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28話 レクリオ村の夜 ①
しおりを挟む夜、村の中を自警団メンバー総出で夜警をしている。松明の明かりが村の中を点々と明るく照らしていた。自警団の皆も村の中にばらけて配置されている、いつ、と言うよりも何処からゴブリンが侵入してくるのかわからない、村の入り口からやって来る可能性は低い、おそらく柵を超えて侵入してくるだろう。
俺も松明を片手に夜警をして、辺りを警戒している。
「特に異常は無いな、静かな夜だ」
時折吹く風が草や木々を揺らし、その度にビクッとしてしまう。俺はビビリなのだ。夜という事もあり、何やら出てくるのかもしれないと、想像してしまう。ファンタジー世界だけにゴースト系モンスターがいないとも限らない。
村の見回りを続け、眠たくなってくるが、それは皆も同じだ。おっと、しっかりしなくては、俺は今、夜警をしているんだった。少し離れた場所を警戒している他の自警団から、異常無しの合図があった。俺も松明をゆっくり左右に振り動かして、異常無しの合図を送る。
冒険者達は備えている筈だ、村の中央に陣取って待機している。村の真ん中辺りの篝火(かがりび)が煌々と辺りを照らしている。まだモンスターは現れない。引き続き警戒をする。
もう村人達が寝静まった頃、風に乗ってどこからか剣戟(けんげき)の音が聞こえてきた。何かあったのか?
しばらく音を聞いていたら、むこうの方から誰かがこちらに走って来た。松明を掲げ、辺りを照らして様子を伺う。そこにはラッシャーさんがこちらに向かって走って来ていた。
「ラッシャーさん、どうしましたか? 」
「ああ! ヨシダさん、丁度いいところで! ゴブリンでさ! ゴブリンが村の中に侵入しやした! 今、冒険者の方々が向かって行っていやす! 自警団の半数を冒険者に支援を! 残りの半数で納屋の守りに就いて欲しいそうでさ! 」
「え!? ゴブリンが村に入って来たのですか! 」
どうやら入り口ではなく、柵を越えてやって来たみたいだ。自警団メンバーをばらけさせておいて正解だったな。発見が早かったのだろう。
「ゴブリンが出たぞーーー! 」
俺は村全体に聞こえる様に大声で叫んだ。村人達に知らせなくては。
「ゴブリンが出たぞーーー! みんな急いで納屋へ行けーーー! 」
ラッシャーさんも叫んだ、とにかく村人達に知らせる。他の自警団メンバーもこの事に気付いたのか、大声で叫んでいた。
村人達が続々と家から出て来て、村長さん家の納屋がある方へ移動し始めた。非難が済むまで何とかゴブリンを村人に近づけさせない様にしなくてはならないだろう。
「ヨシダさんは村の入り口に向かって下せい! ゴブリン以外のモンスターが入ってこないとも限りやせん! あっしは納屋の守りに行きやす! 」
「わかりました! お気を付けて! 」
「ヨシダさんも! 」
俺達はそれぞれ分かれ、目的の場所へ向かって走り出した。
目的地の村の入り口に近づいた時だった、他の自警団の人が入り口の見張りの為、歩哨が一人居る筈なのだが、どこにも見当たらない。おかしいな? 松明の明かりも無いし、どうしたんだ?
暗くてよく見えないが、入り口に着いた時には事態は既に進行していた。村の入り口を見張っていた自警団メンバーの一人がその場で倒れていた。
俺は倒れた人に駆け寄り、体を起こし呼びかける。
「もしもし! 大丈夫ですか! 」
倒れた人を揺さぶっても返事が無い。その場は血が溜まっていた。
「まさか!? 」
倒れた自警団メンバーの一人は既に事切れていた。
「一体誰が!? 」
決まっている、ゴブリンの仕業だ。近くにまだ居るかもしれない、慎重に辺りを見回す。
夜の闇から何かの影が動いた、俺はよく目を凝らして様子を窺う。腰に差しているハンマーを掴み、ゆっくりと引き抜く。
どこだ! どこから来る!
