大事な婚約者が傷付けられたので全力で報復する事にした。

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 「何だ...これは...?」

 大陸最古の歴史を誇るイーデルハイト王国唯一の王位継承資格者にして王太子の地位にあるルカリオは王宮の執務室にて愛しの婚約者・ルーシェの筆跡で書かれた手紙に衝撃を受けていた。

 内容を要約すると『私ではあなたの隣で王家を盛り立てるには力不足です。私の様な無能ではなくもっと相応しい御令嬢と共に王家を盛り立ててください。あなたのご活躍を一臣下として祈念申し上げます』と言う内容であった。

 「ほかに相応しい令嬢だと...!そんな者君以外いる訳がないだろう!」

 そう言って彼は執務室の机をドンッ!と両手で叩く。

 なぜ突然この様な手紙を残して姿を消したのか彼は意味が分からなかった。既に婚約者としてお披露目されており来年には正式に結婚の議を執り行い王太子妃として公務を本格化させる予定であるからだ。

 そう思い悩んでいると彼は一つの結論に到達する。

 「まさか...!か...!」

 そう、ルカリオは来年から王族となり公務を本格化させるルーシェを支えるため、両親である国王や王妃の公務を代行したり各地を訪問する等精力的に公務に取り組んでいた。

 その種類は多岐にわたり、地方の視察や議会の招集、大臣や裁判官の認証、外交官の接待といった王族が行う一通りの公務である。

 しかし、彼はここ数ヶ月公務を優先する余りルーシェとの時間を後回しにしていた。侍従からお妃教育の進捗を尋ねる以外で彼女に関する情報に一切触れていなかったのだ。

 そしてその数ヶ月の間にはルーシェの誕生日と婚約記念日が含まれている。当然だが両日とも公務と被っており祝いの贈答品を侍従を通じて手配したのみであった。

 「マズい...一刻も早く仲直りしなければ...特に3にバレる前に...」

 その時だった。執務室のバンと開かれ3人の女性が中に入ってきた。

 国王の長女であり、ルカリオの長姉・エリス。
 国王の次女であり、ルカリオの次姉・リリアナ。
 国王の三女であり、ルカリオの三姉・リリベット。

 3人はそれぞれ周辺国の王家に嫁ぎ、それぞれ世継ぎを儲けて育児に公務に勤しんでいるが3人にとっても愛しのルーシェが突如として姿を消したと聞き配偶者の許可をもぎ取って(実際は出産時のやらかしをネタに強請ゆすった)はせ参じたのである。

 「話は聞かせてもらったわ!この馬鹿弟!」

 「公務に熱心なのは結構だけど、流石に数ヶ月放置はダメでしょう?」

 「そうそう!ホント最低!」

 そう言って口々にルカリオを責め立てる3人娘。ルカリオにとって3人は幼い頃から頼りになると共に恐怖の対象でもあった。

 「仕方ないだろう...彼女を支えられる様に予め公務の経験を...」

 そう言いかけた所でエリスが言葉を遮る。

 「ハイアウト~!それは素晴らしい事だわ!でもね、公務は一緒に慣れていけば良いの。お父さまが国民に人気があったのだって元々2人ともぎこちなかったのだ少しずつ洗練されていく様子に国民が敬意を抱いたからなのよ!」

