猫のモモタ

緒方宗谷

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おせっかいな蜜蜂の話

やりがいが見失うもの

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 「蜜を集めるの、とても私だけじゃ出来ないわ、だからお願い」
 「良いさ、手伝ってあげるよ」
 あれこれと他の蜜蜂をかまってばかりいて、目が回っていた蜜蜂は、自分の仕事を周りにお願いするようになっていました。
 「お願い、向こうの花の蜜も集めなきゃいけないの」
 「お安いごようさ」
 初めは集めきれない蜜を集めるのをお願いしていた蜜蜂さんでしたが、どうも様子がおかしくなってきました。
 「ここの蜜も一緒に集めて、お願い」
 「もちろん良いとも」
 さっき向こうの蜜を集めてほしいと頼まれて集めてきた働き蜂は、戻って来るなり新しい仕事を頼まれて、一生懸命働きました。
 「あなたって、とてもたくましいのね、あの子が言っていた通りだわ。
  別の巣の働き蜂達も言っていたもの、あなたの働きぷりには敵わないって」
 「そうかい?それほどでもないけどなぁ」
 嬉しそうな働き蜂に、蜜蜂の女の子が言いました。
 「一緒にこの花の蜜も集めてくれるかしら」
 モモタは不思議に思いました。もともと全部女の子の蜜蜂が担当していたお仕事です。初めはやりきれない分を働き蜂にお願いしていたはずなのに、半分以上が働き蜂のお仕事になっていました。
 「手伝ってくれて、ありがとう。
  これはお礼よ、私の手作りの蜜キャンディよ」
 働き蜂はとても喜びましたが、ヘロヘロです。自分のお仕事もこなして、さらに女の子のお仕事もしたのですから当然です。
 モモタは、女の子が蜜を巣に持ち帰った後に、働き蜂に訊ねました。
 「あんなに働いたのに、キャンディ1つで良いの?同じ仕事でも、女王様からはもっともらえるでしょう?」
 満足気な働き蜂は答えます。
 「良いんだ、こんなに頼られるなんて、嬉しいじゃないか。
  僕は頼りにされているし、それだけの価値があるんだよ。
  もらえる蜜の量じゃないよ、僕は好きでやっているんだから」
 モモタはとても心配です。
 「でも、とても疲れているでしょう?身が持たないよ」
 「そんなことないさ、僕はとても元気だよ」
 しばらくして、蜜蜂の巣の近くを通りかかったモモタは、見慣れない小蜂が働いているのを見つけました。
 「あれ?まだ子供なのに、なんでは働いているの?お兄さんは?」
 小蜂は物悲しそうに言いました。
 「前までお兄ちゃんが働いていたんだけど、この間、倒れちゃったんだ。
  だから、僕が代わりに働いているんだ」
 モモタは、巣で臥せっているお兄さん蜂をお見舞いに行きました。
 「働き蜂さん、やりがいってやめられなくなるんだよ。
  誰かのために使うより、自分のために使おうよ」
 「そうだな、僕は利用されてしまったんだな」
 反省する働き蜂はまだ若いのに、とても老けて見えました。

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