから、わたしじゃどうしようもないわ」
「でも、100人単位で行くんですよね? わたし1人くらい混ぜてくれても、ばれませんよ」
部下の下士官であるエルモが食い下がる。
「んー、遊びじゃないのよ」
「分かりますよ、だってハイクラスのサイキックナイトばかりですもの。
普通、士官の護衛ってサイコソルジャーですから、違和感ムンムンです! 護衛する兵がされる兵より数段格上って、ありえません。同盟を周りに見せつけるためですよね」
現在において、“悪しき馬神戦争”と名付けられている戦いの後、疲弊したフィーリアンに代わって、北の亜大陸を治めるラルガルマン帝国と、大河を挟んで隣接する東の亜大陸にあるミッドエル王国の力が増していた。
ラルガルマンは、大河を挟んて南西に位置する西の亜大陸に軍靴を響かせ、同盟を組むミッドエル王国は、東に向かって注意を傾けていた。
長らく両国が軍事行動をとらずにいたのは、一重に中央亜大陸北部を治めるフィーリアン連邦王国と隣接していたため、拮抗した国力を破る事ができなかったからだ。
多くの騎士を戦死させたフィーリアン連邦王国は、新しく連邦に編入した飛び地のウェード王国を、先の戦いで広がった死の大地から守るので精いっぱいだった。そのため、北も東も睨めない状態に陥っている。
そこで、今回の落成式を利用してサイコラーク王国との関係を見せつけ、ラルガルマンとミッドエルに軍事圧力をかけよう、というのだ。サイコラークも、この機に乗じて、大陸に足場を築こうと考えている。
フィーリアン王国に向かう一団は、港を管理する砦で荷物検査を受け、政府が用意した軍船に向かう。
お見送りについてきたエルモが、回りを見渡しながら感嘆した。
「うあ、こんな待合室、こんなことないと使えませんね。わたしだったら、一生かかってもプライベートじゃ利用できませんよ」
「わたしもね」
「まっさかー、名門のお家柄じゃないですか、まだ若いのに少佐様だし」
「特進よ、この間の戦争で大手柄だったから」
手続きが終わった知らせを役人から伝えられて、VIP専用の待合室から出てきた2人は、ゲートの前で別れた。
「必ずお土産買ってきてくださいね。
ミカンのオバケのヤツ」
エルモは笑顔で見送った。
士官は、書類を出国管理の役人渡し、エルモに手を振る。
「サイキックナイト様ですか? お若いのにすごいですね、貴女が最後ですよ」
軍用のパスポートを開いて念写された絵と本人を見比べた役人にそう言われた女性士官は、否定して答えた。
「いいえ、違うわ。わたしはエスパーよ」
THE END
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自分にとっては褒め言葉なのですが、エスパー&ソーサラーというタイトルで、ファンタシースターシリーズの初期4部作を思い出しました。
サイコソルジャーと魔導士の組み合わせは、最近はあまり見ないので逆に新鮮かも。
ご感想をくださってありがとうございます。
退会済ユーザのコメントです
ありがとうございます。