おじさんが異世界転移してしまった。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

文字の大きさ
29 / 33

29話 レクリオ村の夜 ②

しおりを挟む



 冒険者達は倒されていた。

この場にいる他の自警団メンバーも全員倒れていた。

この凄惨な光景を目の当たりにして、思考が一瞬停止する。

「は! いかん! 身を隠さねば、」

俺は我に帰り、この光景に頭に血が上りかけたが、まずは自身の身の安全を考えた。松明をその場の地面に置いて、少し離れた背の高い草などの物陰に身を潜め様子を伺う。

「落ち着け、冷静になれ、今俺が一人で出て行ったって、多勢に無勢、袋叩きに遭うだけだ、」

落ち着いてゴブリン共の様子を見て、物陰から観察する。

まず、少女冒険者二人を陵辱している奴が2匹、その内、1匹は他のゴブリンとは毛色が違う、成人男性並みの身長に筋骨隆々の体、おそらくこの群れのリーダーだと思われる。

少年戦士を滅多打ちにしている奴が3匹、それを見て、遠巻きからゲラゲラと笑っている奴が2匹。

この場に居るゴブリンは計7匹、その内のデカイ奴を俺の「鑑定」のスキルで確かめる。


名前 ホブゴブリン
種別 モンスターリーダー

スキル
・ストレングス
・なし


な!? なんだと! あのホブゴブリンって奴は「ストレングス」のスキル持ちだったのか。スキル一つでこうも戦局に左右されるものなのか。だから冒険者達はやられたのか。こいつは一筋縄ではいかないぞ。

今、俺は一人だ。少女冒険者達を助けるなら早いほうがいいのは解ってはいるのだが、何とか数的不利を覆さなければならないだろう。

ここはやはり、基本に立ち返って、各個撃破戦法でいくしかないか。

まずはゴブリン共の背後まで静かに回りこむ、物音を立てないように移動する。

よし、気付かれていない、笑っているゴブリン2匹の背後を取った。

ゆっくりと静かに接敵し、笑っているゴブリンの背後から近づき、口を手で塞ぎ、声を上げさせない様にして、ハンマーをゴブリンの頭に渾身の力で振り下ろす。

ドッという鈍い音と共に、骨が砕ける感触が伝わってきて、確かな手応えを感じた。周りのゴブリンには気付かれていない。ゴブリンはぐったりしている、どうやら一撃だったらしい。

ターゲッダウン、まず1つ。続いてその隣で笑っている奴も同じ様に対処する。

ドッと鈍い音がし、その場でゴブリンがぐったりする。ターゲッダウン。倒した、これで2つ。周りのゴブリンにはまだ気付かれていない。

FPS《ファーストパーソンシューティング》ゲーム経験者を舐めて貰っては困る。見様見真似でこれぐらいの芸当は出来るものさ。

さてと、今度は少年戦士を滅多打ちにしている3匹のゴブリンだが、これは誘い込みを使う。

地面に落ちている小石を拾い、物陰から3匹の内の1匹に向かって投擲する、小石は見事に1匹に当たり、ゴブリンが1匹こちらに向かって来る。

「グブ? 」

ゴブリンは無警戒でこちらにやって来て、俺の直ぐ側まで来た時に、俺は物陰から一気に出てゴブリンの口を手で塞ぎ、ハンマーを叩き込む。

ドコッと音がしたが、その他のゴブリンには気付かれていない様子だ。ターゲッダウン、これで3つ。ゴブリンの遺体を物陰に隠す。

また小石を使って残りの奴に誘い込みをする、小石を投擲、ゴブリンに当たる。

おっと、さすがに今回は1匹ずつと言う訳にはいかなかった。2匹同時にこちらに向かって来た。

俺は物陰に身を潜めて、先頭の奴を無視してやり過ごす。その後ろから付いて来ていたゴブリンを、また口を塞ぎハンマーを振るって無力化する。その後直ぐに先頭を歩いていたゴブリンも同じ様に対処した。

ターゲッダウン、5つ。残り2つ、少女冒険者と楽しんでいる奴はこちらにまったく気付いていない。これはチャンスだ。俺はまずホブゴブリンに後ろから接近し、ユニークスキル{スキル付け替え」が反応するまでの距離まで近づく。

・・・・・・よし!うまくいった。

俺はホブゴブリンのステータスに干渉して、「ストレングス」のスキルを解除し、ついでに「弱体化」のマイナススキルをスキルスロットにぶちこんだ。

その時、少女冒険者を陵辱していたゴブリンが、事が済んだのか、ナイフを構えて少女冒険者を刺し貫こうとしていた。

迷っている暇は無い! 俺はダッシュでそのゴブリンに近づき、ハンマーで渾身の一撃を頭に見舞った。

ドコッ!

