猫のモモタ

緒方宗谷

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自分の鳥生なのに他鳥任せなインコの話

心の鳥かご

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 最近山に住みついたインコたち、いつも誰かをうらやましく思って、夢物語を語っていました。
 大人しインコが、上下に体を揺らしながら、楽しげに言いました。
 「僕が犬だったら、果物屋さんに行って、サクランボを取ってくるのにな。
  だって、お手だってできるし、ちんちんだってできるんだもん。
  サクランボをもらってくるくらいわけないよ」
 「ほんとほんと」と他の2羽が相づちを入れます。
 今度は、大柄インコが言いました。
 「文鳥だったら、人間の言葉を話せるじゃん? 
  あーあ、文鳥に生まれたかったな。
  そしたら、人間のお家から引っ越さなかったのに」
 すると、小柄インコが言いました。
 「それにしても、人間もずるかったよね。
  自分達だけあんなに大きなお家に住んでさ。
  僕たちには、鳥かごだなんていう小さなお家しか用意しなかったくせに。
  僕たちだって家族だったんだから、同じような大きい家に住まわせるべきだったんだ」
 「そうだそうだ」と他の2羽がはやし立てます。
 小柄インコが続けて言いました。
 「僕が人間だったら、元ご主人様より大きなうちに住んでやるよ。
  そして君たちにもお家を作ってあげる」
 更に付け加えて、自分たちがいる木の下でお昼寝していたモモタに言いました。
 「君のことも飼ってあげるよ。
  僕のことご主人様って呼んでいいからね」
3羽は大声で笑いました。
 モモタは、言いました。
 「犬だからって、生まれつきお手が出来るわけじゃないよ。
  それにちんちんだなんて、なおさら出来ないよ。
  人間に教えてもらって、たくさん努力したから出来るようになったんだよ」
 すると、インコたちはそっぽを向いて話し始めました。
 「あんなこと言ってる」と大人しインコがヒソヒソ言うと、
 大柄インコが、
 「猫だから僕たちの苦労が分からないんだよ」
 とため息をつきます。
 「ずるいよね猫は。インコじゃないんだから」
 と小柄インコがモモタを横目でにらみました。
 確かに文鳥は人間の言葉を喋れます。
 ですが、インコの方がもっと上手に喋れるはずです。
 それにたくさんの言葉も覚えられるし、長い文章も作れるはずです。
 人間だって、簡単にお家を作れるわけではありません。
 たくさんの人が集まって、長い時間をかけて作っているのです。
 モモタは思いました。
 このインコたちは、みんなの手に入れるまでの苦労は見ていないのだと。
 自分が持っていない何かを手に入れた結果だけ見て羨ましがっているだと。
 だから3羽は寄りそっていて、それぞれのインコを、ぶつけどころのないわだかまりのはけ口にしているのかもしれない、と。



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