143 / 222
第142話 アリシアの英雄
しおりを挟む俺達は今、アリシアの王都にある王城へと上がっている。
ここは謁見の間だ、女王レイチェルの前でこれまでのゴップでの経緯を報告している。
謁見の間には、ダイサーク様にカタリナ様、ジャズー王子も居る。
他にも軍務卿や宰相、近衛騎士、ブルーヘルムの面々、何かの文官など、偉い人たちが揃っている。
緊張する、こういうのはどうも苦手だ。女王に失礼の無い様にしなければ。
「………………以上が、自分が見聞きしたゴップ王国内での出来事であります。」
俺の報告を聞き、女王は顎に手を添えて、うんと頷きつつも真剣に聞いてくれている。
他の周りの人達も、俺の報告を聞いて、それぞれ口に出し、その詳細を確かめる為の言葉を放つ。
報告しつつ、意見が出たところで逐次詳細を伝えて、話が進む。
そして、あらかたの報告を終えて、一息つき、カタリナ様の方を向き、リード王子からの伝言を伝える。
「それと、レイチェル様とカタリナ様へ、リード様より最後の伝言がございます。」
「最後………………、聞きましょう。何か?」
カタリナ様が尋ねると、レイチェル様も固唾を飲んで聞く姿勢をする。
「は! では伝えます。「幸せならばそれで良い。」………と、最後に仰られていました。」
俺の言葉を聞き、女王もカタリナ様も、顔を伏せ、涙声で体を震わせながら労う。
「………………そう……ですか。解りました、ご苦労様でした、確かに伝わりました。」
「ジャズ曹長、リスティル、ご苦労でした。………よく情報を持ち帰りました。確かに聞きましたよ。」
二人共、どこか悲しんでいる様子で、しかし、気丈に振舞って俺たちを労った。
追い出されたとは言え、カタリナ様にとっては夫で、レイチェル様にとっては父親だ。
その遺言じみた最後の言葉を聞き、二人共悲しんでおられるご様子だ。無理も無い。
暫く沈黙が流れたが、そこでダイサーク様より、俺達に対して、何か褒美を取らせてはどうかと意見が上がった。
「うーむ、ゴップでの事は解った。ご苦労だったな、二人共、それにしてもゴップ王がまさかな、その様な暴挙に出るとは、これでは戦争どころでもあるまい。」
「ダイサーク叔父上の言う通りですね、ジャズ曹長等が持ち帰った情報は貴重です。戦は終わり、という事でよろしいのではないでしょうか。」
「そうだな、ジャズーの言う通りだ。今後は事後処理や戦後処理に追われる様になるだろう。ユニコーン王国からの使者も、こちらの正当性を理解してくれておる様だし、一先ずは良しとしよう、グラードル将軍の事は残念ではあるが、これも戦での事。遺族たちは覚悟をしておっただろう。」
ここで、ダイサーク様が一つ咳払いをし、俺達の方を向き言葉を掛けられる。
「さて、この者達に何か褒美を取らせようと思うが、何が良いかな? 女王よ。」
「そうですね、結果を見れば、アリシアとゴップとの全面戦争を回避出来た事になりますからね、この者達の活躍を考えると、褒美は必定ですね。二人は何か欲しい物はあるかしら?」
おっと、いきなりそんな事言われてもな、思い付かないぞ。
隣に傅いているちびっ子は、顔をニヤニヤしながら俺の答えを待っている。
(おい、褒美だってよ。どうする?)
