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何も見てこなかったハマグリの話
思い出が自分を作る
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夕暮れ時、そろそろ帰ろうかな、と思ったモモタをひきとめて、ハマグリが言いました。
「僕は前に、がむしゃらに成長しようとしていたって話した事があったろう?
ぴかぴか光る真珠を作れるくらい立派なハマグリになってやろうって思っていたのさ」
「真珠を?可笑しいの、だってハマグリなんだから真珠作っても仕方ないじゃない」
「そうなんだ。そうなんだけど、その時の僕は分からなかったんだよ。
僕はハマグリなんだから、ハマグリらしく丸々大きくなっていけばよかったのに、周りにいたのが真珠貝ばかりだったものだから、僕も真珠貝のようにあるべきだと思ってしまったのさ」
何故なんでしょうか。モモタは、鳥になれたらいいなぁ、と思ったことはありましたが、羽を生やそうとしたことはありません。
「何でそんな風に思ったの?自分は自分じゃない」
「僕のお家の周りには、たくさんの真珠貝のお家があったんだ。だから僕の周りはみんな真珠貝ばかりだったんだよ。
僕はハマグリだから、本当はキラキラした真珠なんて興味なかったのに、みんなが真珠を持たなきゃ立派な貝になれないぞって言うんだ。
もし持てなかったらただのホタテにもなれないぞって言うんだよ。
おかしいよね、僕ハマグリなのに、なんで真珠貝になろうとしたんだろう。
僕の奥さんは、『ハマグリのままの僕が大好きよ』って言ってくれたのに、僕は無理して真珠貝になろうとしたんだ」
モモタは不思議でなりません。
「奥さんがそう言ってくれていたのに、何で間違っちゃったの?」
「大人になると、大切なものが増えてくるんだ。
どんどん増えてあれもこれも欲しいって思うようになって、貝殻の中に閉じ込めるんだけど、溢れて貝殻の中からこぼれていくんだ。
そしてなにもなくなるんだよ」
「どうすれば、なくならないの?僕、今までの大切を忘れたくなんかないよ」
「心が安らぐものを大切にしなければならないよ。
大人になったら、大切だと思えることを何か捨てなきゃいけない時が来る。
そうなったとき、本当の心の声に耳を傾けるんだ。
そうしなければ、入らない物ばかりが残って、最後は何もなくなるんだ」
「どうすれば良いの?」
「必要なものを選ぶのさ。大切だと思っていても、欲しいって思っていても、なくても困らないことなんてたくさんあるよ。
もしなくしたらもう手に入らない物は捨てちゃいけない。
でもまた手にはいるものは、どんなに大切でも、実はどうでも良いものなんだ」
「不思議。それだと、ごはんはどうでもよくなるよ。
でも食べないと死んでしまうでしょう?」
「ごはんそのものが大切なんじゃないよ。
ごはんなんて、お腹に入ったらみんな一緒さ」
それを聞いて、モモタは思い出しました。
「そう言えば、僕ごはんの記憶ってほとんどないや。
あるのは、ご飯をくれる祐ちゃんやママや、お世話になってきたお家の人達の想いばかり。他には、優しくしてもらえて心が安らぐ僕の気持ちばかり」
ハマグリは言いました。
「道しるべは心の中にちゃんとある。
進む事よりも立ち止まったり、振り返ったりする方が大切なんだ」
モモタは一度、祐ちゃんのお家に帰る事にしました。
「僕は前に、がむしゃらに成長しようとしていたって話した事があったろう?
ぴかぴか光る真珠を作れるくらい立派なハマグリになってやろうって思っていたのさ」
「真珠を?可笑しいの、だってハマグリなんだから真珠作っても仕方ないじゃない」
「そうなんだ。そうなんだけど、その時の僕は分からなかったんだよ。
僕はハマグリなんだから、ハマグリらしく丸々大きくなっていけばよかったのに、周りにいたのが真珠貝ばかりだったものだから、僕も真珠貝のようにあるべきだと思ってしまったのさ」
何故なんでしょうか。モモタは、鳥になれたらいいなぁ、と思ったことはありましたが、羽を生やそうとしたことはありません。
「何でそんな風に思ったの?自分は自分じゃない」
「僕のお家の周りには、たくさんの真珠貝のお家があったんだ。だから僕の周りはみんな真珠貝ばかりだったんだよ。
僕はハマグリだから、本当はキラキラした真珠なんて興味なかったのに、みんなが真珠を持たなきゃ立派な貝になれないぞって言うんだ。
もし持てなかったらただのホタテにもなれないぞって言うんだよ。
おかしいよね、僕ハマグリなのに、なんで真珠貝になろうとしたんだろう。
僕の奥さんは、『ハマグリのままの僕が大好きよ』って言ってくれたのに、僕は無理して真珠貝になろうとしたんだ」
モモタは不思議でなりません。
「奥さんがそう言ってくれていたのに、何で間違っちゃったの?」
「大人になると、大切なものが増えてくるんだ。
どんどん増えてあれもこれも欲しいって思うようになって、貝殻の中に閉じ込めるんだけど、溢れて貝殻の中からこぼれていくんだ。
そしてなにもなくなるんだよ」
「どうすれば、なくならないの?僕、今までの大切を忘れたくなんかないよ」
「心が安らぐものを大切にしなければならないよ。
大人になったら、大切だと思えることを何か捨てなきゃいけない時が来る。
そうなったとき、本当の心の声に耳を傾けるんだ。
そうしなければ、入らない物ばかりが残って、最後は何もなくなるんだ」
「どうすれば良いの?」
「必要なものを選ぶのさ。大切だと思っていても、欲しいって思っていても、なくても困らないことなんてたくさんあるよ。
もしなくしたらもう手に入らない物は捨てちゃいけない。
でもまた手にはいるものは、どんなに大切でも、実はどうでも良いものなんだ」
「不思議。それだと、ごはんはどうでもよくなるよ。
でも食べないと死んでしまうでしょう?」
「ごはんそのものが大切なんじゃないよ。
ごはんなんて、お腹に入ったらみんな一緒さ」
それを聞いて、モモタは思い出しました。
「そう言えば、僕ごはんの記憶ってほとんどないや。
あるのは、ご飯をくれる祐ちゃんやママや、お世話になってきたお家の人達の想いばかり。他には、優しくしてもらえて心が安らぐ僕の気持ちばかり」
ハマグリは言いました。
「道しるべは心の中にちゃんとある。
進む事よりも立ち止まったり、振り返ったりする方が大切なんだ」
モモタは一度、祐ちゃんのお家に帰る事にしました。
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