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29話 レクリオ村の夜 ②
しおりを挟む冒険者達は倒されていた。
この場にいる他の自警団メンバーも全員倒れていた。
この凄惨な光景を目の当たりにして、思考が一瞬停止する。
「は! いかん! 身を隠さねば、」
俺は我に帰り、この光景に頭に血が上りかけたが、まずは自身の身の安全を考えた。松明をその場の地面に置いて、少し離れた背の高い草などの物陰に身を潜め様子を伺う。
「落ち着け、冷静になれ、今俺が一人で出て行ったって、多勢に無勢、袋叩きに遭うだけだ、」
落ち着いてゴブリン共の様子を見て、物陰から観察する。
まず、少女冒険者二人を陵辱している奴が2匹、その内、1匹は他のゴブリンとは毛色が違う、成人男性並みの身長に筋骨隆々の体、おそらくこの群れのリーダーだと思われる。
少年戦士を滅多打ちにしている奴が3匹、それを見て、遠巻きからゲラゲラと笑っている奴が2匹。
この場に居るゴブリンは計7匹、その内のデカイ奴を俺の「鑑定」のスキルで確かめる。
名前 ホブゴブリン
種別 モンスターリーダー
スキル
・ストレングス
・なし
な!? なんだと! あのホブゴブリンって奴は「ストレングス」のスキル持ちだったのか。スキル一つでこうも戦局に左右されるものなのか。だから冒険者達はやられたのか。こいつは一筋縄ではいかないぞ。
今、俺は一人だ。少女冒険者達を助けるなら早いほうがいいのは解ってはいるのだが、何とか数的不利を覆さなければならないだろう。
ここはやはり、基本に立ち返って、各個撃破戦法でいくしかないか。
まずはゴブリン共の背後まで静かに回りこむ、物音を立てないように移動する。
よし、気付かれていない、笑っているゴブリン2匹の背後を取った。
ゆっくりと静かに接敵し、笑っているゴブリンの背後から近づき、口を手で塞ぎ、声を上げさせない様にして、ハンマーをゴブリンの頭に渾身の力で振り下ろす。
ドッという鈍い音と共に、骨が砕ける感触が伝わってきて、確かな手応えを感じた。周りのゴブリンには気付かれていない。ゴブリンはぐったりしている、どうやら一撃だったらしい。
ターゲッダウン、まず1つ。続いてその隣で笑っている奴も同じ様に対処する。
ドッと鈍い音がし、その場でゴブリンがぐったりする。ターゲッダウン。倒した、これで2つ。周りのゴブリンにはまだ気付かれていない。
FPS《ファーストパーソンシューティング》ゲーム経験者を舐めて貰っては困る。見様見真似でこれぐらいの芸当は出来るものさ。
さてと、今度は少年戦士を滅多打ちにしている3匹のゴブリンだが、これは誘い込みを使う。
地面に落ちている小石を拾い、物陰から3匹の内の1匹に向かって投擲する、小石は見事に1匹に当たり、ゴブリンが1匹こちらに向かって来る。
「グブ? 」
ゴブリンは無警戒でこちらにやって来て、俺の直ぐ側まで来た時に、俺は物陰から一気に出てゴブリンの口を手で塞ぎ、ハンマーを叩き込む。
ドコッと音がしたが、その他のゴブリンには気付かれていない様子だ。ターゲッダウン、これで3つ。ゴブリンの遺体を物陰に隠す。
また小石を使って残りの奴に誘い込みをする、小石を投擲、ゴブリンに当たる。
おっと、さすがに今回は1匹ずつと言う訳にはいかなかった。2匹同時にこちらに向かって来た。
俺は物陰に身を潜めて、先頭の奴を無視してやり過ごす。その後ろから付いて来ていたゴブリンを、また口を塞ぎハンマーを振るって無力化する。その後直ぐに先頭を歩いていたゴブリンも同じ様に対処した。
ターゲッダウン、5つ。残り2つ、少女冒険者と楽しんでいる奴はこちらにまったく気付いていない。これはチャンスだ。俺はまずホブゴブリンに後ろから接近し、ユニークスキル{スキル付け替え」が反応するまでの距離まで近づく。
・・・・・・よし!うまくいった。
俺はホブゴブリンのステータスに干渉して、「ストレングス」のスキルを解除し、ついでに「弱体化」のマイナススキルをスキルスロットにぶちこんだ。
その時、少女冒険者を陵辱していたゴブリンが、事が済んだのか、ナイフを構えて少女冒険者を刺し貫こうとしていた。
迷っている暇は無い! 俺はダッシュでそのゴブリンに近づき、ハンマーで渾身の一撃を頭に見舞った。
ドコッ!
