おじさんが異世界転移してしまった。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

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30話 レクリオ村の夜 ③

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 「ねえ、おじさんは一体何者なの? 私達が倒せなかったホブゴブリンをあっさり倒しちゃったし、もしかして元冒険者だったりする? 」

「俺かい、俺はただの民間人だよ」

村の中を慎重に歩きながら、村長さんの家の納屋へ向けて、俺と少女冒険者二人は辺りを警戒しながら進んでいる。その間、少女冒険者の一人、弓使いのハーフエルフっぽい子が聞いて来た。

「民間人? 平民って事? うそ、そんなのであの場のゴブリン共を倒せる訳ないわ、戦闘職でもないのに」

ふーむ、やはり戦いにはそういった戦闘職が向いているという訳なのか、俺はただの民間人だからな。その辺ようわからん。スキルスロットが多いのは理解できるが、そもそも何故スロットが多いのかもわからんしな。やはり、この世界に来る前にやっていたゲームのキャラクターメイキングに何か関係があるのかもしれない。

俺達は辺りを警戒しながら歩いているので、村長さん家の納屋の場所までが遠く感じる。それにどこからゴブリンが襲ってくるのかも暗くてよくわからない。慎重になりすぎるに越した事は無い。移動速度はゆっくりだ。

「とにかく、道の途中にある篝火を頼りに進んでいきましょう」

「わかったわ」

「はい」

少女冒険者二人は今は落ち着いている様だ、あんな目に遭ったのにもう気持ちを切り替えている。その辺は現役の冒険者なんだろうな、見た目の年齢からは想像できないが、おそらくそれなりに修羅場を潜ってきたのかもしれない。

歩いている途中で、弓使いの子が人差し指を口元に持って来て「静かに」、という仕草をした。

「ほら、あそこ、ゴブリンよ、村の中を物色してるみたい、どうする? 」

言われて遠くの稜線になっているところを注視する。本当だ、ゴブリンがいた! 数は2匹、ここから見える数は今のところそんな感じだ。

「よく見えますね」

「私、夜目が利くのよ、で? どうするの? 」

魔法使いの子が恐る恐る聞いて来た。

「わ、私は今日はもう魔法が使えません、足手纏いになります、おじさんはどうするべきだと思いますか? 」

「うーむ、そうだな、矢筒には2本矢が残っているんだったよね」

俺の問いに弓使いの子が弓を構えながら答える。

「ここから狙えるわ、1匹は任せて」

「それじゃあ、君達二人はこの場で待機、俺がゴブリンに近づく、1匹は俺が何とかするから残りの奴を弓で射掛けてほしい、頼めるかい」

「ええ、任せて」

俺はハンマーを持つ手を強く握り込み、気持ちを落ち着かせて行動を開始する。

「それじゃあ、行って来る」

「気を付けてね」

静かな声で励まされ、俺は静かに前進した。ゆっくりとゴブリンに近づき、あまり物音を立てない様に歩く。

「グギ? 」

もうかなりの距離まで接近した時、さすがにゴブリンには気付かれたみたいだ。2匹共こちらに向かって駆けて来る。

「さあ、こい! 」

俺はその場で立ち止まり、この場で迎撃しようと身構える。

その間に、ゴブリン共は二手に分かれて、1匹は俺の正面から、残りの1匹が俺の側面からそれぞれ近づいて来ていた。

「挟み撃ちか、だがな、それは相手が一人の時に使える戦術だ、この場合はミスだよ! 」

そう、俺は今は一人ではない。後方に冒険者が控えているのだ。

案の定、俺の側面に回りこもうとしてきたゴブリンが弓矢による攻撃を受けて、その場で倒れた。見事に喉元に命中している、一撃で終わったなこれは。流石は冒険者、弓使いの子は腕がいい。