 更にリリアナも続ける。

 「私も嫁ぐ直前は緊張やストレスでメッチャしんどかったのよ。そんな時に全く音信不通なんて余計に追い込むようなことをするのはどうかと思うわ」

 とどめにリリベットが追撃する。

 「そうそう!しかもアンタ公務に集中し過ぎて王室関連の報道とか見てなかったでしょ!?ダメだよ視野は広く持たないと!」

 「うっ...すべてがその通り過ぎる...俺は何てことを...」

 そう言ってへたり込むルカリオ。そんな彼にリリベットは近付くと思いっきり頬をビンタした。

 「痛えな何すんだよ!」

 「そうウジウジすんな!そんなことしたってルーシェちゃんが返ってくるわけじゃないんだから!」

 リリベットの言葉に続いてエリスとリリアナも続く。

 「とにかく、まずはグレイ侯爵閣下の下へ向かいなさい」

 「そんで何があったのか話を聞くの。分かった?」

 その言葉にルカリオは意を決して立ち上がる。

 「そうだね。じゃ、ちょっとグレイ侯爵の下へ行って来るよ。」

 「「「行ってらっしゃ~い!」」」

 3人の姉に見送られながら彼は王都の侯爵邸へと向かった。

 ◇◇◇

 「ご無沙汰しております。王太子殿下。」

 ルーシェの父であるグレイ侯爵が彼を出迎える。彼の顔はどこか憔悴しきった表情であった。

 「お出迎え感謝申し上げます。グレイ侯爵。ところでどうしてルーシェはこの様な手紙を残して王都を去ったのでしょうか...」

 その言葉に彼は憤りを隠せない表情を浮かべる。

 「...書斎に来てください。その原因をお見せいたします」

 その言葉に彼は不穏な気配を感じた。

 ◇◇◇

 書斎に通され、ルーシェが去ったに触れたルカリオは全身が沸騰するかのような激しい憤りを覚えた。

 それはいくつかの雑誌。

 『ルーシェ侯爵令嬢では力不足と議会公認!側妃制度復活の提言』

 『ルーシェ侯爵令嬢のお忍び王都散策 意外と庶民派?』

 『女腹のグレイ侯爵家の令嬢は唯一の王位継承者の妃に相応しいのか』

 ある雑誌は議会があくまでも『選択肢の1つとして有効だが現実性に乏しい』と見做した側妃制度の復活を大々的に強調していた。

 別の雑誌はお妃教育の息抜きに護衛を伴って市街を散策しているルーシェの姿を盗撮し彼女が何をどこで買ったのかまで事細かくストーキングしていた。

 またある雑誌に至っては『現在のグレイ侯爵には4人の娘しかおらず将来的に弟の家系がグレイ侯爵家を継承する。世継ぎに恵まれない家系の者を王室に入れる事が適切なのか』と明らかに下世話極まりない記事を掲載していた。

 「何なんだこの記事は!?大体、俺とルーシェの婚約自体王国議会が承認しているじゃないか!何で今更こんな記事書くんだよ!?」

 ルカリオは激怒した。これほどまでに怒りを覚えたのは人生で初めての出来事だった。

 「このような記事はここ数ヶ月不自然に増えておりました...以前は雑誌社も報道協定の範囲で娘と殿下の仲睦まじい様子を報じていたのですが...」

 王家とグレイ侯爵家、そして王国の報道各社は報道協定を締結し、必要以上にプライベートに踏み込まず、それでいて秘密主義に陥らない様バランスを取りながら情報発信に努めていた。

 しかしから協定で定められた違約金より違反行為で得た収益の方が上回る試算が出されるとと状況は一転。

 報道各社は特にルーシェに対して度を越した報道を開始。そして間の悪い事にルカリオが公務を本格化させた時期と重なってしまいルーシェは婚約者に相談するタイミングを逃しながら報道被害に苛まれる事となってしまう。

