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モモタとママと虹の架け橋
第百二十五話 誰かのために輝けること、自分のことに輝いてくれること
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トラックの荷台から下りたモモタたちは、そばにあった林で一夜を明かすことにしました。
夜のとばりがおりて、綺羅星という名の煌びやかな光が瞬いています。そんな星々を眺めながら、ふとモモタが語り始めました。
「祐ちゃんがご主人様で、僕本当によかったって思う。『宝石懸想』のお話を聞いて、僕思ったんだ。自分だけが輝くために頑張っていてもダメなんだって。誰かの輝きを感じて見られるようになるためにも頑張らなくちゃならないんだって。
祐ちゃんは、遊ぶのにもプラモを作るのにも一生懸命で、とても輝いているけれど、僕の輝きを感じて見てくれることにも一生懸命だったんだって思える。僕が毎日祐ちゃんのことを忘れたことがないように、祐ちゃんも僕のことを忘れないでいてくれたんだよ。
どんなに頑張って想いを募らせても、誰かの輝きを見い出せないとか、誰に届けていいか分からないなんていったら、どんなに眩しい光も誰にも届かないと思うんだ。だって今まで出会ったお友達にも、いつも自分のことばかり言う子や、誰かの言うことばかりを聞いている子がいっぱいいたけれど、とても幸せいっぱいって感じじゃなかった気がする。
どんなに自分一匹が頑張っても、それが自分のためだけの頑張りだったら、その輝きは誰にも届かない。誰かを輝かせたい、誰かのために輝きたいっていう想いがあるから、みんなとっても輝けるようになるし、みんなはきれいだって思ってくれるんだと思う。
だって僕たち、宝石に興味なんて全然ないでしょう? なのに僕は、虹の雫にだけはとっても美しいって思えたんだ。ううん、愛おしいって思ったの。それはママに会いたいって想いもあったんだけど、本当は違う。ママが僕に会いたいって、とても悲しんでつらそうにしているのがひしひしと伝わってくるから、僕は虹の雫を愛おしく思えたのかもしれない。
そう思うと人間って、とっても愛情深いお友達だよね。僕たち動物のほとんどは、自分とおんなじお友達としか仲良くしないでしょ? 猫同士とかネズミ同士とか。でも人間は違う。色々なお友達と仲良くなれるんだ。それって、誰でも分け隔てなく愛せるってことでしょ? 真実の愛を知ってるんだよ。
そう思うと、何だか分かる気がする、人間が宝石を大好きなのを。人間が宝石の輝きをきれいだって思うのは、誰かを輝かせたい、誰かのために輝きたいって思っているから、想いの結晶である宝石の輝きに、知らない誰かの、知っている誰かの輝きに想いを馳せているんじゃないかな。宝石の輝きを身にまとうことで、世界中に散らばっている光を繋げようとしているんだね。
僕は、今まで出会ったお友達の言うことをよく分からないなぁって思うことが沢山あったけれど、それで済ませて他の誰かのところに遊びに行かないで一緒に遊んでいたら、その子の輝きを見つけ出すことが出来たのかもしれない」
モモタの傍らの草の上で休んでいたアゲハちゃんが、優しげな笑みを浮かげて言いました。
「モモちゃんの言う通りね。わたし、宝石懸想のお話を聞いて、わたしの翅の輝きは、わたしが懸想した現れなんじゃないかって思うようになったの。でもこの輝きは同じ色じゃないのよ。その時の気持ちによって弱まってり強まったりしているのよ。心の持ちようで変わってしまうの。
それに、想いの輝きは目に見える輝きだけとは限らないわ。どんなにきれいなお友達でも、悲しかったり疲れていたりしたら、きれいに見えないわ。逆に活き活きとしている時は、誰でもとっても輝いて見えるでしょう? 目に見える色のある輝きだけが輝きじゃないの。感じる輝きもあるわ。全身の内側から放つやつ。
そしてそれを感じ取れるようになると、色のついた輝きとなって目に映るのでしょうね。知ってる、みんな? お花の色は赤とか青とか一色ではないのよ。沖縄の海に広がっていた色とりどりのサンゴのような色をしているのよ」
それを聞いて、みんなはびっくりしました。
アゲハちゃんは続けます。
「みんなは赤い花なら、赤色だけにしか見えないでしょう? でもわたしは違うの。みんなとおんなじ赤い花を見ながら、青にも紫にも緑もショッキングピンクにも見えるのよ」
「冗談だろ?」とチュウ太が思わず声を上げます。
「冗談じゃないわ。わたしは蜜食の揚羽蝶なの。だから、いつもお花のことを想っているわ。モモちゃんが言った通り、相手の輝きを見つめてあげられる想いを育むことによって、感じ取れる輝きに色がつくのよ。暑くない夏に頑張って咲くお花の大変さが伝わってきたり、まだ寒い春の始まりに咲く梅の花の息吹を微睡の中で感じてみたり、いつも考えているの。だからこそ、みんなには見えない花の輝きが、わたしの瞳には映るんだと思うわ。
