猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
305 / 514
大都会のお友達

むなしいや、心って

しおりを挟む
 遠くの空が大変騒がしかったので、モモタが見上げました。すると、なにやらとても大きな影が二つ争っていました。
 一体なんなのだろう、と思って行ってみると、沢山の鳥の群れでした。
 一つはインコの一団で、もう一つはムクドリの一団です。
 何やらケンカをしているようでした。
 インコたちが叫びます。
 「早く出てけよ、ここは僕らの縄張りだぞ」
 ムクドリが言い返しました。
 「嘘つくなよ、僕たちの方が先にいたんだ」
 負けじとインコも言い返します。
 「だから何さ、今は僕らの方が多いんだぞ」
 すごい光景だなぁ、とモモタが見ていると、道路の脇に生えているイチョウの並木から、カラスが話しかけてきました。
 「やあ、モモタ、君、そんなところで見ていて大丈夫かい?」
 「どういうこと?」
 「もうすぐ、鷹匠(たかじょう)がやって来るよ。
  彼はとても恐ろしいオオタカを連れているから、目をつけられたらたら鷹掴みにされてしまうよ」
 モモタは怖くなって、イチョウの木の影に隠れます。
 やがて空に「ヒューイー」とオオタカの鳴き声が響いました。
 瞬く間に、二つの影の集団は逃げていきます。
 ですが、彼らが隠れるまでの間に、オオタカは何匹も捕まえては鷹匠のことろに持っていきました。
 そして、また捕まえに飛び立ちます。
 ここら辺の町のイチョウの木には、たくさんのムクドリとインコが住んでいました。
 朝から晩まで口げんかを続けているので、とてもうるさくて堪りません。
 それに、相手にフンをかけあうフン合戦も繰り広げられていましたので、フン害もひどいものでした。
 それだから人間たちは、とても困っていました。
 そんな時に現れたのが鷹匠です。
 何人もの鷹匠がやって来て、ムクドリとインコを追い払いました。彼らはみんなのスーパーヒーローとなりました。
 ですが、隣の町が大惨事。それを聞いた鷹匠たちは、隣町に旅立っていきました。
 モモタは風の噂で聞きました。隣の町でも、鷹匠とオオタカたちはスーパーヒーローだともてはやされたって。
 何日もたったある日の午後、何台もの車がコンビニの駐車場にとまりました。
 どの車にも後ろの席には大きな鳥かごがあって、中にはオオタカが休んでいます。
 モモタは、その中の1羽に話しかけました。
 「スーパーヒーローのお帰りだ。どうだった? 隣町」
 すると、意外な返事が返ってきます。
 「ああ、散々さ。僕らは追い立てられて帰るところ」
 モモタはびっくりしました。
 「どうして? ムクドリとインコのケンカから人間を守ってあげに行ったんでしょ?
  それなのに、なんで追い出されるの?」  
 「初めはみんな感謝してくれたんだ。
  でもある時、ドローンとかいう変なお友達がたくさん飛んできてね、色々な音を立てたり、追いかけまわしたりして、インコとムクドリを追い出すことに成功したんだ。
  そしたら今度は、人間たちは、飼っている小鳥たちが怯えるからって理由で、僕たちを非難し出したんだ。
  それで田舎のお家に帰るところ」
 モモタは、それを聞いて、なんか心がしぼんで静かになってしまいました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

たったひとつの願いごと

りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。 その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。 少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。 それは…

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

処理中です...