「グガ!? 」

ゴブリンの1匹は倒したが、ホブゴブリンには気付かれた。これで6つ。残りはホブゴブリンのみ。

「よーう、一対一だな」

これで数的不利は解消された。ホブゴブリンは少女冒険者から離れて、こちらに向き直った。

俺はハンマーを構えて身構える、ホブゴブリンは勢い良く走り出してこちらに接近し、拳を突き出してきた。

「グガァ! 」

俺は腕をクロスさせ、ホブゴブリンのパンチ攻撃を防御する構えを取った。

ホブゴブリンのパンチが俺のクロスした腕に当たる。

ボキッ

「グギャアアッ」

なんと、ホブゴブリンのパンチした腕があらぬ方へ曲がっていた、これは折れたな。ホブゴブリンは苦悶の表情を浮かべ、後ずさっている。「ストレングス」のスキルに頼り切っていた事が仇となった様だ。

それにしてもマジか、「弱体化」のスキルってこんなに効果があるのか。こいつは強力だ。

「さあ、いくぞ! 」

俺はホブゴブリンに接近し、ハンマーを振りかぶった、狙いは頭部、そこに力の限りを込めて渾身の一撃を見舞い、ホブゴブリンの頭が変形するぐらいのダメージを与えた。

ホブゴブリンはその場で後ろへ倒れこみ、ピクリとも動かなかった。

みんな、仇は取ったよ。

ふう~~、やれやれ、どうやらこの場のモンスターは討伐できたみたいだな。緊張した。それにしても、俺の体がちゃんと動いてくれた事がよかった。こりゃあ明日は筋肉痛だな。


{スキルポイントを1ポイント獲得しました}


おや? 何やら頭の中で女性の声が聞こえた様な気がしたが、まあ、気のせいか。

俺は陵辱されていた少女冒険者二人のもとへ駆け寄った。

「大丈夫かい? 怪我とかしていないかい? 」

「・・・うっ、ぐすっ、・・・」

「・・・・・・」

少女冒険者の一人、魔法使いの少女は泣きながら起き上がった。もう一人の弓使いのハーフエルフっぽい少女は茫然自失としていた、無理も無い。あんな酷い目に遭ったんだ、しかし、様子を見ると二人共特に怪我とかはしていない様だった。生き残りがいるだけまだマシなのかもしれない。

「立てるかい? 」

「・・・はい・・・」

「・・・立てるわ、自分で立たなくちゃ・・・」

「流石は冒険者、強いですね」

少女冒険者二人はゆっくりとだが、足に力を入れて、立ち上がった。強いんだな、二人共。

しかし、こうなってくると、納屋の守りに就いている自警団メンバーと、非難した村人達が心配だな。様子を見に行った方がいいのかな。

この場に横たわっている自警団の亡骸は今は何も出来ない、事が落ち着いたら埋葬しなくては。少女冒険者二人は、少年戦士の亡骸の前で泣き崩れていた。きっと仲良しだったんだろう。

「うう、・・・う、・・・」

「まさか、・・・こんな事になるなんてね・・・」

少女冒険者二人は少年戦士の前で祈りのポーズを取った。俺もその場で合掌した。勇敢な少年戦士と村を守った自警団達の魂に安らぎがあらんことを。

俺は少女冒険者達に何と声を掛ければよいのかわからなかった、だが、いつまでもここにこうしている訳にもいかない。納屋が心配だ。ゴブリンは少なくても10匹以上はいるとラッシャーさんが言っていた、現在までに7匹を倒した、残りはあとどれぐらい居るのだろうか。

俺は少女冒険者達に話し掛けた。

「ちょっといいかな、今、村長さんの所の納屋に村人達が避難している筈なんだ、そこが心配だから行ってみようと思う、」

「やだ、置いていかないでよ」

「・・・私達だって疲れているけど、今はそんな事言ってられないわね、私達も行くわ」

なんと、二人共付いて来てくれると言ってくれた、逞しいんだな。

「ありがとうございます、正直に言って、本当は怖かったんですよ、付いて来て貰えるだけでも有り難いです」

「あんまりあてにしないでね、この子の魔法はもう今日は使えないから、私の矢筒には2本しか矢がないし」

「はい、あまりご無理はしなくてもいいので、」

冒険者二人に付いて来て貰えるだけでも有り難い事だ。二人共疲れているだろうに、気丈に振舞っている。

若さかな。

さてと、それじゃあ納屋の様子を見に行こう。納屋の守りにはギダユウさん達の他に、確か徴税官の二人も手伝ってくれているんだったな。パールさんも戦っているのだろうか。とにかく納屋へ行こう。
















しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ
ファンタジー
少年マキトは、目が覚めたら異世界に飛ばされていた。 野生の魔物とすぐさま仲良くなり、魔物使いとしての才能を見せる。 しかし職業鑑定の結果は――【色無し】であった。 適性が【色】で判断されるこの世界で、【色無し】は才能なしと見なされる。 冒険者になれないと言われ、周囲から嘲笑されるマキト。 しかし本人を含めて誰も知らなかった。 マキトの中に秘める、類稀なる【色】の正体を――! ※以下、この作品における注意事項。 この作品は、2017年に連載していた「たった一人の魔物使い」のリメイク版です。 キャラや世界観などの各種設定やストーリー構成は、一部を除いて大幅に異なっています。 (旧作に出ていたいくつかの設定、及びキャラの何人かはカットします) 再構成というよりは、全く別物の新しい作品として見ていただければと思います。 全252話、2021年3月9日に完結しました。 またこの作品は、小説家になろうとカクヨムにも同時投稿しています。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

処理中です...