おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

文字の大きさ
128 / 222

第127話 サスライガー伯爵の正体 ②

しおりを挟む


 ブリーフィングルームから外へと出て、作戦説明を聞いた後にそれぞれが行動を開始する。

装備課へ行き、装備を申請して整える。軍で正式に採用されている鎧と兜だ。

革鎧に鉄の胸当てをくっつけた様な鎧と、鉄兜だ。みんなが同じ装備をしていると、流石に緊張してくる。

 その後は備品課へ行き、回復薬を貰い、ポケットに入れる。これで装備は整った。

完全武装の兵隊がグラウンドに集結していて、物々しい雰囲気を漂わせている。

 中隊長の命令で出撃し、町中を歩く。周りの人々からは物々しい雰囲気に、何事かと緊張が走っている様子が窺える。

 完全武装の兵士達が、町中を進んでいるので、子供たちからはキャッキャという声が聞こえ、俺達兵士に遠巻きながらカッコいいと話している様だ。

大人たちからは敬遠されているが、まあ仕方ない。これから大捕り物があるのだ。不安になるのも頷ける。

途中からブラボー中隊に合流する為、アルファ中隊がやって来る。道の途中で合流し、このまま領主の屋敷へと向かう。

ここでの懸念事項は、やはり伯爵の私兵の存在だろう。俺達とやり合う事になりそうである。

だが、こちらから仕掛けるのではなく、基本的に様子見が任務だ。兎に角、俺達は領主の屋敷に人を近づかせない事が任務となっている。

 暫く町中を進んで行くと、見えてきた。領主の屋敷だ。広い敷地にやたらと大きな屋敷だ。流石領主。お貴族様である。いい所に住んでいるようだ。

貴族街に居る貴族たちも、不安に思っているのだろう。兵士達を見て、顔を強張らせている。

 領主の屋敷に到着した。やはりと言うべきか、伯爵の私兵が屋敷の周りを囲んでいて、防御の意思を示している。

その中には、女海賊たちの姿も確認できた。あそこに居るのは、やっぱり居た。ちびっ子船長だ。錨を地面に立て置き、待ち構えている。

(あのちびっ子が暴れたら、間違いなく怪我人が出るな。)

たらりと冷や汗が出る、何とかあのちびっ子を説得しなければ、被害が出る。

俺達兵士と伯爵の私兵の間に、言い知れぬ緊張感が漂う。一触即発の状況だ。お互いに武器を構えていないのが、何よりの事だな。向こうの陣営も、本当は戦いたくないと顔に出ている。

俺は気を引き締め、サキ隊長に進言する。

「サキ隊長、ここは自分に任せて貰えないでしょうか? なるべく穏便に事を運びたく思います。」

「ああ、そうだな。あの女海賊の子供は強い。ジャズ曹長ぐらいしか相手に出来ぬだろうな。任せる。」

「ありがとうございます、隊長。」

屋敷の周りに伯爵の私兵がこちらを向いて囲んでいて、それをアリシア軍の兵士が取り囲むという状況だ。

お互いに一歩も引かないという感じになっている、とても危険な感じだ。

まずはこの状況を何とかしなくては。

俺は一歩前に出て、ちびっ子の前に一人で向かい、ゆっくりと近づく。

緊張した面持ちで、ちびっ子が錨に手を掛け始め、こちらの顔を見て一言呟いた。

「何だ、あの時の兵隊さんか。何しに来た。」

俺とちびっ子は視線を交わし、向かい合って話をする。

「よう、元気だったか? ちびっ子。」

「ああ、お陰様でね、何しに来た?」

ちびっ子は仁王立ちして、鋭い眼光を向けてきた。

「サスライガー伯爵を護送しに来た。王都までな。」

「それをあたいがさせるとでも思ったのかい? 軽く見られたもんだねえ。」

ちびっ子は錨を持ち、構え始めた。

「おいおい、間違えるなよ。俺達は犯罪者を拘束しに来た訳じゃない。伯爵を犯罪者として扱うつもりは無い。」

「………兵隊さんの事は信用してるけど、他の兵隊は信用出来ない。あたいは伯爵様を守る。その為に此処に居るんだ。邪魔しないでよね。兵隊さん。」

ちびっ子は錨を肩に担ぎ、俺にこれ以上近づくなと睨みをきかせてきた。

ここはまず、相手を落ち着かせる為に、ゆっくりと言葉を選び伝える。

「なあ、ちびっ子。俺達は何もやり合う為に此処まで来た訳じゃない。領主のサスライガー伯爵を王都まで護送しに来ただけだ。犯罪者じゃないんだから。」

「そんな事言って、あたいを騙そうとしたって駄目だかんね。」

「サスライガー伯爵をどうするのかは俺達の領分じゃない。それを決めるのは王様だ。女王だ。伯爵から詳しい話を聞いて、その上で判断するんだと思う。」

「じゃあやっぱり捕まえにきたんじゃないか! させないよ!」

ちびっ子は少々感情的になっているようだ、錨を構え始めた。

ふーむ、ここは一つ軽く接触してみるか。

ちびっ子は錨を振り回しながら、接近してきた。俺はそれを素手で受け止め、ガシッと掴む。

「は! 放せ!」

「いや、放さん! いいから聞けちびっ子! お前が暴れれば暴れる程、伯爵の立場が悪くなるんだぞ! いいか、良く聞けよちびっ子。俺達は犯罪者を捕まえに来た訳じゃない。伯爵を重要参考人として王都まで護送するだけだ。解るな?」

