猫のモモタ

緒方宗谷

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神社のそばのお友達

死は生の延長線

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 春が訪れて、だんだんと暖かくなってきました。
 モモタにとっては楽しいお散歩日和。室外機の上はとても日当たりが良かったので、ここ最近、モモタはお昼寝もかねて、赤金魚の所に遊びに行くようになっていました。
 毎日毎日赤金魚は、ピョンピョン飛び跳ねながら、楽しい夢の話を聞かせてくれます。
 ですが、しばらくたったある日、モモタが遊びに行くと、赤金魚が金魚鉢の外でぐったりとしていました。
 「大変!」モモタは叫んで、窓を肉球で擦りすが、開きません。
 赤金魚は、弱々しい声で言いました。
 「楽しかったなぁ、僕の魚生」
 「なにを言ってるの?諦めないで、今助けるから」モモタは必死です。
 赤金魚はモモタに言いました。
 「諦めだなんて・・・。僕は楽しい日々を過ごせて、とても満足してるよ」
 「大空を飛ぶんでしょ?」
 「うん、飛べなかったけどいいんだ。
  だって飛ぶために一生懸命だったんだもん。やらなかったことなんてなんにもない。
  それに、僕は飛べたんだ。だって夢の中の僕は、いつだって大空を飛んでいたんだから。
  鳥になった赤金魚の女の子ともお友達になったんだよ。僕より真っ赤だったんだ。
  ほら、あそこのあの、あれみたいに、揺れるような長い羽をゆっくりと羽ばたかせて」
 モモタがみると、透けるほど薄いスカーフが、壁にかかっていました。
 口をパクパクしていた赤金魚でしたが、だんだんと口を動かす力もなくなって、あまり動かさなくなりました。
 それでも赤金魚は、微かな声で、モモタに語りかけました。
 「目を瞑ると、青いお空が広がってるよ。だんだん眠くなってきた。夢の世界に旅立つんだ。
  モモタ、夢の世界は、歩いても泳いでもいけるところじゃないから、すぐには会えないかもしれないけど、寝る前に僕を思い出して。そうしたら、きっと僕たち再会できるから」
 モモタは、何度もガラスを叩きながら、叫びました。
 「おねむにはまだ早いよ。だってほら、まだ太陽はお空にあるじゃない。お月様は出ていないよ」
 「あははぁ、おかしいの。だってモモタはいつもお昼寝してるじゃない。
  そうだ、今から一緒にお昼寝しようよ。そうしたら、夢の中で会えるかも。
  一緒に雲の上まで遊びに行こう」
 不意に扉が開きました。大学生くらいのお姉さんが入って来て、「まあ大変」と叫びました。
 急いで駆けよってきて、赤金魚を両手の指先で挟んで、金魚鉢の中に戻します。
 その瞬間、息を吹き返した赤金魚は、とても元気よく泳ぎ始めました。そして「痛い!」と叫びます。
 勢い余って、金魚鉢にぶつかったのです。そして我に返って、辺りをキョロキョロ。そして言いました。
 「あれあれ? 雲は? 星は? 温かい太陽の海はどこ?」
 なんと、赤金魚は、永遠の眠りにつこうという最中、とても楽しく大空を泳ぎ回っていたのでした。

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