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第三章
ヴェルターという男
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いつものカフェ。
そこに圭と薫とかなみがいた。
わざわざ連絡役用意したのにかなみが来るのは本気の表れ。
嶋崎は都合がつかなくて集まることができなかった。
「相手の力を奪い、それを与える能力ですか……」
この集まりは前回圭が潜入した与力の儀についての報告のためである。
そこで見た光景を話すのだけど真実の目でのことは話せない。
なので多少圭の推測も混ぜているような感じで話した。
保坂から何かを抜き出して、それを他の人に移したら強くなったようだった。
それはまるで力を移したみたいだったと口にして圭は印象を操作した。
「本当なら危険な話よね」
悪魔教が覚醒者を強くするなんてウソだと思っていたのだけれど話を聞いてみるとあながちウソでもなさそうであったことが分かった。
ただその方法が問題で他人の力を奪って他の人に移してしまうなどとんでもないことである。
本当のことであるならば早く止めねばならない。
「けれど仮面をかぶっていては何も分かりませんし難しいですね……」
さらには圭が連れていかれた別荘地は電波が入らない圏外となっていてスマホのGPSなどから捜索も出来なかった。
途中までの動きから大体の地域は分かるらしいが建物の特定までは難しいようである。
圭があった人たちもみんな仮面をかぶっていて顔も分からない。
圭自身は他の人と交流したわけでもないので他の人に関するヒントもないと薫は小さくため息をついた。
「……その実は」
思ったよりも潜入調査が長引くかもしれない。
そう思っていたら圭が意を決したように口を開いた。
「何かしら?」
「俺にはスキルがあるんです」
「スキルが? 何のスキルなのかしら?」
「人の名前が分かるんです」
「人の名前がですか?」
「戦いに役立つものじゃないので秘密にしてきましたがそうしたスキルがあるんです」
このままでは潜入を続けても事態に進展がないかもしれない。
状況を打開するには何かの情報やきっかけが必要だと思った。
薫やかなみは信頼できる人だと思う。
けれど能力のことを話して良い相手かはまだちょっと分からない。
圭の能力を知る人はまだ少ないほど良い。
そこで圭は自分のスキルの一部だけを伝えることにした。
あくまでも名前が分かる能力であるだけのスキルだと圭は2人に教えた。
「だからこうした潜入でもお役に立てると思って引き受けたんです」
「ふーん……」
覚醒者のスキルというものも謎が多い。
戦闘に使えるものばかりではなく、中には戦いに使えないようなものもある。
圭の言う名前を確認できるスキルもそんなものないと言えはしない。
このような状況で圭がウソをつく必要なんてないので薫もかなみもそのようなスキルがあるのだなとすぐに納得した。
「ではつまり……」
「はい。仮面をかぶっていても名前は確認してきました」
「それは助かります!」
圭があの場にいた人たちの名前を書いた紙を薫に渡した。
「こちらの人たちの調査はこちらで行いましょう」
「ふふ、さすがね圭君。何かご褒美いる? 私と1日デートとか……」
「遠慮しておきます」
「もう、つれないわね」
「記者に追いかけ回されるのは嫌ですよ」
かなみは目立ちすぎる。
今こうしてカフェに立ち寄るのが精一杯で1日デートなんてしたら圭はしばらく色々な人に追いかけ回されるのはことになるだろう。
「……村雨さん」
「なんですか?」
「このお名前、本当ですか?」
「どのお名前でしょうか?」
「ヴェルター・ギースラーという名前です」
「俺が見た限りは……何か問題でもあるんですか?」
「私の記憶に間違いがなければこの名前は欧州連盟の大使と同じ名前です」
欧州連盟とはヨーロッパの諸国が集まって出来た組織である。
ゲート発生の最初期ではそれぞれの国だけでは対応しきれなくて多くの国が危機に瀕していた。
そのためにヨーロッパの国々は団結してゲートに立ち向かった。
そうしたヨーロッパ全体を活動域とする覚醒者の組織を欧州連盟と呼ぶのである。
日本の覚醒者協会や覚醒者との交流を目的として派遣されていた欧州連盟の大使の1人がヴェルターという男であった。
「本当に大使なのかは分かりませんが大使でしたら厄介ですね……」
欧州連盟の大使はいわゆる外交官と同じ扱いになる。
外交特権によって保護されていて調べるのも簡単な相手ではない。
「しかもこの方がその儀式を取り行ったのですね……」
進展しそうだと思ったのにまだ厄介な問題が出てきた。
薫は目尻を押さえて悩ましげにため息をついた。
「私も一度会ったことがあるわよ。ちょっとカタコトだったけど上手に日本語を話す品の良い人に見えたけど……まさか悪魔教だなんてね」