でもそれを感じるには、自分自身に余裕がないといけないの。のんびりお花にとまって心で語りかけられるゆとりがあってこそ、誰かの輝きを感じ取ることが出来るのよ。せわしなく花から花へと移ろいでいたら、お花の本当の輝きは目に映らなくなるし、心に余裕がなくなって、自分自身の輝きも曇ってしまう。そうしたら、お花とわたしは繋がれなくて、『一朶の花房』って光の筋にはなれないわ。
モモちゃんはすごい。それを分かっていたんだもの」
「知らなかったよ。祐ちゃんのお話を聞いてそう思えたんだ」モモタが照れて言いました。
「いいえ、分かっていたわ。だからこそ、旅行ばかりしていないで、ときどき祐ちゃんのところに帰っていたのよ。何往復もするなんて大変なのに。ウラナミシジミの女の子から祐ちゃんの知らせを聞いた時だって、悩みもせずに祐ちゃんのところに帰ってきたじゃない。それは、愛がゆとりを生んで、ゆとりが愛を育んでいたからじゃないかしら。
わたし、今回の大冒険で確信したわ。海の向こうまで旅行に行く蝶々のお友達の気持ちが理解できたの。色々なところを旅行したり、色々な出会いを経験すると、心が温かく膨らむのよ。その膨らみって、たぶん輝きだと思うの。その輝きが心を押し広げるの。その輝きの出し方や感じ方を知らないと、宝石懸想の星のように爆発しちゃうこともあるけれど、爆発してもいいのね。そのくらいじゃなきゃ、夜のお空で誰かを見つけたりなんかできないもの。
わたし分かったわ。どうしてお星さまがまあるく輝いているかが。こうやって手をつなぐように自分の輝きで誰かの輝きを探って、『一朶の花房』になって――」
そう言いながら、モモタの前足に手をつないだアゲハちゃんは、みんなにも手をつなぐように促します。そして続けて言いました。
「『一朶の花房』は輪になるの。お友達の輪ってやつね。わたしたちだけでは小さな一つの輪っかだけれども、たくさんのお友達が輪になれば大きな輪になるし、幾つも作れば、その輪を重ねて玉になる。そうしてお星さまはまあるく輝いているんじゃないかしら。
そう思えるようになったのは、大冒険のおかげだわ。そう考えると、前にわたしのお家を奪おうとしたミツバチや大スズメバチのことも理解できる気がする。みんな輝く何かに導かれて、集まってきたんだわ、きっと。
まだ見ぬ世界を見て、まだ見ぬ誰かに会うことは、輝くためにはとっても大事なことなのね」
見た目や言葉に惑わされずに、心の内に秘める輝きを見つめる大切さを学んだみんなでした。
夜のとばりがおりて、綺羅星という名の煌びやかな光が瞬いています。そんな星々を眺めながら、ふとモモタが語り始めました。
「祐ちゃんがご主人様で、僕本当によかったって思う。『宝石懸想』のお話を聞いて、僕思ったんだ。自分だけが輝くために頑張っていてもダメなんだって。誰かの輝きを感じて見られるようになるためにも頑張らなくちゃならないんだって。
祐ちゃんは、遊ぶのにもプラモを作るのにも一生懸命で、とても輝いているけれど、僕の輝きを感じて見てくれることにも一生懸命だったんだって思える。僕が毎日祐ちゃんのことを忘れたことがないように、祐ちゃんも僕のことを忘れないでいてくれたんだよ。
どんなに頑張って想いを募らせても、誰かの輝きを見い出せないとか、誰に届けていいか分からないなんていったら、どんなに眩しい光も誰にも届かないと思うんだ。だって今まで出会ったお友達にも、いつも自分のことばかり言う子や、誰かの言うことばかりを聞いている子がいっぱいいたけれど、とても幸せいっぱいって感じじゃなかった気がする。
どんなに自分一匹が頑張っても、それが自分のためだけの頑張りだったら、その輝きは誰にも届かない。誰かを輝かせたい、誰かのために輝きたいっていう想いがあるから、みんなとっても輝けるようになるし、みんなはきれいだって思ってくれるんだと思う。
だって僕たち、宝石に興味なんて全然ないでしょう? なのに僕は、虹の雫にだけはとっても美しいって思えたんだ。ううん、愛おしいって思ったの。それはママに会いたいって想いもあったんだけど、本当は違う。ママが僕に会いたいって、とても悲しんでつらそうにしているのがひしひしと伝わってくるから、僕は虹の雫を愛おしく思えたのかもしれない。
そう思うと人間って、とっても愛情深いお友達だよね。僕たち動物のほとんどは、自分とおんなじお友達としか仲良くしないでしょ? 猫同士とかネズミ同士とか。でも人間は違う。色々なお友達と仲良くなれるんだ。それって、誰でも分け隔てなく愛せるってことでしょ? 真実の愛を知ってるんだよ。
