おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)

文字の大きさ
158 / 222

第157話 ギルドランク昇格試験 ③

しおりを挟む


  アリシア王国 王都 女神神殿――――


 昼下がりの神殿内にて、シャイニングナイツのマーテルは日課である見回りをしていた。

「今日も異常なしですね、穏やかな日々が続いているようです。」

マーテルは、この女神神殿に務めている王族の一人、シスターサナリーの護衛を任されていた。

そんな折、ふと気配を感じたマーテルは一瞬警戒し、その場で立ち止まる。

「………どなたですか?」

気配を察知したマーテルは、その相手へ向け、警戒心を露わにした。

しかし、柱の物陰から姿を現したのはエルフの女性だった。その姿を確認したマーテルは、ほっと一息つき、警戒心を緩めた。

「まあ、サーシャ様ではありませんか、いつこちらに?」

物陰から出てきたのは、女神教会の聖騎士隊の生き字引。サーシャであった。

「やあ、ちょっとそこまで来たんで、マーテルの様子を見に来たよ。」

「突然の御来訪、心に良くはありませんわ。一体どうしたのですか?」

マーテルが尋ねると、サーシャはにこやかに返事をした。

「うーん、エストールの巫女殿が何かを感じたらしくてね、それで調査しに来たという次第なのだよ。」

「巫女様が? 何かとは? 何ですか?」

「うん、どうも、勇者がこの国に居るらしくてね、それで私が調べに来た訳さ。」

「まあっ!? 勇者ですか!!」

「しーー、声が大きい。まだ確証の無い事柄だからね、あまり騒ぎ立てない様にしてほしい。」

勇者と聞いたマーテルは、心が躍った。遂に勇者の存在が巫女の感知に引っ掛かったのだと。

「それが事実ならば、急いで確かめねば。どこですか? その勇者が居るというのは?」

「マーテルは知らないの? それらしい活躍をした殿方が居るらしいんだけど。」

マーテルはその場で思考を巡らせ、思い当たる人物を思い浮かべる。

しかし、勇者と呼べるような男は、すぐには思い当たらなかった。

「うーん、ちょっと解りません。本当に勇者かどうかも解らないのでしたら、「自称勇者」の可能性もありますからね。」

サーシャは肩を落とした、自称勇者だったら今まで何人も見てきたからだ。

今回も、自称勇者の可能性が考えられるので、あまり期待はしていなかったが。

「そっかあ、マーテルでも知らないかあ。じゃあ今回は駄目かもね。心当たり無いんでしょう?」

「………。」

「マーテル?」

マーテルが沈黙し、サーシャが尋ねると、マーテルは少し思考を巡らせて、思い当たる人物を一人思い浮かべた。

「………一人、可能性があるかも、という人物が居ます。」

「え? 誰?」

「アリシア軍の兵士をしている、ジャズさんという方です。その方は義勇軍ですよ、もっとも、勇者の可能性は低いのですが。」

マーテルの言葉を聞き、サーシャは一瞬、勇者を想定した。だが、直ぐに平静になった。

「可能性が低いのでしょう、あ~あ、また自称勇者かあ~。それに義勇軍って、700年前は凄かったけど、今の義勇軍は飲んだくればかりなのよね。あーあ、期待外れかなあ~。」