「グガ!? 」
ゴブリンの1匹は倒したが、ホブゴブリンには気付かれた。これで6つ。残りはホブゴブリンのみ。
「よーう、一対一だな」
これで数的不利は解消された。ホブゴブリンは少女冒険者から離れて、こちらに向き直った。
俺はハンマーを構えて身構える、ホブゴブリンは勢い良く走り出してこちらに接近し、拳を突き出してきた。
「グガァ! 」
俺は腕をクロスさせ、ホブゴブリンのパンチ攻撃を防御する構えを取った。
ホブゴブリンのパンチが俺のクロスした腕に当たる。
ボキッ
「グギャアアッ」
なんと、ホブゴブリンのパンチした腕があらぬ方へ曲がっていた、これは折れたな。ホブゴブリンは苦悶の表情を浮かべ、後ずさっている。「ストレングス」のスキルに頼り切っていた事が仇となった様だ。
それにしてもマジか、「弱体化」のスキルってこんなに効果があるのか。こいつは強力だ。
「さあ、いくぞ! 」
俺はホブゴブリンに接近し、ハンマーを振りかぶった、狙いは頭部、そこに力の限りを込めて渾身の一撃を見舞い、ホブゴブリンの頭が変形するぐらいのダメージを与えた。
ホブゴブリンはその場で後ろへ倒れこみ、ピクリとも動かなかった。
みんな、仇は取ったよ。
ふう~~、やれやれ、どうやらこの場のモンスターは討伐できたみたいだな。緊張した。それにしても、俺の体がちゃんと動いてくれた事がよかった。こりゃあ明日は筋肉痛だな。
{スキルポイントを1ポイント獲得しました}
おや? 何やら頭の中で女性の声が聞こえた様な気がしたが、まあ、気のせいか。
俺は陵辱されていた少女冒険者二人のもとへ駆け寄った。
「大丈夫かい? 怪我とかしていないかい? 」
「・・・うっ、ぐすっ、・・・」
「・・・・・・」
少女冒険者の一人、魔法使いの少女は泣きながら起き上がった。もう一人の弓使いのハーフエルフっぽい少女は茫然自失としていた、無理も無い。あんな酷い目に遭ったんだ、しかし、様子を見ると二人共特に怪我とかはしていない様だった。生き残りがいるだけまだマシなのかもしれない。
「立てるかい? 」
「・・・はい・・・」
「・・・立てるわ、自分で立たなくちゃ・・・」
「流石は冒険者、強いですね」
少女冒険者二人はゆっくりとだが、足に力を入れて、立ち上がった。強いんだな、二人共。
しかし、こうなってくると、納屋の守りに就いている自警団メンバーと、非難した村人達が心配だな。様子を見に行った方がいいのかな。
この場に横たわっている自警団の亡骸は今は何も出来ない、事が落ち着いたら埋葬しなくては。少女冒険者二人は、少年戦士の亡骸の前で泣き崩れていた。きっと仲良しだったんだろう。
「うう、・・・う、・・・」
「まさか、・・・こんな事になるなんてね・・・」
少女冒険者二人は少年戦士の前で祈りのポーズを取った。俺もその場で合掌した。勇敢な少年戦士と村を守った自警団達の魂に安らぎがあらんことを。
俺は少女冒険者達に何と声を掛ければよいのかわからなかった、だが、いつまでもここにこうしている訳にもいかない。納屋が心配だ。ゴブリンは少なくても10匹以上はいるとラッシャーさんが言っていた、現在までに7匹を倒した、残りはあとどれぐらい居るのだろうか。
俺は少女冒険者達に話し掛けた。
「ちょっといいかな、今、村長さんの所の納屋に村人達が避難している筈なんだ、そこが心配だから行ってみようと思う、」
「やだ、置いていかないでよ」
「・・・私達だって疲れているけど、今はそんな事言ってられないわね、私達も行くわ」
なんと、二人共付いて来てくれると言ってくれた、逞しいんだな。
「ありがとうございます、正直に言って、本当は怖かったんですよ、付いて来て貰えるだけでも有り難いです」
「あんまりあてにしないでね、この子の魔法はもう今日は使えないから、私の矢筒には2本しか矢がないし」
「はい、あまりご無理はしなくてもいいので、」
冒険者二人に付いて来て貰えるだけでも有り難い事だ。二人共疲れているだろうに、気丈に振舞っている。
若さかな。
さてと、それじゃあ納屋の様子を見に行こう。納屋の守りにはギダユウさん達の他に、確か徴税官の二人も手伝ってくれているんだったな。パールさんも戦っているのだろうか。とにかく納屋へ行こう。
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