猫のモモタ

緒方宗谷

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愛を語るペルシャ猫の話

心の距離はなんの距離?

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 ある日の午後、モモタはマリーちゃんのお家に遊びに行きました。
 美味しい裂きかまぼこかに風味を貰ったので、マリーちゃんにおすそ分けしようというのです。
 「マっリぃーちゃん、あっそびましょー」モモタが呼び掛けます。
 ですがマリーちゃんは、なかなか出てきません。今日はお留守だと思ったモモタは、帰ることにしました。
 いつもマリーちゃんがいる出窓に背を向けた時に、お部屋の中の気配がモモタに伝わってきます。
 「マリーちゃん?」
 思わずそう声を出して、モモタは振り返りました。ですが、そこには知らないペルシャ猫の男の子がいました。
 その男の子が尋ねます。
 「誰だい君は?」
 「僕?僕は…えっと・・・」
 思わぬ出来事に、モモタはしどろもどろになりました。
 「あら?」
 そこに、マリーちゃんがやってきました。
 「モモタさん、こんにちは。遊びにいらしてくれたのね」
 すると、男の子が気がついて言いました。
 「君がモモタか、はじめまして、君の話はいつもマリーから聞いているよ。
  僕の名前は、フェリクス。マリーちゃんの婚約者さ」
 「ええっ!?」モモタは驚きました。
 まさか、大好きなマリーちゃんに大好きな男の子がいるなんて思わなかったので、モモタは動揺の色を隠せません
 モモタは、いつか必ずマリーちゃんとお散歩できる、日向ぼっこしながら毛繕いできる、と信じていました。
 窓ガラス越しではありましたが、いつも仲良く遊んでいたので、マリーちゃんも僕の事が好きだと思っていました。
 肉球を差し出せば、すぐに触れることが出きる距離にいると思っていたのに、急にマリーちゃんが遠くに感じます。遠すぎて見えなくなるほどでした。
 心の震えが溢れ出て、体までもが震え始めます。こんなに震えたのは初めてでした。
 力が抜けて、へたりこんでしまいそうです。
 それでもモモタは震えを押さえようと頑張って、なんとかマリーちゃんに言いました。
 「今日はフェリクス君が来ているからお邪魔はできないよね、美味しいごはんを貰ったからあげようつて思ったけれど、またにするね」
 「そうね、ごめんなさいね。その裂きかまぼこは大好きなごはんだけれど、さっき彼とごはんを食べたばかりなの」
 「うん、いいよ、僕が食べるから」
 そう言って2匹に背を向けたモモタは、走って丘を下っていきました。
 そしてモモタは、しばらく1匹で泣いて過ごしました。
 モモタは、必死にマリーちゃんを想いますが、まぶたの裏には、遠くにぼんやしとしたマリーちゃんしか浮かびません。
 姿ばかりか、声も香りも思い出せません。
 モモタはそれが悲しくて、余計に泣けてきました。


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