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モモタとママと虹の架け橋
第三十六話 現れた危険
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ぎらぎらと太陽が輝いています。真夏が終わってからまだ日が浅いので、残暑と言われる時期でした。真夏の酷暑と違って、太陽は焦熱の白光を浴びせかけてはきません。それでも、日陰のない砂浜にいるモモタたちには、耐えられない暑さとなっていました。
アゲハちゃんが、海カメおばさんの様子の変化に気がついて鼻を撫でます。
「おばさんがどんどん弱っているわ」
みんな驚いて集まります。チュウ太が言いました。
「ええっ、何でだい? 水をかけてるのに」
海ガメおばさんは時折顔をゆがめながら、「苦しい…苦しい・・・」と唸っています。
「海水が足りないのかな」とモモタが言いました。
チュウ太が、「やっぱり何かの病気なんだよ。昨日食べたクラゲがいけなかったんだ」と言うと、キキが「まあ、病気じゃなかったとしてもお腹こわしてるんだろうな」と付け加えました。
モモタがみんなに悲しそうな顔を向けます。
「そうしたら、僕たちじゃどうしようもないよ。急いで人間を呼んでこなきゃ。僕行ってくるよ」
「わたしも行くわ」とアゲハちゃん。「ここ、あんまり人通り多くないでしょう? モモちゃん一匹だと、来てくれる人が見つかるか分からないし」
するとキキが、「なら僕も行く。空から見た方が人は見つかるよ。猫好きかどうかまでは分からないけど、人を見つけたら空から教えてあげる」
それを聞いていたチュウ太が言いました。
「じゃあ、僕は残るよ。おばさんに水をかけてあげないといけないし」
「そうだな」とキキが言います。「僕も時々水をかけに戻ってくるよ」
モモタたちは、チュウ太に海ガメおばさんを任せて、急いで海沿いの町へと駆けていきました。
みんなを見送った後チュウ太は、キキが海水を入れてモモタが掘った穴に入れておいてくれたコンビニ袋から、貝殻で海水をすくって海ガメおばさんにかけ始めます。
ですが、残暑厳しい炎天下。見る見るうちに、海ガメおばさんのウロコが渇いていきます。チュウ太が必死に水をかけてやりますが、全く間に合いません。
不意に、砂浜を踏みしめる音がしました。チュウ太が、キキか戻ってきたのだと思って振り向いて、顔を歪ませます。
視線の先には、三匹の猫がいました。見たところミケ一匹は飼い猫、黒猫と茶猫の二匹は野良のようです。三匹とも、モモタのお友達だとはとても思えない眼光です。チュウ太は警戒しました。
スマートなミケが、チュウ太に言いました。
「ようやく、茶トラとタカの子がいなくなったかと思ったら、なんだ? 変なのがいるぞ」
するとキューティクルがスカスカそうな黒猫が、「俺たちへの手土産じゃないか?」と言います。ぽっちゃりして間抜けそうな茶猫が笑いました。
チュウ太が、「な、なんだよ」と、警戒しながら言いました。「それ以上来るなよ。この海ガメ病気なんだぞ」
ミケが、「くくく」と笑って言いました。
「なおいいよ。海ガメなんて食べる機会ないからな。しかもネズミの付け合せ付きでさ」
一歩一歩歩みよってくる三匹の猫を前に、チュウ太はたじろいで後退り。海ガメの右前ビレにけつまずいて、ひっくり返りました。
三匹が笑います。ミケが子分らしき二匹の猫に向かって言いました。
「この砂浜の上じゃ、逃げも隠れもできやしない。先に海ガメの味を楽しもうぜ」
「ネズミの方が楽そうだぞ」と黒猫がミケに意見しました。「さっさとネズミを食っちゃったらどうさ」
「ネズミなんて食べ飽きているだろ。野ネズミも家ネズミもさ。それに、さっきの茶トラが戻ってきたときにネズミ質にしてやるんだ。それに、子供とはいえ鷹は侮れないしな」
それを聞いた二匹は、納得しました。
チュウ太にはどうすることもできません。海ガメおばさんのことを任された以上、ここから逃げ出すこともできませんでした。
ミケが、チュウ太を見下ろして言いました。
「そこをどけよ。どかないと先に食べてしまうぞ」
「ど・・・どけないよ。君飼い猫だろ。頼むよ。見逃してくれよ。だって人間からごはんもらえているだろう? わざわざ弱ってる海ガメ食べなくたっていいじゃないか」
「ああ、もらっているよ。ブリでもサバでも鶏肉でもね。でも今までカメはなかったよ」
そして続けて言います。
「お前は、一体何様のつもりなんだ? ネズミのくせに猫の前に立ちはだかるなんてさ」
その横で、茶猫が「ちゃんちゃらおかしいでやんの」と笑います。
ミケもつられて笑って、そして言いました。
「ネズミはネズミらしく隠れていればいいんだ。そして時々俺たちに食べられていればいいんだよ」
「なんだよそれ。僕たちは猫のごはんになるためにいるんじゃないぞ」
「猫のごはんになるためにいるんだよ」
ミケはそう言って、牙を見せます。
ですが、チュウ太は引きません。
その姿を見てミケが尋ねます。
「おかしなネズミだな。どうしてそこまでしてこの海ガメを守るんだ? お前、見たところ家ネズミだろ。海に住んでいる海ガメなんかと友達じゃないだろ」