 限界を迎えてしまったルーシェは体調を崩してしまい、婚約の解消を告げる手紙を書いた上で侯爵家の別荘に引きこもってしまったのだ。

 「こんなことになっていたなんて...どうして俺は気付かなかったんだ...」

 そう自己嫌悪に苛まれるルカリオ。

 そんな彼に対し、グレイ侯爵は声を掛ける。

 「実は...私共としては既に報道各社を相手に法的措置を講じる準備が出来ております。どうか力をお貸しいただきたく」

 「分かりました。こんな間抜けで良ければ喜んで力添えいたしましょう」

 こうして報道各社への報復の為、協力する事となった。

 ◇◇◇

 王宮・国王と王妃の私室

 両親の私室に呼び出されたルカリオは事の顛末を2人に話した。

 王妃のアイリスはこめかみに手を当ててため息を吐いた。

 「全く...あれ程大好き大好き言ってた婚約者が苦しんでるときにそばにいなかったなんて呆れるよ全く...」

 国王のルーカスはそんな彼女の姿に「可愛いなぁ」と呟いてからルカリオに向き合う。

 「さて...それで侯爵は裁判を起こすそうだがお前も協力するそうだな...正直言うが王家の者が裁判を起こすというのはかなり物議を醸すやもしれんが大丈夫か?」

 「問題ありません。彼女を傷つけられていたことに全く気づけなかった自分の不甲斐なさへの罰だと思って向けられる非難の声は全て受け止める覚悟です」

 「そうか、なら私から言う事はない」

 「ルカリオ、ルーシェちゃんを傷付けた輩から徹底的にむしり取っておやりなさい」

 2人はそう言ってルカリオに声を掛けた。

 ◇◇◇

 その後、グレイ侯爵とルカリオは報道各社に対し裁判を提起。この国では懲罰的損害賠償という、余りに悪質な加害者の行為に対し通常の損害金に加えて法外な制裁金を課すことが認められている。

 報道各社は『報道の自由』『国民の知る権利』を盾に反論した。

 しかし裁判所は『憲法が定めた報道の自由や知る権利の範疇を遥かに超えている』『憲法が定めた自由は『個人のプライバシーや人格を必要以上に踏みにじる』事を保障したものではない』として報道各社がルーシェに対する報道で上げた収益の150倍の損害賠償金の支払いを命じた。

 そして、この裁判でいくつかの報道機関が倒産し残った報道機関も必要以上に個人のプライバシーを暴くような報道を行わなくなった。

 そして、この事態には思わぬ黒幕が潜んでいたのである。

 ◇◇◇

 王都のとある貴族の邸宅

 「クソッ...クソクソクソがぁ!」

 そう言って机の上にあったワイングラスを壁に投げつける1人の男。その様子に屋敷のメイドは怯えた表情を浮かべる。

 そんな彼女の姿を見た男-ズーク公爵-は彼女の髪を掴む。

 「おいクソメイドとっとと掃除しろ!」

 「は、はい...!」

 ズーク公爵は激怒していた。何故なら彼の計画の全てが台無しとなったからである。

 ズーク公爵家は王家の遠い血筋の家系であり、万が一にも王家が途絶えた際に新たな王家としての役割が期待されている名門家系であった。

 彼は王座に就く野望を抱いており、ルカリオがルーシェを深く愛している事を知りながら報道各社を焚きつけ過剰な報道を行うように誘導し彼女を精神的に追い込むことを画策していた。

 ルカリオがルーシェ以外の令嬢を妃に迎える事など絶対にないと確信していた彼はそうして王家が途絶えた後自身が王としてこの国に君臨する事を夢見ていたのだ。

 しかし、グレイ侯爵とルカリオが裁判を起こしたことでこの計画は全て水泡に帰した。

 元々、王侯貴族は報道に対し裁判を提起しないという暗黙の了解があった。

 だから反論できない彼らを出汁に報道各社は大儲けし、自身は王座に就けるというウィンウィンな関係が築けていたのに全てが台無しだ。

 その怒りが収まらないズーク公爵は自身が割ったグラスの掃除をするメイドを無理やり掴みソファーに押し倒した。

 「な、何するんですか!?」

 「うるさい!高貴な子種をくれてやるんだから光栄に思え!」

 「やめてください!」

 その時だった。

 「ゲスタ・フォン・ズーク公爵。貴様を大逆罪...と婦女暴行の現行犯で逮捕する」

 王国憲兵団は裁判の過程で発覚したズーク公爵のメディアへの働きかけに基づき大逆罪で逮捕する事を決定したのだ。更にタイミング良くメイドに対し婦女暴行を加えようとしている場面に遭遇し彼への刑罰は追加される事となった。

 憲兵団の姿を見た彼は泣き喚いて抵抗したが細身のズーク公爵では屈強な憲兵団にかなうはずもなくあっさり制圧され逮捕。

 裁判の結果、彼は爵位剥奪の上大逆罪で35年間北部の寒冷な鉱山での労役と王家及びグレイ侯爵家への賠償金支払いを、婦女暴行の罪で去勢(当然だが麻酔などない。激痛と共に自身の分身とおさらばする事となる。)を命じられた。