そう思うと、何だか分かる気がする、人間が宝石を大好きなのを。人間が宝石の輝きをきれいだって思うのは、誰かを輝かせたい、誰かのために輝きたいって思っているから、想いの結晶である宝石の輝きに、知らない誰かの、知っている誰かの輝きに想いを馳せているんじゃないかな。宝石の輝きを身にまとうことで、世界中に散らばっている光を繋げようとしているんだね。
僕は、今まで出会ったお友達の言うことをよく分からないなぁって思うことが沢山あったけれど、それで済ませて他の誰かのところに遊びに行かないで一緒に遊んでいたら、その子の輝きを見つけ出すことが出来たのかもしれない」
モモタの傍らの草の上で休んでいたアゲハちゃんが、優しげな笑みを浮かげて言いました。
「モモちゃんの言う通りね。わたし、宝石懸想のお話を聞いて、わたしの翅の輝きは、わたしが懸想した現れなんじゃないかって思うようになったの。でもこの輝きは同じ色じゃないのよ。その時の気持ちによって弱まってり強まったりしているのよ。心の持ちようで変わってしまうの。
それに、想いの輝きは目に見える輝きだけとは限らないわ。どんなにきれいなお友達でも、悲しかったり疲れていたりしたら、きれいに見えないわ。逆に活き活きとしている時は、誰でもとっても輝いて見えるでしょう? 目に見える色のある輝きだけが輝きじゃないの。感じる輝きもあるわ。全身の内側から放つやつ。
そしてそれを感じ取れるようになると、色のついた輝きとなって目に映るのでしょうね。知ってる、みんな? お花の色は赤とか青とか一色ではないのよ。沖縄の海に広がっていた色とりどりのサンゴのような色をしているのよ」
それを聞いて、みんなはびっくりしました。
アゲハちゃんは続けます。
「みんなは赤い花なら、赤色だけにしか見えないでしょう? でもわたしは違うの。みんなとおんなじ赤い花を見ながら、青にも紫にも緑もショッキングピンクにも見えるのよ」
「冗談だろ?」とチュウ太が思わず声を上げます。
「冗談じゃないわ。わたしは蜜食の揚羽蝶なの。だから、いつもお花のことを想っているわ。モモちゃんが言った通り、相手の輝きを見つめてあげられる想いを育むことによって、感じ取れる輝きに色がつくのよ。暑くない夏に頑張って咲くお花の大変さが伝わってきたり、まだ寒い春の始まりに咲く梅の花の息吹を微睡の中で感じてみたり、いつも考えているの。だからこそ、みんなには見えない花の輝きが、わたしの瞳には映るんだと思うわ。
でもそれを感じるには、自分自身に余裕がないといけないの。のんびりお花にとまって心で語りかけられるゆとりがあってこそ、誰かの輝きを感じ取ることが出来るのよ。せわしなく花から花へと移ろいでいたら、お花の本当の輝きは目に映らなくなるし、心に余裕がなくなって、自分自身の輝きも曇ってしまう。そうしたら、お花とわたしは繋がれなくて、『一朶の花房』って光の筋にはなれないわ。
モモちゃんはすごい。それを分かっていたんだもの」
「知らなかったよ。祐ちゃんのお話を聞いてそう思えたんだ」モモタが照れて言いました。
「いいえ、分かっていたわ。だからこそ、旅行ばかりしていないで、ときどき祐ちゃんのところに帰っていたのよ。何往復もするなんて大変なのに。ウラナミシジミの女の子から祐ちゃんの知らせを聞いた時だって、悩みもせずに祐ちゃんのところに帰ってきたじゃない。それは、愛がゆとりを生んで、ゆとりが愛を育んでいたからじゃないかしら。
わたし、今回の大冒険で確信したわ。海の向こうまで旅行に行く蝶々のお友達の気持ちが理解できたの。色々なところを旅行したり、色々な出会いを経験すると、心が温かく膨らむのよ。その膨らみって、たぶん輝きだと思うの。その輝きが心を押し広げるの。その輝きの出し方や感じ方を知らないと、宝石懸想の星のように爆発しちゃうこともあるけれど、爆発してもいいのね。そのくらいじゃなきゃ、夜のお空で誰かを見つけたりなんかできないもの。
わたし分かったわ。どうしてお星さまがまあるく輝いているかが。こうやって手をつなぐように自分の輝きで誰かの輝きを探って、『一朶の花房』になって――」
そう言いながら、モモタの前足に手をつないだアゲハちゃんは、みんなにも手をつなぐように促します。そして続けて言いました。
「『一朶の花房』は輪になるの。お友達の輪ってやつね。わたしたちだけでは小さな一つの輪っかだけれども、たくさんのお友達が輪になれば大きな輪になるし、幾つも作れば、その輪を重ねて玉になる。そうしてお星さまはまあるく輝いているんじゃないかしら。
そう思えるようになったのは、大冒険のおかげだわ。そう考えると、前にわたしのお家を奪おうとしたミツバチや大スズメバチのことも理解できる気がする。みんな輝く何かに導かれて、集まってきたんだわ、きっと。
まだ見ぬ世界を見て、まだ見ぬ誰かに会うことは、輝くためにはとっても大事なことなのね」
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