猫のモモタ

緒方宗谷

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荷物を背負うカニと背負わないカニの話

相手は自分じゃないんだよ

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 ある晩モモタは、陽のくれた河原を歩いていました。
 すると、アラモト君が、浅瀬で魚を食べているのを見つけました。
 「こんばんは」モモタは話しかけました。続けて訊きます。
 「この間のカニさんの様子を見に行ってみない?」
 アラモト君は渋りましたが、
 「しょうがないな、この間お魚のおすそ分けしてもらったし、恩返しに行ってみるかな」
 そう言って、モモタについてきました。
 オオ君のお家に行ってみると、相変わらず思い悩んでいる様子です。
 オオ君は、モモタたちを見つけて言いました。
 「また来てくれたのかい?お願いだから、一緒に悩んでおくれよ」
 「え?何でさ」アラモト君が訊き返します。
 「だって心配じゃない」
 「何で?心配する必要なんてないだろ。いくら心配したって、僕らには関係ないんだから」
 「なんだよ、そんな言い方。僕が可哀想じゃない」
 「可哀想じゃないよ。今まで放っておいた報いさ。
  君は、お家の底にカエルが沈んでいるのを知っていて、ずっと放ったらかしにして、ドングリ集めをしていたんだ」
 2匹のやり取りを聞いて、モモタは言いました。
 「じゃあ、イシカワ君が可哀想だよ。
  恋の季節になっても、お家の底に沈んでいるなんてさ」
 「それこそ関係ないよ。自分で沈んでいるんだから。
  それで困るようなことがあっても、困るのはイシカワ君であって、僕たちじゃないだろう」
 モモタは、冷たいなぁ、と思いました。思っただけで口に出しませんでした。ですが、同じように思ったオオ君は言いました。
 「そんな言い方したら、みんなに嫌われちゃうよ」
 「好きにすればいいよ。だって、みんながどう思うかはみんな次第だからね。僕が決めることじゃないよ」
 「でも、お友達をそんなふうに思いたくないじゃない」
 「なら、そういうふうに思わなければいいじゃない」
 「そんなふうに思わせている君が悪いんじゃないか」
 「違うね。どう思うかは君次第さ。僕がどんな態度をとろうと、そう思わないことはできる。
  でもしないんだ。それは君がそう思うって決めているから。
  僕が思わせているんじゃなくて、君が思うカニだから思うんだ」
 アラモト君は、とってもドライなカニでした。
  


    
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