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―― 第三章 ――
【五十五】出来ない命令(★)
しおりを挟む「あ、あ、あ……クライヴ、もっと、ぉ……」
僕は涙と快楽でドロドロの瞳を、クライヴに向けている。正面から僕を押し倒しているクライヴは、ゆっくりとしか動いてくれない。もどかしさに僕は震えながら、両腕をクライヴの首へと絡める。
「んン」
僕の両足を持ち上げて、根元まで挿入した状態で、クライヴが動きを止める。ぐっと最奥を貫かれたまま、動きを止められ僕はむせび泣いた。どんどん快楽がせり上がってきて、僕はそのまま白濁とした液を放つ。僕の出したものが、クライヴの腹部を汚した。
僕は果てたのに、クライヴが僕が感じる場所を突き上げたまま、動いてくれない。脈動する僕の内壁が、再びクライヴの屹立した陰茎を締め付ける。
「ン――っ!」
穏やかなのに強い快楽が襲い掛かってきて、僕はもう訳が分からない。
「ルイス、《待て》だ。次は《我慢》だ」
「ぁ……」
再び張りつめていた僕の陰茎。それを自覚しながら、僕は涙で滲む瞳をクライヴへと向ける。いつもより残忍な目をしているクライヴは、獰猛なまなざしで、僕の意識をからめとるようにこちらを見ている。
「あ……ぁ、ぁ、ぁ……ッ、できない、できないよ……んン」
「《我慢》」
「あ、あ、うう……あア――!!」
だが僕は、《命令》を守れず、また放った。首輪があるだけで、僕の体はいつも以上に敏感に作り替わってしまったかのようで、同時に【契約】の効果なのだろうが、意識にはクライヴの声しか登らない。そして――わかっている。クライヴは今、『僕には達成困難な《命令》』をした。僕に《お仕置き》するためだ。僕はもうそれを理解しているけれど、クライヴの《お仕置き》は、僕にとっての恐怖ではない。クライヴの《お仕置き》は、いつも僕を快楽で真っ白に染めるけれど、僕を傷つけることはないからだ。
「《お仕置き》だな」
予想通りの声に、僕は震えながら涙をこぼす。半分以上は期待と歓喜だ。もっともっと、クライヴに支配され、満たされたい。クライヴは僕から陰茎を引き抜くと、じっと僕を見た。
「《壁を向いてくれ》」
「ん……」
言われた通りにした僕の体は汗ばんでいて、肌に髪の毛が張り付いてくる。
「あ、あああっ!」
そのまま横からの寝バックの姿勢で、再び貫かれた。
斜めに深く交わりながら、僕は悶える。気持ちがいい。しかしその状態で動きを止められ、僕はすぐに号泣した。気持ちが良すぎて、おかしくなりそうだ。
「ああ、あっ……ああ……」
「ルイスは、ここが一番好きだものな? 《言ってごらん》」
「好き、あ、好きだけど、でも……」
「でも? 《続けて》」
「クライヴだから、好きなだけで……ンあ――!!」
「《いい子だ》」
「あああああああ!」
褒められるともう駄目だった。僕の体はぐずぐずだ。
「一度出す。《締めて》」
「ああああッ!!」
「《いい子だな》――っく、理性が飛びそうになる。困ったものだな、その首輪。目には毒だな。ルイスに対する征服欲が、今宵はいつも以上に収まってくれない。ルイス、自分でしたいようにしてごらん? できるだろう? 《魅せてくれ》」
「あ、あ、ああっ、あン――!!」
僕は体に力を込め、脈動しているクライヴの陰茎をさらに締め上げる。
どくどくと僕の中に、白液が注がれていき、長い射精が終わると、結合箇所から香油と混じったそれがこぼれ始めた。僕が肩で息をしていると、クライヴが再び陰茎を引き抜いた。ぐちゅりと音がし、白液もまた零れてシーツを汚す。
「今夜は、許さない。存分に付き合ってもらう。俺の存在なんだろう?」
「あ……あ……僕は、クライヴだけのものだよ……そうでありたい」
「幸せだ、ありがとうルイス」
クライヴは獰猛な光を瞳に宿したままでそう述べると、再び僕を押し倒した。
この夜、僕はクライヴに支配され続け、いつの間にかspaceに入り、そして――気づいた朝もまだ、貫かれていた。
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