猫のモモタ

世渡り上手なフェレットの話

遺憾（いかん）ってどういう意味？

　いたずらっ子のムロン君は、いつものようにおいたをして、ご主人様のお姉さんに怒られていました。
　ガミガミガミガミ、怒られています。
　モモタはベランダからその様子を見ていて、思いました。
　「今日は言い訳しないんだなぁ。
　　いつもだったら、色々やってから諦めて謝るのに」
　謝ってもおやつが貰えなさそうなのでしょうか。
　ムロン君は、しょんぼりしてずっと俯いています。
　怒り終ったごお姉さんがおトイレに行ったので、カギの開いていた窓を猫パンチ連打で開けて、モモタがカゴの前に来て慰めてあげようとします。
　ですが、モモタはすぐに気が付きました。
　なんとムロン君は、ケロッとしています。
　ムロン君は言いました。
　「ご主人様は、僕のために怒っていたんじゃないよ。
　　怒りたいから怒っていたんだ」
　「それ、普通じゃないの？」　
　「それが普通な人もいるね。
　　でも、僕を育ててくれた前のお家の店員さんは違かったよ。
　　僕が良い子になれるように叱ってくれてたんだ」
　「どう違うの？」
　「ご主人様は、怒りたい気持ちのために怒っていたんだ。
　　だから、僕は黙ってしょんぼりしていればよかったのさ。
　　怒鳴り散らせて気が済んだら、すっきり静かになれるからね」
　「それでしょんぼりしていたの？」　
　「そうだよ。言い訳しても取り繕うとしても、火に油を注ぐだけ。
　　何かを言って言葉を遮ろうものなら、吐き出していた怒りんぼが溜まって溜まって、よけい怒るよ。
　　もしかしたら、言いたいことを言えなかったばっかりに、他に言いたいことを思いつくかもしれないしね。
　　だから、今日は何もしないでしょんぼりしているのが正解なのさ」
　「謝りもしなかったね」
　ムロン君は、謝っても得しないとでも思ったのでしょうか。
　戻ってきたお姉さんは、モモタにおやつをくれません。
　クッションに座って、お洋服の雑誌を見始めました。
　モモタは感心しました。
　「本当だね、お姉さん、もう怒ってないや」
　「謝れば良いってこともないよ。
　　謝り損、怒られ損だってあるからね」
　悪いことの後始末なのに、シレッとしていられるなんてすごい子です。