猫のモモタ

コンクリートＺＯＯのお友達

溢れる感性無限に広がる

　モモタは、オランウータンのおじいちゃんに絵を見せてもらおうと、お家に遊びに行きました。
　するとオランウータンは、木でできた遊び場の高いところに座って、ボケーと景色を眺めています。
　モモタは遊び場を登っていって、話しかけました。
　「今日は描かないの？」
　「んー、今日はええんじゃ」
　「色で遊ぶのは飽きちゃったの？」
　「いんや、飽きとらんよ。今日は湧いてこんのじゃ」
　「湧いてこない？　自分で塗る色を決めるんじゃないの？」
　「ああ、それもできるんじゃが、それではただの色を塗っただけと変わらん。
　　この間を思い出してごらん。わしがか塗った色とモモタが見た色とで、見えた物が違っていたじゃろ？
　　それは、モモタの心がわしの塗った色から感じたものがあったからじゃ。そして意味を持たせたからじゃ。
　　そうじゃなかったら、モモタの見た大地はただの青い線だし、わしが描いた池も青い線じゃ。だって青い線じゃったじゃろ？」
　モモタにはよく分かりません。首を傾げていると、オランウータンは笑いましたが、それ以上は何も言いませんでした。
　そこでモモタは、オランウータンのそばで丸くなって、一緒に景色を鑑賞してみることにしました。
　オランウータンは楽しそうに、子供たちを指さして言いました。
　「蝶々が飛んでいるようじゃぁ。色鮮やかじゃのう」
　恋人同士の２人を指さして、
　「開きかけた花がおる。あれは白じゃな」
　動物園内には、動物たちのお家であるたくさんのオリが並んでいます。その形は様々でしたし、オリのないお家もありました。そして、たくさんの人の流れがありました。
　モモタにとっては、ただそれだけの光景でしたが、オランウータンには、春の麗らかな花園の景色が見えていたのかもしれません。