「………。」

ちびっ子は黙ったまま、錨をスッと後ろへ下げる。

「ちびっ子じゃない。リスティルだ。」

「リスティルか、俺はジャズだ。なあ、ちびっ子。お前等は大人しく成り行きを見ててくれないか? 悪いようにはしないつもりだ。」

リスティルは俯き、武器を降ろして放心状態になっている様だ。

「伯爵様は、悪人じゃないんだ。悪く無いんだ。いい人なんだ。」

「ああ、解った、だが、金鉱脈の存在を隠していた事実は覆らん。その事に関しては、俺達はノータッチだ。判断やこれからの伯爵の進退は、王の前でありのままの事をつまびらかにし、その後、沙汰を言われると思う。」

「………。」

ちびっ子は肩の力を抜き、立ち尽くしたが、顔を上げて、俺に意思を伝えた。

「あたいも一緒に行く。伯爵様の後を付いて行って、最後までこの目で見ておく。いいよな? それぐらいは?」

「ああ、妨害しなければ、好きにすればいいと思う。兎に角、ますは落ち着け。な? ちびっ子。」

「………解った、あたい等は大人しくしておく。」

「ああ、そうしてくれると助かる。」

ふ~、やれやれ、何とか戦わずに済んだか。正直ちびっ子の強さは他の兵士より段違いに強いからな。よかった。

こうして、俺達は屋敷を取り囲み、アルファ中隊も予定通りに行動し、サスライガー伯爵の屋敷を取り囲んだ。

ちびっ子たちは少し離れた場所で、仲間たちとひそひそと話しながら、事態の成り行きを見ていた。

よーし、これで伯爵の私兵とは戦わずに済んだな。後はチャーリー、デルタの両中隊が屋敷に入って証拠を押収して、サスライガー伯爵に状況を伝えてご同行願うだけだ。

 そういやあ、ナナ少尉の方はどうなったのかな? サキ隊長がナナ少尉を監視していると思うが。

ナナ少尉は今回の騒ぎに動じず、任務を全うしたようだな。こっちもよかった。

下手な事にならなくて安心した。気疲れしたよまったく。ちびっ子もナナ少尉も、今は大人しくしている様だ。

護送用の馬車が、屋敷の前に到着した。これにサスライガー伯爵を乗せて運び出すんだな。

「最後まで気を抜かない様にしなくては。」

何時、何があるか解らん。事は慎重に運ばなくては。

中隊同士のやり取りの結果、サキ小隊とナナ小隊の二隊が伯爵の馬車の護衛を任された。

やれやれ、まだこれで終わりじゃないか。こっからが正念場かもしれんな。伯爵の護送任務、しっかりしなくては。

サスライガー伯爵を乗せた馬車は、貴族街を通り抜け、そのまま壁門まで進み、門衛に手続きをしてから町の外へと出た。

順調にいけば、王都まで二日の行程だ。何事もなければだが。

伯爵の私兵からは嫌な顔をされたが、ちびっ子は俺達護衛班の後を付いて来ていた。

その表情は不安な顔が張り付いていたが、街道にモンスターが出現すると、率先して行動し、容赦なくモンスターを倒していた。

王都まで二日、しっかり護送任務をしよう。


クラッチを出た時、ナナ少尉はその表情を曇らせていた事に、誰も気づかなかった。













しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成
ファンタジー
「異世界転生して天下を統一したら元の世界に戻してあげる」 大学生の明彦(あきひこ)は火事で死亡した後、転生の女神にそう言われて異世界転生する。 だが転生したのはなんと14歳の女の子。しかも筋力1&武器装備不可! 降り立った場所は国は三国が争う中心地の激戦区で、頼みの綱のスキルは『相手の情報を調べる本』という攻撃力が皆無のサーチスキルというありさま。 とにかく生き延びるため、知識と口先で超弱小国オムカ王国に取り入り安全を確保。 そして知力と魅力を駆使――知力の天才軍師『諸葛孔明』&魅力の救国の乙女『ジャンヌ・ダルク』となり元の世界に戻るために、兵を率いたり謀略調略なんでもして大陸制覇を目指す!! ……のはずが、女の子同士でいちゃいちゃしたり、襲われたり、恥ずかしい目にあわされたり、脱がされたり、揉まれたり、コスプレしたり、男性相手にときめいたり、元カノ(?)とすれ違ったりと全然関係ないことを色々やってたり。 お風呂回か水着回はなぜか1章に1話以上存在したりします。もちろんシリアスな場面もそれなりに。 毎日更新予定。 ※過去に別サイトで展開していたものの加筆修正版となります。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

処理中です...