猫のモモタ

緒方宗谷

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嘘でも何でも言ったもん勝ち エキゾチックショートヘアの話

道徳を持ち出すのは、我を押し通すため。

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 ポカポカ日向ぼっこ日和です。
 お昼寝しようと思ったモモタが、空き地に通じるレンガの壁に空いた穴を通ろうとした時、前からどっしり猫が来ました。
 ちょうど2匹の猫がすれ違うことが出来る幅でしたので、モモタは少し端によってすれ違おうとしました。
 しかし、どっしり猫は真ん中をかっぽして来て言いました。
 「何でどかないの?どかないとぶつかるじゃない。
  もし俺が老い猫だったり子猫だったりしたら、危なくてどかないといけないじゃない」
 びっくりしたモモタが答えます。
 「僕はどいたよ、お互いがどき合わないといけないよ」
 すると、どっしり猫はモモタ以上に驚きます。
 レンガの穴をふさいだまま、説明を始めました。
 「老い猫にどけというの?君おかしいよ。
  いいかい、道は譲らないといけないんだよ、それが常識でしょ?
  どかないと尻もちついちゃうじゃない、あぶないよ」
 「僕はどいたのだから、来たのが君でなくて老い猫でも子猫でもぶつからないよ。
 「そんなの、今だから言えるんだろ?
  いいかい?もう一度言うよ?
  君が歩いてきたら、老い猫や子猫は危ないって思ってどかないといけなくなっちゃうでしょ」
 「僕は端に寄ったよ、真ん中を歩いている君はどかないの?
  そんなんじゃ、僕がどちらによっても通れないよ」
 呆れ顔のどっしり猫に、モモタが続けます。
 「自分が老い猫だったらっていうけど、逆だったらどう?
  君は真っ直ぐ来たよ、避けずに。
  なら僕が老い猫だったらぶつかっちゃうね」
 どっしり猫は、「分かんないやつだ」と捨て台詞を言って去りました。
 去ったのですが、2歩進んだかと思うと、振り返って言いました。
 「僕だったらどくよ、老い猫のためにね」
 呼び止められて、モモタはうんざりです。
 「君は僕を退かせたいだけでしょ?
  君が言っていることを君に当てはめると、君は君が言っていることに反しちゃうよ。
  君の言い方を借りると、こっちがもっと老人だったらどうするの?
  おんなじことばかり繰り返してるけど、ちゃんと理由を説明してよ」
 どっしり猫は、「分かんないやつだ」と捨て台詞を言って去ろうとしますが、またまた2歩進んだかかと思うと、振り返ってモモタを引きとめます。
 ですが、話す内容は最初と同じでした。
 モモタは、気持ちを抑えられなくて言っているだけだな、と思いました。
 言っても言い足りなくて戻ってきているのが、いい証拠です。
 モモタは、一言一言に対してちゃんと答えましたが、さっさと逃げるか怒ってみせるかしたほうが良いんだろうなぁ、と考えました。
 でも最後まで聞きました。

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