暗がりから1匹の何かが突如飛び掛ってきた。
「ギエエッ」
そいつは叫び声を上げながら、こちらへ飛んできた、俺は咄嗟に身をかわし、カウンターぎみにハンマーをスイングした。
ドッ、という鈍い音がして、確かな手応えを感じた。そいつはその場で倒れ込んみ、ピクリとも動かない。どうやら倒したみたいだ。
「はあ、はあ、か、体が思うように動いてくれたか、い、一体なんだってんだ・・・」
松明を掲げ、襲ってきたやつを照らして確認する。それは・・・
「・・・これがゴブリンか、」
倒れたそれを見る、もう死んでいる様だ。じっくりと観察する、体色は緑色で身長は人間の子供ぐらいの大きさ、手には棍棒を握っていたが今は手放している、瞳の色は黄色、醜悪な顔をしている、やはりモンスターなんだな。こちらを見て攻撃してきた事を察するに、おそらく性格は温厚ではない。
・・・こいつ1匹だけか? ここに居るのは・・・
辺りを恐る恐る見回す、夜の闇が広がっている。静かな夜だ、周りから不振な物音はしてこない。
「どうやらこいつ1匹だけみたいだな、この場にいたゴブリンは・・・」
問答無用で襲い掛かってきたので、やはりゴブリンは危険な存在だなと認識する。
こんなのが村の中に入って来たのか、村人達は無事だろうか、ミランダさんにカチュアちゃんはちゃんと逃げただろうか。不安ばかりが募るが、俺は今はここの入り口を見張らなくちゃならない。
辺りは静かだ、しかし油断は禁物だ。ハンマーを握る手に力を込める、松明を掲げ、辺りをくまなく照らして様子を見る。
特に変化がある訳でもない、俺の心も大分落ち着いてきた。呼吸も乱れていない。よし、大丈夫だ。見張りを続ける。
しばらくして、遠くの方から聞こえてきていた剣戟の音が、いつの間にか止んでいた。
「・・・も、もう終わったのかな」
しかし、どこか様子がおかしい、何やら風に乗って女性の悲鳴の様な音が聞こえてきていた。
「ど、どうしたんだ? もう終わったんじゃないのか」
不安に身体の震えが収まらないが、何時までもここでこうしている訳にはいかない気がしてきた。
「確かめに行かないと、何が起きているのかわからないからな」
村の入り口を見張る事も大事だが、今は特に変化は無い。俺も冒険者達の様子を見に行った方がいいのではないだろうかと思ってしまう。
「どうしようかな、」
このまま見張りを続けるか、この場を離れて村の様子を見に行く方がいいのか。
「・・・どっちにしたって、村の様子を見に行った方がいいよな、まだ安心できる状況じゃないかもしれないし、もうとっくに終わっているのかもしれないし」
剣戟の音が止んだというのが、どこか安心よりも不安が過(よ)ぎる。
「よし、俺は冒険者達の様子を見に行こう、確かめないと」
俺は村人で犠牲になった自警団メンバーの遺体を邪魔にならないところに置いて、手を合わせる。
「すいません、埋葬は事が落ち着いてからになります、それまではここで勘弁して下さい、後で埋葬しに来ますので・・・」
合掌をした後、その場を後にする。
ハンマーを握ったまま、俺は村の中を駆ける。確か冒険者達は村の中央辺りに陣を構えている筈だ。そこからゴブリンの侵入を許してしまったから、それに対応する為、戦場を移動したかもしれない。おそらくそんなに離れた場所ではないと思う。
俺は慎重に移動して、周りの様子を伺いながら静かに走る。どこにゴブリンが潜んでいるかわからないからだ、また奇襲されて襲われるのは敵わん。
ゆっくりとだが、警戒しながらなるべく速く移動して、村の中央付近までやって来た、そこには・・・
「・・・なんてこった、皆が・・・」
そこには、自警団メンバーの大半が倒れていてピクリとも動かない。血溜りを見るに、おそらくもう息が無い。
そして・・・
「あひいいいーーっ、いやあああ」
「ちょっとやだ! やめてよ! ひ、ひぎぃぃぃっ・・・」
少女冒険者二人は、ゴブリンに陵辱されていた。
「グギャギャギャ」
少年戦士は少し離れた場所で倒れていて、3匹のゴブリンに石斧や棍棒でメッタ打ちにされていた。
周りには人やゴブリンの死体が転がっていた。この場で戦いがあったんだろう。
そして・・・冒険者はやられていた・・・・。
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