すると、チュウ太が否定して言いました。
「友達さ。苦しんでいる海ガメを見つけた時から友達さ。だから助けてやるんだ」
「助ける? お前が? 出来るもんか。お前みたいな小さなネズミに何ができるって言うんだ」
ミケがそう言いながら、一歩、また一歩と歩み寄ってきます。
チュウ太、絶体絶命の大ピンチ。
アゲハちゃんが、海カメおばさんの様子の変化に気がついて鼻を撫でます。
「おばさんがどんどん弱っているわ」
みんな驚いて集まります。チュウ太が言いました。
「ええっ、何でだい? 水をかけてるのに」
海ガメおばさんは時折顔をゆがめながら、「苦しい…苦しい・・・」と唸っています。
「海水が足りないのかな」とモモタが言いました。
チュウ太が、「やっぱり何かの病気なんだよ。昨日食べたクラゲがいけなかったんだ」と言うと、キキが「まあ、病気じゃなかったとしてもお腹こわしてるんだろうな」と付け加えました。
モモタがみんなに悲しそうな顔を向けます。
「そうしたら、僕たちじゃどうしようもないよ。急いで人間を呼んでこなきゃ。僕行ってくるよ」
「わたしも行くわ」とアゲハちゃん。「ここ、あんまり人通り多くないでしょう? モモちゃん一匹だと、来てくれる人が見つかるか分からないし」
するとキキが、「なら僕も行く。空から見た方が人は見つかるよ。猫好きかどうかまでは分からないけど、人を見つけたら空から教えてあげる」
それを聞いていたチュウ太が言いました。
「じゃあ、僕は残るよ。おばさんに水をかけてあげないといけないし」
「そうだな」とキキが言います。「僕も時々水をかけに戻ってくるよ」
モモタたちは、チュウ太に海ガメおばさんを任せて、急いで海沿いの町へと駆けていきました。
みんなを見送った後チュウ太は、キキが海水を入れてモモタが掘った穴に入れておいてくれたコンビニ袋から、貝殻で海水をすくって海ガメおばさんにかけ始めます。
ですが、残暑厳しい炎天下。見る見るうちに、海ガメおばさんのウロコが渇いていきます。チュウ太が必死に水をかけてやりますが、全く間に合いません。
不意に、砂浜を踏みしめる音がしました。チュウ太が、キキか戻ってきたのだと思って振り向いて、顔を歪ませます。
視線の先には、三匹の猫がいました。見たところミケ一匹は飼い猫、黒猫と茶猫の二匹は野良のようです。三匹とも、モモタのお友達だとはとても思えない眼光です。チュウ太は警戒しました。
スマートなミケが、チュウ太に言いました。
「ようやく、茶トラとタカの子がいなくなったかと思ったら、なんだ? 変なのがいるぞ」
するとキューティクルがスカスカそうな黒猫が、「俺たちへの手土産じゃないか?」と言います。ぽっちゃりして間抜けそうな茶猫が笑いました。
チュウ太が、「な、なんだよ」と、警戒しながら言いました。「それ以上来るなよ。この海ガメ病気なんだぞ」
ミケが、「くくく」と笑って言いました。
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一歩一歩歩みよってくる三匹の猫を前に、チュウ太はたじろいで後退り。海ガメの右前ビレにけつまずいて、ひっくり返りました。
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「この砂浜の上じゃ、逃げも隠れもできやしない。先に海ガメの味を楽しもうぜ」
「ネズミの方が楽そうだぞ」と黒猫がミケに意見しました。「さっさとネズミを食っちゃったらどうさ」
「ネズミなんて食べ飽きているだろ。野ネズミも家ネズミもさ。それに、さっきの茶トラが戻ってきたときにネズミ質にしてやるんだ。それに、子供とはいえ鷹は侮れないしな」
それを聞いた二匹は、納得しました。
チュウ太にはどうすることもできません。海ガメおばさんのことを任された以上、ここから逃げ出すこともできませんでした。
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「そこをどけよ。どかないと先に食べてしまうぞ」
「ど・・・どけないよ。君飼い猫だろ。頼むよ。見逃してくれよ。だって人間からごはんもらえているだろう? わざわざ弱ってる海ガメ食べなくたっていいじゃないか」
「ああ、もらっているよ。ブリでもサバでも鶏肉でもね。でも今までカメはなかったよ」
そして続けて言います。
「お前は、一体何様のつもりなんだ? ネズミのくせに猫の前に立ちはだかるなんてさ」
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「おかしなネズミだな。どうしてそこまでしてこの海ガメを守るんだ? お前、見たところ家ネズミだろ。海に住んでいる海ガメなんかと友達じゃないだろ」
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「助ける? お前が? 出来るもんか。お前みたいな小さなネズミに何ができるって言うんだ」
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