(あたいは何でもいいよ、兵隊さんが決めなよ。)
ふーむ、そう言われてもなあ。真っ先に思い付く事は、やはりお金かな。
「恐れながら、我等には、金一封を頂ければ、これに勝る喜びは御座いません。」
「うーむ、その様な物で良いのか? なんとも俗っぽい事よな。もっと欲しい物はないのか?」
ダイサーク様はこう言うが、お金は大事である。俺はスローライフを送る為に、お金を貯めているのだ。
ちびっ子も、目の中がコインの形をしていた。お金が欲しいのだろう。
と、ここで女王レイチェルから、こう意見があった。
「では、金一封と、それから、わたくしから「アリシアの英雄」の称号を授けます。おめでとう。ジャズ曹長。」
アリシアの英雄!? 俺が? 似合わねえ。
「やったね! 兵隊さん。」
「あ、ああ。」
ちびっ子は喜んでいたが、俺は正直、過分な称号だと思う。
英雄や勇者など、柄じゃないのだ。俺は只の兵士なのだよ。
しかし、称号を賜ったからには、お礼を言わなければならない。金一封も貰えるし。
「は! 有難き事で御座います。その名に恥じぬ様、日々精進して参ります。」
ここで、女王から声高らかに宣言をする。
「アリシアの英雄に、祝福あれ! アリシアを救った英雄に、幸あれ!」
そして、周りから拍手喝采が巻き起こる。
「「「「「 おめでとう! アリシアの英雄よ! 」」」」」
「君達のお陰で、戦争は終わったのだ。よくやってくれた! 英雄よ、この先の活躍に期待する。」
パチパチパチパチパチパチ。
「「「 わああああーーーーー。 」」」
なんてこった!? 英雄に祭り上げられてしまった。こんなのは俺の性分じゃないんだよな。
「ど、どうも。」
声がカラカラだ。喉が渇いている。英雄など、俺には似合わないだろうに。
そして、ジャズー王子から、声を掛けられる。
「二人は後ほど、私の部屋へ。」
「は! 殿下。」
そう言えば、本来はジャズー王子から受けた極秘任務だったんだよな、本当ならまず先に殿下に報告すべきだったかもしれない。
まあ、リード王子との約束もあったし、女王レイチェルへの報告が先になってしまったが、より詳しい内容をジャズー王子に報告するという事だな。
こうして俺は、「アリシアの英雄」の称号を貰い、金一封も頂いた上、二人で謁見の間を退出したのだった。
待合室で待っていると、メイドさんがやって来て、俺達を案内する。
ジャズー王子の私室の前で止まり、ノックをして返事を待つ。
「どうぞ。」との返事を聞き、俺達は部屋の中へと通される。
ジャズー王子の私室だ、既に王子がソファーに腰を掛けていた。
「やあ、座ってくれ二人共。」
「は、失礼します。」
促されて、ソファーに座る。メイドさんがタイミングを見計らったかのように、紅茶を出してくれる。
「さて、まずは「アリシアの英雄」おめでとう。ジャズ。」
「は、恐れ入ります。それと、先ずは殿下にご報告しなければならなかった筈でしたが、女王に報告する形になりました。」
「いや、それで構わない。よくやってくれた。グラードル将軍の事は残念だったが、全面戦争に発展しなかった事が、何よりの戦果だったと私は思う。」
「はい、戦など、しない方がいいのは間違いない事ですからね。」
紅茶を飲みながら、しばし談笑をする。話題は俺の英雄になった話がもっぱらだ。
肩身が狭い、英雄など柄じゃない。だが、ちびっ子も殿下も、面白がって話題を振る。
俺は「ははは。」と、適当に相槌を打ち、話を流す。
そして、ゴップ王国で見聞きした事柄を、ジャズー王子に詳細に報告した。
「うーむ、アークデーモンに、カオス復活の兆しか。ゴップ王国も色々と大変な状況だったみたいだね。」
「はい、義勇軍やシャイニングナイツとの連携が今後、必要になってくるかもしれません。また、それらの後方支援組織、「クインクレイン」との情報交換の精度を密にしなければ、対応できないかもしれませんね。」
会話の内容は、暗く沈んだモノになった。今後、混沌の勢力がどの様に行動してくるのか、それを見極める必要が出てきた。
冗談じゃないよまったく。混沌の王、カオスだって?
只でさえ、闇の崇拝者の動向が落ち着いて来たってのに、また厄介事が舞い込んで来たって事か。
ふーむ、俺のスローライフは、まだまだ出来そうにないな。こりゃ。
こうして俺は、ゴップ王国での任務失敗を、ジャズー王兄殿下に報告したのだった。
30
あなたにおすすめの小説
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた
巫叶月良成
ファンタジー
「異世界転生して天下を統一したら元の世界に戻してあげる」
大学生の明彦(あきひこ)は火事で死亡した後、転生の女神にそう言われて異世界転生する。
だが転生したのはなんと14歳の女の子。しかも筋力1&武器装備不可!
降り立った場所は国は三国が争う中心地の激戦区で、頼みの綱のスキルは『相手の情報を調べる本』という攻撃力が皆無のサーチスキルというありさま。
とにかく生き延びるため、知識と口先で超弱小国オムカ王国に取り入り安全を確保。
そして知力と魅力を駆使――知力の天才軍師『諸葛孔明』&魅力の救国の乙女『ジャンヌ・ダルク』となり元の世界に戻るために、兵を率いたり謀略調略なんでもして大陸制覇を目指す!!
……のはずが、女の子同士でいちゃいちゃしたり、襲われたり、恥ずかしい目にあわされたり、脱がされたり、揉まれたり、コスプレしたり、男性相手にときめいたり、元カノ(?)とすれ違ったりと全然関係ないことを色々やってたり。
お風呂回か水着回はなぜか1章に1話以上存在したりします。もちろんシリアスな場面もそれなりに。
毎日更新予定。
※過去に別サイトで展開していたものの加筆修正版となります。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜
仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。
森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。
その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。
これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語
今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ!
競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。
まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。
異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!
まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。
そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。
生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す
名無し
ファンタジー
ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。
しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。
封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する
鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。
突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。
しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。
魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。
英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる