おじさんが異世界転移してしまった。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

文字の大きさ
6 / 33

6話 ミランダさん家の晩御飯

しおりを挟む



 俺は今、ミランダさんのお宅にお邪魔して、ご家族の方と一緒に夕食をご馳走になっている。

 外はもうすっかり暗くなってきている、先程解体された大猪、この村人達によるとビックボアと言うそうだが、そのビックボアの肉が各家庭に行き渡るように配られていた。ミランダさん家にも先程配られてきた。

 ミランダさんは早速ビックボアの肉を切り分けて、今夜の料理に使うつもりのようだ。

 う~ん、イイ匂いが漂ってきた、味付けは塩、胡椒かな、猪肉って日本でも食べた事がないんだよね。どんな味かな? 

カチュアちゃんがミランダさんに問いかけた。

「ちょっとお母さん、今日はどうしたの? いつもより豪盛な夕飯じゃない、何かいい事でもあった?」

「何言ってんのよ、お客様がいるからに決まっているでしょう、今日だけじゃなく、これから食事を作る量を増やさないといけないかもしれないからね、今日は少し多めに作っただけよ。」

 ミランダさんは今も料理を作っている、本当にいっぱい料理を作るんだな、テーブルの上には既に出来上がった料理が置かれている。明日の朝の分まで作っているみたいだ。

 それにしても、照明器具が無いとホント薄暗いんだな。

 今はランプに明かりが灯っているから少しは見えるけど。

 電気が無いんだよな、こういう時は日本の方がいいなあと思うけど。

 まあ仕方ない。有る物でやっていくしかないんだよな。

村の生活は案外過酷なのかもしれない、長閑な村なだけに。

「パンにトマトスープ、サラダにはドレッシングが掛かって、メインはやっぱりビックボアのローストよね、あ、ウチで採れた枝豆もある、ねえお母さん、これ一日じゃ食べきれないわよ。」

「それなら、明日食べればいいじゃない、ヨシダさんが沢山食べるかもしれないでしょ。」

「いえ、ミランダさん、お気持ちは有り難いのですが、俺ももう若くないですよ、そんなに沢山は食べれないですよ。」

「遠慮しなくていいんですよ、ヨシダさん、沢山食べて下さいね。」

「は、はい、お言葉に甘えさせて頂きます。」

「ヨシダさんがウチに泊りに来て、なんだか賑やかになったみたいだわ、普段は私とカチュアの二人だけの食事なので、あまり会話がないんですよ。」

「そうなのですか?」

ここでカチュアちゃんが会話に加わった。

「そう言えば、村長さんが言っていたけど、解体したビックボアの肉は村全体に行き渡っても、まだ余っているらしいから、燻製にして町で売るんだって、さっき言っていたわ。」

「あら、そうなの、まああれだけ大きなビックボアですものねえ、貴重な村の収入源になるのかしら。」

 なるほど、確かに大きな猪だったからな、余すとこなく使われる訳か。

あんなに大きな野生動物は俺も今まで見た事無いからな、有効に使われるんだろう。

「それをヨシダさんが見事に何とかしてしまうなんて、ヨシダさんって一体何者なの?」

「ただの民間人ですよ。」

「ふ~ん、民間人ねえ~。」

「カチュア、あまり立ち入った事を詮索しては駄目よ、ヨシダさん困っているじゃない。」

「は~い。」

「あはは、どうも。」

 俺だってまさかこうなるなんて思ってもみない事だ、ただ結果的にこうなっただけで。俺自身大したヤツじゃない。ただの民間人だからな。

「さあ、出来ましたわ、今夜のお夕食です。」

ミランダさんは猪肉を塩、胡椒したローストをテーブルの真ん中に置いた。

 凄い量の肉だ、それを切り分けてお皿の上に盛り付けていく。

 うーむ、イイ匂いだ。食欲をそそる匂い、腹の虫も鳴いた。お腹が空いている事は確かだ。

「それでは・・・。」

「「「 頂きます。 」」」

早速ミランダさんお手製の料理にスプーンを付ける。まずはトマトスープからだ。

うん、うまい、トマトの酸味が利いていて実にうまい。

「このトマトスープは美味いですね。」

「うふふ、ありがとう、ヨシダさん。」

「このサラダも胡麻か何かのドレッシングが掛かっていて食欲をそそりますよ。」

「このサラダは私が作ったのよ。」

「え、カチュアちゃんが、そうなの、すごくおいしいよ。」

「褒めても何も出ませんよーだ。」

「何言ってんのこの子は、ドレッシングはウチの自家製でしょ、自分の手柄にしないの。」

「ちょっとお母さん、そんな事言わなくてもいいのよ、どーせわかりゃしないんだから。」

「いやー、このサラダに掛かっているドレッシングも最高ですよ、胡麻か何かですか?」

「うふふ、それは秘密ですよ、ヨシダさん。」

「な~んだ、教えて欲しかったな~。」

「ドレッシングは各ご家庭に秘伝の味がありましてね、村の中でも滅多に教えないんですよ。」

「なるほど、そうだったのですか、それじゃあ、あまり聞けませんね。」

「すみませんねえ。」

「いえいえ。」

 さあ、お次はメインの猪肉のローストだ、一切れをうまいことスプーンを使って掬って口に運ぶ。うん、うまい、少し歯ごたえがある癖の有るぐらいで、肉本来の旨味がある、塩、胡椒が利いていて食べ応えがある。実にうまい。

