279 / 514
ウジ
恨みつらみは気持ちが良い
しおりを挟む
ハエたちの噂話は、樹海の片隅で広がっていました。
モモタが遊びに来ると、陰でこそこそ悪口を言います。
その噂は、日を追うごとに大きくなっていって、けもの道から離れたところに住む虫の耳にも入りました。
大半の虫たちの耳には聞こえませんでしたし、聞こえても気に留めなかったのですが、一部のハエたちは、自分のことのように、モモタを恨むようになりました。
みんな、モモタの動きに目を見張ります。
いつか、ウジいじめの現行犯を目撃してやろう、と思ったからです。
ですが一向に、モモタはウジをいじめません。
それもそのはずです。
だってモモタはウジをいじめたことがありませんし、いじめようと思ったこともありませんから。
そんなモモタを見ているにもかかわらず、みんなはモモタを疑いの目で見続けました。
いつまでもいつまでも、ウジたちが悪口を流していたからです。
ずっとそれを聞かされていたハエたちは、いつまで経っても、モモタを恨み続けました。
その中にいたハエ子が言いました。
「試してみましょうよ。
もしモモタがウジを本当に嫌っているなら、わたしはハエとして許せないわ」
「でも、どうやって試そうか?」
そうハエ吉がウジ松に言うと、待ってましたとばかりに、ウジ松がいました。
「モモタは僕たちのことを嫌っているはずだから、俺たちを前にすると逃げ出すはずだよ。
だから、いつもモモタが歩いている道に落ちているうんこに、お引越しさせておくれよ」
ハエたちは、ウジの三兄弟の願いを叶えてあげました。
しばらくたったある日、ついにモモタがやってきました。
ハエたちは、息を殺して見ていました。
モモタは、風に乗ってやってきたうんこの匂いに気がついて、草の中に隠れて、別の道を行きました。
「そら見たことか」とウジ松が、興奮気味に言いました。
多くのハエは、なぜモモタが逃げたのかを考えもせずに、怒りに震えます。
末ウジが、泣き言を言い始めます。
「もうつらいよ。
あんな風にされたら、挫けてハエになれないかもしれない。
僕たち、ただモモタと仲良くしたいだけなのに」
モモタはなぜ逃げたのでしょうか。
モモタが逃げた理由に、ウジたちは全く関係ありませんでした。
ウジたちがお引越しをしたうんちは、実はクマのうんちでした。
モモタは熊に見つかって食べられたらどうしよう、と怯えて、身を隠して逃げたのです。
ですが、ウジたちにとって本当の理由なんてどうでも良かったのでした。
傷ついた。それが重要だったのです。
そしてハエたちにとっても、本当の理由なんて、どうでも良かったのでした。
怒り心頭で興奮する。その方が気持ち良かったからです。
モモタが遊びに来ると、陰でこそこそ悪口を言います。
その噂は、日を追うごとに大きくなっていって、けもの道から離れたところに住む虫の耳にも入りました。
大半の虫たちの耳には聞こえませんでしたし、聞こえても気に留めなかったのですが、一部のハエたちは、自分のことのように、モモタを恨むようになりました。
みんな、モモタの動きに目を見張ります。
いつか、ウジいじめの現行犯を目撃してやろう、と思ったからです。
ですが一向に、モモタはウジをいじめません。
それもそのはずです。
だってモモタはウジをいじめたことがありませんし、いじめようと思ったこともありませんから。
そんなモモタを見ているにもかかわらず、みんなはモモタを疑いの目で見続けました。
いつまでもいつまでも、ウジたちが悪口を流していたからです。
ずっとそれを聞かされていたハエたちは、いつまで経っても、モモタを恨み続けました。
その中にいたハエ子が言いました。
「試してみましょうよ。
もしモモタがウジを本当に嫌っているなら、わたしはハエとして許せないわ」
「でも、どうやって試そうか?」
そうハエ吉がウジ松に言うと、待ってましたとばかりに、ウジ松がいました。
「モモタは僕たちのことを嫌っているはずだから、俺たちを前にすると逃げ出すはずだよ。
だから、いつもモモタが歩いている道に落ちているうんこに、お引越しさせておくれよ」
ハエたちは、ウジの三兄弟の願いを叶えてあげました。
しばらくたったある日、ついにモモタがやってきました。
ハエたちは、息を殺して見ていました。
モモタは、風に乗ってやってきたうんこの匂いに気がついて、草の中に隠れて、別の道を行きました。
「そら見たことか」とウジ松が、興奮気味に言いました。
多くのハエは、なぜモモタが逃げたのかを考えもせずに、怒りに震えます。
末ウジが、泣き言を言い始めます。
「もうつらいよ。
あんな風にされたら、挫けてハエになれないかもしれない。
僕たち、ただモモタと仲良くしたいだけなのに」
モモタはなぜ逃げたのでしょうか。
モモタが逃げた理由に、ウジたちは全く関係ありませんでした。
ウジたちがお引越しをしたうんちは、実はクマのうんちでした。
モモタは熊に見つかって食べられたらどうしよう、と怯えて、身を隠して逃げたのです。
ですが、ウジたちにとって本当の理由なんてどうでも良かったのでした。
傷ついた。それが重要だったのです。
そしてハエたちにとっても、本当の理由なんて、どうでも良かったのでした。
怒り心頭で興奮する。その方が気持ち良かったからです。
0
あなたにおすすめの小説
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)
tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気!
人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説
たったひとつの願いごと
りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。
その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。
少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。
それは…
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
ぽんちゃん、しっぽ!
こいちろう
児童書・童話
タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる