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【九】
しおりを挟むその内に、僕達もついに二年生になる事になった。僕はドキドキしながら、新入生の名前が張り出されている板の前にいる。ヒロインの名前は変換可能だったが、デフォルト名はアーネだった。あとは素性として平民のはずだ。平民の入学生はほとんどいないからすぐに見つかるだろうと思っていたら、僕はその日の午後には発見した。
ジャック様が、転んだ彼女を抱きとめた瞬間、僕は真横にいたのである。セリアーナと第二王子殿下に合流する予定で、たまたま一緒に本当に珍しい事に、一緒にいたのである。乙女ゲームのオープニングで見た通りだった。完全にジャック様のルートの冒頭である。
つまり三年後、僕は卒業パーティで婚約破棄される。
ここからおとなしく過ごさなければ。国外追放されても語学力は通用するだろうが、なるべく平穏な形がいいだろう。やはり幼少時にたちかえり、僕はあんまり接触しないで過ごし、会話も控えた方がいいだろうか。なんだか寂しいなぁ。
「フェルナ、どうかしたのか? 行くぞ」
「あ……はい」
気づくと出会いの場面は終わっていたようで、アーネの姿も無かった。
僕はそのままジャック様と廊下を歩いた。
――ジャック様とアーネの接触頻度は、その後目に見えて増えていった。理由は二人とも、生徒会メンバーだからである。その内に、二人の関係について噂する声も出てきた。
「お兄様……放っておいていいのですか?」
図書館にいた僕のもとに、妹がやってきた。僕は素知らぬふりで顔を上げた。
「なにを?」
「……ジャック様に最近近づいている方が……」
「セリアーナ、なにもしないようにね」
僕はくぎを刺す事も忘れなかった。セリアーナは何か言いたそうな顔をしていたが、溜息を零して歩き去った。こうしてこの日も国外追放に備えて本を読んだのだが、全然頭に入ってこない。寮の部屋に戻ると鍵が開いていて、中に入るとジャック様がいた。その姿を見たらほっとしてしまったが、その内この光景は見られなくなるんだろうなぁ。
「フェルナ、最近落ち込んでいるように見えるぞ? なにかあったのか?」
「落ち込んでないですし、何もないです」
「そうか。俺でよければ、聞くが?」
「何もないので」
僕は断言してから、飲み物を見た。ジャック様が紅茶を淹れてくれた。
隣同士で長椅子に座り、僕はカップを受け取る。
「そういえばな、最近面白い後輩が出来たんだ。今度紹介したい」
「どなたですか?」
「アーネといって、生徒会で同じなんだけどな――」
その後笑顔でジャック様が、アーネがいかに有能かをほめたたえた。僕の胸が重くなっていったが、僕は頷くにとどめる。
「フェルナ?」
「はい?」
「なんだか今日は、やはり落ち込んでいないか?」
「別に。それで? ジャック様もやはり、男より女性の方がいいというお話でしたっけ?」
「なっ!? フェルナ……?」
「やはりお世継ぎの事を考えると、いくら身分が平民だとは言え、まだ僕よりも彼女の方がいいのでは?」
「それはどういう意味だ?」
「婚約破棄なさるおつもりなのかと」
「絶対にしない! するわけがないだろう!!」
「……」
「まさかと思うが、不安にさせたか? 嫉妬してくれたのか?」
「別に」
「……そ、そうだな。お前に限ってそれはないか」
「なんで若干嬉しそうな顔したんですか?」
僕は遠い眼をした。ジャック様が慌てたように顔を引き締めた。
「……フェルナは感情が見えにくいからな。俺の事をどう思っているんだ?」
「ジャック様こそ」
「俺は……」
そのままジャック様が無言になった。僕も無言だ。
この日の夜も体を重ねたが、特に会話はなかった。
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