サーシャはつまらなさそうに両腕を後ろへと組み、天井を仰ぎ見た。

「でも、ジャズさんは自分の事を勇者とは名乗ってはいませんから、自称勇者とは違いますけどね。義勇軍ではありますが。」

「ふーん、義勇軍ねえー。」

「サーシャ様、もしよろしければ、クラッチの町へ行って、サスライガー伯爵に会われては如何ですか?」

「クインクレインのメンバーに? うーん、じゃあちょっと行ってみようかな。」

「それが良いと思います、伯爵でしたら、何かジャズさんの最近の情報を得ていると思いますので。」

マーテルが促すと、サーシャは直ぐにテレポートの魔法を発動させた。

「マーテルの元気な顔を見れたし、私はもう行くわね。」

「相変わらずせわしない人ですね、とても二千歳を越えているとは思えない落ち着きの無さです。」

「誉め言葉として、受け取っておくわ。じゃあね。」

そして、あっという間にサーシャは忽然と姿を消した。転移魔法を使ったのだろう。

「はあ、巫女様が感じられたという殿方、もしかしてジャズさんの事でしょうか?」

マーテルは一人呟き、ジャズの事を思い出していた。

「そうですねえ、不思議な方とは思いますが、勇者とは違いますし、解りませんね。」

そうして、マーテルはいつものように神殿内の廊下を歩き、見回りを再開したのだった。


  クラッチの町近辺 北東の森――――


 森の手前で俺達は相談している、隊列をどうするか。

「ラット君は戦士だったよね?」

「そうっすよ。」

ふむ、戦士は前衛で決まりだな。後は。

「それじゃあ隊列を組みます、俺とラット君が前衛、姐御が中衛、ガーネットが後衛、で、いいかな?」

「オッケーすよ。」

「問題無いわ。」

「ジャズ、私は後ろからパーティー全体を見る役ね?」

「そう言う事、宜しくね。」

「任せて。」

後は、戦闘になったら、どう対処するかだな。姐御は居ない者として考えないと。試験なんだから。

「モンスターとエンカウントしたら、まず俺とガーネットが遠距離から仕掛ける。で、ラット君が前衛壁役になってモンスターの足止め、いいかい?」

「いいっすよ。」

「よおーし! やってみる。」

気合十分のところへ、姐御が吟味する。

「ふーん、いいじゃない、ジャズ。ちゃんとリーダーしてるわよ。」

「どうもです。姐御は基本、待機で。」

「解ったわ。」

よっしゃ、いよいよ森へ入るぞ。緊張するなあ、俺がリーダーなんて務まるかな? まあ、やってみるしかないか。

「ガーネット、薬草はどの辺りに群生しているんだい?」

「任せて、薬草は森の浅い所に自生しているわ。まずはそこまで行ってみましょう。」

「解った、じゃあ出発。気を付けて行こう。」

こうして俺達は、森の中へと入っていった。

 森の中はうっすらとした暗さがあり、空気が澄んでいた。木々が乱立しているので、見通しは悪い。

どこからモンスターが現れるか解らん、慎重に行動しよう。気配を感じ取り、周りを見回す。

森には小動物なども生息していて、鳥の鳴き声なども聞こえる。

草の葉が揺れるのを見逃さず、一旦立ち止まり、様子を窺う。

一党に緊張が走る、だが杞憂だった。草を揺らしたのはウサギだった。

「ふう~、驚かせやがって、ウサギかよ。」

ラット君が額の汗を拭い、また前進が始まる。ゆっくり慎重に。

しばらく進んでいくと、ガーネットが教えてきた。

「この先よ、薬草の群生地は。」

お、どうやら最初の目的地に到着するらしい。まずは薬草の採取だ、Eランクの試験内容の一つだな。

しかし、先客が居た。

ヒューマン、ではない。冒険者、でもない。

俺は片手を上げ、パーティー全体の前進を止めた。

「止まって、この先に何か居る。どう見てもモンスターのゴブリンだ。」

「動いた! こっちに気付いているみたいっすね!」

ラット君も気配に気づいたみたいだ。やるなあ、斥候《スカウト》の経験があるのかな?

ガーネットに指示を出す。

「ガーネット、ここから狙撃できるかい?」

「ええ、出来るわ。ロングボウの射程と威力は凄いんだから。」

「よし、ゴブリンは二匹、右の一匹は頼む。俺は左の奴をナイフ投擲する。」

「オッケー、タイミングは?」

「俺がガーネットに合わせる。先に仕掛けてくれ。」

「解った。」

薬草の群生地は開けた場所だ、狙いを付けるには丁度いい。

ガーネットが弓に矢を番える、俺もナイフを抜き、構える。狙いは左の奴。

「狙いはバッチリ!」

ガーネットが仕掛けた。そのタイミングで俺もナイフを投擲、二人の息はピッタリだ。

ガーネットの矢が右のゴブリンの喉に突き刺さり、倒す。

俺のナイフが左のゴブリンの頭蓋を貫通し、倒す。

よし、音も無く始末した。静かなものだ、ゴブリンの増援も無い。どうやらこの二匹だけだったらしい。

「よし、一撃で倒した。やるじゃないかガーネット。」

「ジャズこそ。」

しばらく様子を見て、モンスターの気配が無い事に安堵し、再び進み薬草の群生地に到着した。

「ふう~、まずは一段落、さあ、ここで薬草を採取していこう。」

「確か、二束必要なのよね。」

「ああ、試験ではそうだったから、二束でいいよ。ラット君と姐御は辺りの警戒を頼む。」

「了解っす。」

「………へえ~、ジャズってば、案外やるじゃない。ガーネットもだけど、二人共よくゴブリンを一撃で倒せたわね。」

おや、姐御から褒められたぞ。嬉しいな。まあゴブリンが相手では実力を推し量るのは難しいと思うが。

ゴブリンぐらいなら、何とか倒せる力はあるのだよ。俺もガーネットも。

「お、俺だってゴブリンぐらい討伐できるぜ。」

おや、ラット君が対抗心を燃やしている。いいな、若者はそうでなくてはな。

次の機会があれば、ラット君にもモンスターを討伐してもらおうかな。

そして、薬草の採取を終えた俺達は、そのまま森で休息を取るのだった。




















しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

知力99の美少女に転生したので、孔明しながらジャンヌ・ダルクをしてみた

巫叶月良成
ファンタジー
「異世界転生して天下を統一したら元の世界に戻してあげる」 大学生の明彦(あきひこ)は火事で死亡した後、転生の女神にそう言われて異世界転生する。 だが転生したのはなんと14歳の女の子。しかも筋力1&武器装備不可! 降り立った場所は国は三国が争う中心地の激戦区で、頼みの綱のスキルは『相手の情報を調べる本』という攻撃力が皆無のサーチスキルというありさま。 とにかく生き延びるため、知識と口先で超弱小国オムカ王国に取り入り安全を確保。 そして知力と魅力を駆使――知力の天才軍師『諸葛孔明』&魅力の救国の乙女『ジャンヌ・ダルク』となり元の世界に戻るために、兵を率いたり謀略調略なんでもして大陸制覇を目指す!! ……のはずが、女の子同士でいちゃいちゃしたり、襲われたり、恥ずかしい目にあわされたり、脱がされたり、揉まれたり、コスプレしたり、男性相手にときめいたり、元カノ(?)とすれ違ったりと全然関係ないことを色々やってたり。 お風呂回か水着回はなぜか1章に1話以上存在したりします。もちろんシリアスな場面もそれなりに。 毎日更新予定。 ※過去に別サイトで展開していたものの加筆修正版となります。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

処理中です...