 裁判でも醜く喚いていたが北部の鉱山に送られるとそんな気力もなくなったらしい。更に性犯罪者でもあることから鉱山での地位は最下層でありそれはそれは悲惨な日々を送る事となった。

 ◇◇◇

 ルカリオはルーシェが籠っている別荘へと向かった。

 彼は執事に連れられ彼女の私室の前に来る。

 「ルーシェ、僕だよ。入っても大丈夫?」

 「え、殿下...」

 「お願いだ...中に入って話がしたい。」

 そう言った後静かに扉が開いた。中にいたルーシェは酷く痩せており、元々華奢だった体はさらに細くなっていた。

 そんな彼女の姿を見たルカリオはたまらず彼女を抱きしめる。

 「ごめん...!本当にごめん...!君を支える為に公務に奔走していたのに...!肝心な時に側にいられなくてごめん!こんなになるまで辛い思いをさせて...俺はどう償えば良いか分からないよ...」

 そう泣きながら謝罪をするルカリオ。ルーシェも涙声で返す。

 「私の方こそ...急にいなくなってごめんなさい...!私じゃ力不足見たいな事書かれたり...協定で取られないはずのプライベートな写真が報じられたりして...怖くて...
 でもそれはまだ良いの...何より...あなたが他の女性を側妃として迎え入れるかもしれないって言うのが本当に怖かった...だってこんなにも大好きだから...」

 その言葉を聞いたルカリオははっきりと彼女の目を見て告げた。

 「約束する。側妃なんか持たない。君さえいれば他には何もいらない...君だけを一生愛し続けるから...どうかお願いだ。僕と結婚して欲しい。そして未来の王妃として僕の隣で僕と共に務めを果たして欲しいんだ。」

 その言葉を聞いたルーシェは涙を流しながら返答する。

 「はい。あなたの妃として、一緒に務めを果たして参ります」

 彼女の返事を聞いたルカリオは笑顔を見せ執事が咳ばらいをするまで抱き合っていた。

 ◇◇◇

 ルーシェはルカリオからのプロポーズの後、王都へ戻り回復に専念。その後に結婚した。

 危機を乗り越えた2人の結婚は世界中で話題となり、舞台にまで発展した。

 結婚後2人の間には2人の息子と1人の娘が誕生。結婚から10年後に父のルーカスが「アイリスとのんびり余生を過ごしたい」と退位を表明しルカリオが新国王に即位。

 その際に前述した舞台が『新国王即位を祝う国民祭典』で演じられた。

 それを2人は顔を赤くしながら眺めており、子供達もからかうようにニヤニヤと両親を眺めていた。

 国民はそんな新国王一家の微笑ましい姿に深く敬愛の念を抱いたという。

 ~完~
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みんなの感想(2件)

キムラましゅろう
ネタバレ含む
2025.10.26 オーガスト

感想ありがとうございます!!
お褒め頂きありがとうございます。+.゚.(٭°̧̧̧ω°̧̧̧٭)゚+.゚。
とりあえず思い付いたまま勢いで書いてみようと思います!!
確かに今は便利な機能とかたくさんありますし色々活用しようと思います☺️

応援ありがとうございます!今後も忙しくなりそうですが創作を楽しんで乗り越えようと思います✨🔥

お褒め頂き恐縮です☺️☺️

本当にハピエン最高ですよね🥰☺️

解除
えにうえぃず
ネタバレ含む
2025.10.26 オーガスト

感想&応援ありがとうございます!

稚作を楽しんでいただけて何よりです☺️

勢いで書いて行ったので少し日本語の選択を間違えてしまったようです💦

修正しておきました( •̀ •́ゞ)ビシッ!!

教えていただきありがとうございます( •̀ •́ゞ)ビシッ!!

またよろしくお願いします(* ᴗ ᴗ)⁾⁾

解除

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