左遷先は、後宮でした。

猫宮乾

文字の大きさ
19 / 30

【19】「正直自信がない」(☆)

しおりを挟む


 それから俺達は――寝台へと移動した。ど緊張してしまった俺は、上手く服が脱げない。焦りながらシャツを脱いでいる俺の前で、ルカス陛下は非常に余裕そうな顔で、香油の瓶をそばのテーブルに置いている。冷静な顔をされているのが、悔しい。

「オルガ、まだか?」
「上手く脱げなくて」
「それは断り文句か? もう二十分もお前はシャツを脱ごうとしたまま動かないが……嫌なのか? そうなのか?」
「そんな事無いです! 大歓迎です!」
「――では、脱がせても良いか?」
「待ってくれ、心の準備が!」

 俺がそう叫ぶと、ルカス陛下が手を伸ばしかけた状態で止まった。そしてまじまじと俺を見た。

「分かった。あと五分待つ」

 陛下は嘆息し、シーツの上に手を付いた。それを見ながら、俺はシャツと格闘する。

「陛下は脱がないの?」
「俺はこの状態からなら、二分もかからずに脱げる」

 先ほど脱いだ外套を、陛下が一瞥した。なるほど。既に準備は万端なのだろう――と、考えて、俺はつい陛下の下衣を見てしまった。何気なく視線を下ろしたのだ。

「!」

 そして俺は、既に自己主張している、陛下のブツの存在に気づいてしまった。まだ何もしていないのに反応している……! 俺の方は、緊張と期待の狭間で、まだそこまでじゃない。

「あと三分――全く進んでいないぞ、手が」
「陛下、ごめんなさい」
「今更止めろというのか? さすがにそれは辛い」
「そうじゃなくて、ひとりでは脱げないっぽいです。俺、手が震えちゃって」
「っ、そうか……今脱がせる」

 素直に俺が伝えると、陛下がビクリとした。それから、おずおずと俺のシャツのボタンに手をかけた。ポツポツと脱がされると、あれほど俺には大変だった作業が一瞬で終わった。こうして全裸になった俺は、ベッドの上に膝をついて座った。ルカス陛下は真横に座っている。

「オルガ、最初に言っておく」
「なんですか?」
「俺は、当初は国王になる予定は無かったんだ」
「はぁ」
「異母兄を異母弟と共に支えて生きていくと思っていた」
「はい」
「――だから、俺には特に閨の家庭教師などはいなかった」
「と、言いますと?」
「これまでに妃もいなかった。だ、から、つまりだな……」
「うん?」
「正直自信がない」
「大丈夫です! 俺も自信ゼロです!」

 俺が断言して大きく頷くと、ルカス陛下が喉で笑った。

「恐らく俺とお前では自信の方向性が違うと思うが」
「え? 勃つかな……というのは、もう勃ってるけど、そういうのとか、入るかなとか、中折れとかの心配だよな?」
「いいや――もう自分を止められる自信が無いという心配だ」

 ルカス陛下はそう言うと俺を押し倒した。シーツに後頭部がぶつかった瞬間、俺は焦って目を見開いた。俺の右の首筋を手で撫でると、じっと陛下が俺を見た。いつもより真剣に見える眼差しに、俺は今になって冷や汗が出てきた。

「ぁ……っ、ッ」

 鎖骨の上に口づけられて、俺はビクっとした。触れた唇の温度は優しいのだが、緊張しないというのとは話が別だ。

「ン」

 少し強めに吸い付かれると、それだけで声を出してしまう。

「あ」

 左手で乳頭を摘まれた時には、思わず俺は声を出してしまった。触られている。ルカス陛下が俺に触っている。それだけでも何故なのか衝撃的すぎた。気持ち良いとか悪いとかではなく、衝撃が強い。

「……っ」

 緩急をつけて胸を弾かれると、腰がふわふわし始めた。ジンっと甘い疼きが胸から広がっていく。優しく羽で撫でるように転がされたかと思えば、次の瞬間にはキュッと強く乳首を擦られて、気づけば俺は息を詰めていた。

「あ、ああっ」
「――本当に声が大きいんだな」
「だって、指が入ってきた!」
「まだ菊門をつついただけで、入ってない」
「え」

 ルカス陛下はそう言って笑うと、香油の瓶を手繰り寄せた。それを右手の人差し指に垂らすと、どこか楽しそうな瞳で俺を見た。

「!」

 それからすぐに、今度こそ指が入ってきた。だって、ぬるりという感触と共に、俺が知らないほど巨大な何かが入ってきたのだ。

「え、え、ええ!? ちょっと待って、これ指?」
「ああ、人差し指の先端だ」
「っ、うあ!」
「まだ第一関節まで、入ってない」
「!!」

 俺は目を見開いた。ちょっと無理がありすぎる。ルカス陛下の指は普段見ている限り、ごく普通だ。長いかもしれないが、太いと思った記憶はない。それがこんなにも大きく感じるとは。

「待って、待って、ああ、あ、あああ、うああああ」
「待てない。先ほどもう止める自信がないと伝えただろう?」
「けど、あ、あっ、大きいっ」
「――っ、すぐにでも挿れたくなるから、少し声を抑えてくれ」
「無理!」

 その後、第一関節までようやく入りきった頃には、俺は涙ぐんでいた。過去に経験した事を思い出しても、こんなに奥深い場所まで指が入ってきた事は無い。人体の神秘だ。

「んっ、ンん!」
「第二関節」
「あ、ああっ、うあ、ア」
「もう少し」
「やあああああ」

 容赦なく俺の中へと指を進めたルカス陛下は、根元まで人差し指が入りきった所で、その指を震わせ始めた。振動する指がもたらす刺激が、俺の全身に不思議な感覚を呼び覚ます。

「ゃ、ぁ、ア、あ、あああっ、う、ンあ!」
「ここが好きか?」

 指先でルカス陛下がある箇所を刺激した途端、俺の全身が痺れたようになった。俺の眦からは涙がポロポロと溢れる。信じられないくらい――気持ちが良い。

「待って、待ってくれ、本当に待って」
「オルガ、それこそ無理だ。痛いか?」
「そうじゃなくて、だって指でこんなに気持ち良かったら、これ以上されたら俺はどうなるんだ!?」

 率直に不安を訴えると、ルカス陛下が目を丸くした。それから吹き出すように笑う。

「あああああ!」

 そして指の動きを早めた。

「待って、あ、待ってって言ったのに、うああ、あ、あン――!!」
「もっともっと気持ち良くなったらいい。それだけだ」
「ん――!」

 そのまま長い時間、俺はルカス陛下に指でほぐされたのだった。


しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。

Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。 満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。 よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。 愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。 だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。 それなのに転生先にはまんまと彼が。 でも、どっち? 判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。 今世は幸せになりに来ました。

異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった

カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。 ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。 俺、いつ死んだの?! 死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。 男なのに悪役令嬢ってどういうこと? 乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。 ゆっくり更新していく予定です。 設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@悪役神官発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後

結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。 ※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。 全5話完結。予約更新します。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

処理中です...