猫のモモタ

緒方宗谷

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生き急ぐ亀の話

ゆっくりと、地に足をつけて歩んでいこう。振り返ったりお休みしたって良いじゃないか

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 小学生の子供がいるお家の庭先に、大きなたらいがありました。
 普段は無いので気になったモモタは、庭に下りて見に行きました。
 「亀さんだ、このお家には亀さんがいたんだね。
  こんにちわ、何をしてるの?」
 「やあ、こんにちわ。
  僕はこれから外の世界に這い出して、立派な亀になろうと思うんだ」
 亀は後ろ足で立ちあがって首をうんと伸ばし、前足をモガモガしています。
 「良い調子だよ、頑張れ」
 モモタは応援しますが、何度もスッテンコロリ、ようやくたらいから出れたと思うと、水槽を洗っていたご主人様に見つかって、逆戻りです。
 「お掃除の度に挑戦するんだか、門のところに行くのが、精一杯だよ。
  モモタ君は、あの門の向こうがどうなっているか知っているかい?」
 「うん、知っているとも。
  このお庭よりも、うんと広いんだ。
  虫や動物も沢山いるよ 」
 亀は、悲しげに言いました。
 「僕は沢山の亀のいる池に行きたいんだけど、随分と足が遅いんだ」
 「ご主人様は良くしてくれるんでしょう?焦らずに地道に行こうよ。
 前のめり過ぎると、転んじゃうよ」
 「四つ足でもかい?」
 「うん、お友達のハムスターが、この間冒険に出たんだけど、散々さ。
  まずお布団の山に挑戦したんだけど、押し入れの屋根裏には沢山のネズミが住んでいて、何日も追いかけ回されたらしいんだ。
  今はゲージの中で、臥せっているよ。
  前もって行く場所を調べなきゃって、後悔してた」
 亀は、少し考えて言いました。
 「なるほど、僕は池に行く事ばかり考えていたけど、池がどこにあるかわからないな。
  カラスは向こうの方だって、クチバシを指していたけど・・・。
  もし池が小さかったら、亀がいなかったら、僕はそのハムスターと同じになるね」
 少しずつ旅の経験を積もうと思う亀でした。
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