そして、俺の正面から向かって来ていたゴブリンは何の考えも無しに突っ込んで来た、その手には石斧を持っているが、それさえ気を付ければ何とかなる。

ゴブリンが石斧を振りかぶりながら飛び掛ってきた。

「グォ! 」

俺はバックステップをして、ゴブリンの攻撃をかわす。そしてゴブリンが着地と同時に急接近し、俺のハンマーを勢い良くスイングして、ゴブリンの頭に命中する。

ドコッ! という鈍い音と共に骨が砕ける感触が手に伝わってきた。気分はあまりよくはないが、仕方ない。やらなければやられる。そういう弱肉強食の異世界なんだと自分に言い聞かせる。

ドサリ、とゴブリン2匹が倒れ、辺りは静かになった。

更に周囲を警戒する、辺りを見回し様子を見る。・・・大丈夫そうだ、もうこの辺りにはゴブリンはいないようだ。

少女冒険者二人がこちらへとやって来る、その顔は一仕事やり切った表情をしている。これが本来の彼女達の実力なのだろうな。やはりあのホブゴブリンのスキル「ストレングス」があった所為であんな目に遭ったんだな。

「片付いたみたいね」

「はわ~、おじさんも中々やりますねえ~」

「いやあ、援護があったからうまくいったんですよ、支援攻撃、ありがとうございます」

弓使いの少女は照れくさそうに後ろの頭をぽりぽりと掻いた。

「ま、まあね、これぐらいの事はやってのけるわよ、それよりおじさん、すごいじゃない、ただの民間人にしては戦えるじゃないの」

「ははは、本当は戦闘なんて苦手なんですけどね、自分もまだやられる訳にはいかないという事ですよ」

この場の戦闘は片が付いた、もう少し先に行ったら村長さんの家がある筈だ。そこまでは更に慎重に行動しよう。

俺達は再び、警戒しながら歩き始めた。

慎重に警戒しながら歩いているので、村長さんの納屋までの距離が遠く感じる、しかし、ここで気を緩める訳にはいかない。もうゴブリンがいないとも限らない。

「さっきから気になっていたんだけど、」

不意に、弓使いの少女から声を掛けられた。

「なんですか? 」

俺達はゆっくりと歩きながら会話する。

「おじさんの持っている武器ってなに? 見たところただのハンマーに見えるんだけど」

「ああ、これ? これはただのハンマーだよ、俺はこいつじゃなきゃしっくりこないんだ」

俺は少女冒険者達にハンマーを見せる。二人共不思議そうな顔をして見ている。

「ただのハンマーよね、魔法効果が付与されている物でもないみたいだし、それでホブゴブリンを一撃で倒しちゃった訳? なんか納得できないわね」

「ま、まあ、それは色々とあるみたいだからね、ただのハンマーっていっても、これだって当たれば結構なダメージを与えられるんだよ、だから奴を倒せたと思うんだよね」

俺のユニークスキル、「スキル付け替え」は秘密にしておいた方が無難だろうな。

「まあ、おじさんがそう思うなら、それでいいんだけどね、おじさんって本当に元冒険者じゃないのよね」

「はい、俺はただの民間人なので」

「ふーーん」

ちょっと無理があったかもしれないが、しかし話はここまでの様だ。

「見えてきた、あれが村長さん家の納屋だよ、」

しばらく歩いていたら、目的地の少し手前まで来た。ここから納屋も見える。しかし・・・

「何かしら? 剣戟の音はまだ聞こえてくるんだけど、ここから見た感じじゃ、1匹のホブゴブリンがいるみたいね、やっぱり私達と同じ様に苦戦しているのかしら」

「ええ~、だったら急ごうよ、私達が受けた依頼はこの村の防衛だよ、」

「そうね、急いだ方がいいわね、おじさん、おじさんも手伝って貰えると嬉しいんだけど」

「勿論そのつもりだよ、この村には世話になっているからね、」

少女冒険者達はそれぞれ武器を構えて、意気込みも良く勇敢に挑もうとしていた。ここで俺だけ逃げる訳にはいかない。俺だって何かの役には立つかもしれないからな。

俺と少女冒険者二人は、辺りを警戒しながら歩みを速くして、納屋へ向けて急ぐ。さてと、もう1匹ホブゴブリンがいたとは思わなかったが、これが現実ってやつなのかもしれないな。あのモンスターもやはり強いんだろうか、慎重に事に対処しなくては。









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