「この猪肉もうまいですね、塩、胡椒のシンプルな味付けがいいですよ。」

「これが食べられるのもヨシダさんのお陰ですわね。」

「ホントね~。」

「いやいや、大した事は、俺なんてただ逃げ回っていただけですからね。」

「そうでした、ヨシダさんが追いかけられた時は肝を冷やしましたわ、よくご無事で。」

「村にある大木に激突させるなんて、中々できる事じゃないわよ、やるじゃないヨシダさん。」

「ははは、ホント、無事でよかったです。」

あの時は本当に怖かったからなあ、正に命の危機だった。うまくいってよかった。

「それにしても、みなさん日本語がお上手なんですね、みなさんヨーロッパ風の顔立ちをしていらっしゃるから、言葉が通じないのかと思っちゃいましたよ。」

「よーろっぱ? にほん語? ヨシダさん、何言ってるんですか? 私もヨシダさんも同じアイチ語を喋っているじゃないですか、確かにヨシダさんは黒髪に黒い瞳の異国風の方だとは思っていましたけど、こうして言葉が通じているじゃないですか。」

アイチ語? はて? 名古屋弁の事じゃないよな、俺は日本語しか出来ないのだが。

 確かにこうして今も言葉が通じている。どうなってんだ? アイチ語って? 聞いた事無いな。

「そういえば、ヨシダさんって何処から来た人なの?」

「俺かい、日本って国からだよ。」

「にほん? ・・・ふーん、そうなんだ。」

 この反応、日本の事を知らない感じだな、ギダユウさんも村長さんも知らないって事は、日本ってあまり知られていない国なのかな。

 皆で夕食を食べ終わる。美味しかった。そういえば誰かの手料理なんて久しぶりに食べた気がする。

「「「 ご馳走様でした。 」」」

 俺は手を合わせて食事を終わる。あ、煙草が吸いたくなってきた。どうしよう。ちょっと聞いてみようかな。

「すみません、ミランダさん、煙草ってありますか?」

「煙草ですか、ウチの主人がよく吸っていましたわ、ヨシダさんも煙草を吸われるのですね。」

「はい、食後の後は一服と決めているので。」

「いいですよ、ウチの主人ので良ければ、今持ってきますね。」

「すみません、何か催促したみたいになってしまって。」

「いいんですよ。」

 ミランダさんは席を立ち、奥の方にある部屋へと向かった。旦那さんの煙草を持って来てくれるみたいだ、有り難い、そして申し訳ない。

 だけどこの一服だけはやめられない。二十歳の頃から吸っているからなあ。

煙草は体に良くないのは解ってはいるのだが。

「持って参りましたわ。」

「どうも、ミランダさん、かたじけないです。」

 俺はミランダさんから煙草と灰皿と、あと何か火を付けるっぽい道具を受け取る。俺は外へ向かう。

「どちらに行かれるのですか?」

「外です、外で煙草を吸おうかと。」

「ウチの中でもいいんですよ。」

「いえ、煙草のヤニが壁とかに付かないようにしますんで、それじゃあ、外へ出ます。」

 俺は玄関の扉を開けて外へと出る、煙草を一本、口に咥えて火を付ける道具を使い、煙草に火を付ける。

「ふう~~、うまい、この苦味がまたいい、やっぱり食事の後はこれだよな、旦那さんに感謝だな。」

 俺は煙草を吹かし、今までの事を思い出していた。

 やっぱり何かおかしい。

 今までの会話からも、どうにも腑に落ちない事が色々あった気がする。

どうなっているのやら。

「参ったなあ、ここは、何処なんだ………………。」

















しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ
ファンタジー
少年マキトは、目が覚めたら異世界に飛ばされていた。 野生の魔物とすぐさま仲良くなり、魔物使いとしての才能を見せる。 しかし職業鑑定の結果は――【色無し】であった。 適性が【色】で判断されるこの世界で、【色無し】は才能なしと見なされる。 冒険者になれないと言われ、周囲から嘲笑されるマキト。 しかし本人を含めて誰も知らなかった。 マキトの中に秘める、類稀なる【色】の正体を――! ※以下、この作品における注意事項。 この作品は、2017年に連載していた「たった一人の魔物使い」のリメイク版です。 キャラや世界観などの各種設定やストーリー構成は、一部を除いて大幅に異なっています。 (旧作に出ていたいくつかの設定、及びキャラの何人かはカットします) 再構成というよりは、全く別物の新しい作品として見ていただければと思います。 全252話、2021年3月9日に完結しました。 またこの作品は、小説家になろうとカクヨムにも同時投稿しています。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...