「儀式を行うということは拝金教の中でも上の役職なのでしょうね。大使であれば調べにくい……本当なら上手いこと潜り込ませたものです。相当気を使って慎重に調べなきゃいけませんね」
こうなると単純に踏み込んで逮捕するわけにもいかなくなった。
その場にいたからというだけではなく完全に証拠を固めて言い逃れもできないようにしてからでないと国際問題になってしまう。
「ともあれ、お名前だけでも分かったのはありがたいです。村雨さんありがとうございます」
「いえ、伊丹さんも無茶はしないでくださいね」
「ご心配ありがとうございます」
圭にできるのは名前を教えるぐらい。
薫やかなみがあまり無茶をしなければいいけれどと圭は少し心配になった。
そこに圭と薫とかなみがいた。
わざわざ連絡役用意したのにかなみが来るのは本気の表れ。
嶋崎は都合がつかなくて集まることができなかった。
「相手の力を奪い、それを与える能力ですか……」
この集まりは前回圭が潜入した与力の儀についての報告のためである。
そこで見た光景を話すのだけど真実の目でのことは話せない。
なので多少圭の推測も混ぜているような感じで話した。
保坂から何かを抜き出して、それを他の人に移したら強くなったようだった。
それはまるで力を移したみたいだったと口にして圭は印象を操作した。
「本当なら危険な話よね」
悪魔教が覚醒者を強くするなんてウソだと思っていたのだけれど話を聞いてみるとあながちウソでもなさそうであったことが分かった。
ただその方法が問題で他人の力を奪って他の人に移してしまうなどとんでもないことである。
本当のことであるならば早く止めねばならない。
「けれど仮面をかぶっていては何も分かりませんし難しいですね……」
さらには圭が連れていかれた別荘地は電波が入らない圏外となっていてスマホのGPSなどから捜索も出来なかった。
途中までの動きから大体の地域は分かるらしいが建物の特定までは難しいようである。
圭があった人たちもみんな仮面をかぶっていて顔も分からない。
圭自身は他の人と交流したわけでもないので他の人に関するヒントもないと薫は小さくため息をついた。
「……その実は」
思ったよりも潜入調査が長引くかもしれない。
そう思っていたら圭が意を決したように口を開いた。
「何かしら?」
「俺にはスキルがあるんです」
「スキルが? 何のスキルなのかしら?」
「人の名前が分かるんです」
「人の名前がですか?」
「戦いに役立つものじゃないので秘密にしてきましたがそうしたスキルがあるんです」
このままでは潜入を続けても事態に進展がないかもしれない。
状況を打開するには何かの情報やきっかけが必要だと思った。
薫やかなみは信頼できる人だと思う。
けれど能力のことを話して良い相手かはまだちょっと分からない。
圭の能力を知る人はまだ少ないほど良い。
そこで圭は自分のスキルの一部だけを伝えることにした。
あくまでも名前が分かる能力であるだけのスキルだと圭は2人に教えた。
「だからこうした潜入でもお役に立てると思って引き受けたんです」
「ふーん……」
覚醒者のスキルというものも謎が多い。
戦闘に使えるものばかりではなく、中には戦いに使えないようなものもある。
圭の言う名前を確認できるスキルもそんなものないと言えはしない。
このような状況で圭がウソをつく必要なんてないので薫もかなみもそのようなスキルがあるのだなとすぐに納得した。
「ではつまり……」
「はい。仮面をかぶっていても名前は確認してきました」
「それは助かります!」
圭があの場にいた人たちの名前を書いた紙を薫に渡した。
「こちらの人たちの調査はこちらで行いましょう」
「ふふ、さすがね圭君。何かご褒美いる? 私と1日デートとか……」
「遠慮しておきます」
「もう、つれないわね」
「記者に追いかけ回されるのは嫌ですよ」
かなみは目立ちすぎる。
今こうしてカフェに立ち寄るのが精一杯で1日デートなんてしたら圭はしばらく色々な人に追いかけ回されるのはことになるだろう。
「……村雨さん」
「なんですか?」
「このお名前、本当ですか?」
「どのお名前でしょうか?」
「ヴェルター・ギースラーという名前です」
「俺が見た限りは……何か問題でもあるんですか?」
「私の記憶に間違いがなければこの名前は欧州連盟の大使と同じ名前です」
欧州連盟とはヨーロッパの諸国が集まって出来た組織である。
ゲート発生の最初期ではそれぞれの国だけでは対応しきれなくて多くの国が危機に瀕していた。
そのためにヨーロッパの国々は団結してゲートに立ち向かった。
そうしたヨーロッパ全体を活動域とする覚醒者の組織を欧州連盟と呼ぶのである。
日本の覚醒者協会や覚醒者との交流を目的として派遣されていた欧州連盟の大使の1人がヴェルターという男であった。
「本当に大使なのかは分かりませんが大使でしたら厄介ですね……」
欧州連盟の大使はいわゆる外交官と同じ扱いになる。
外交特権によって保護されていて調べるのも簡単な相手ではない。
「しかもこの方がその儀式を取り行ったのですね……」
進展しそうだと思ったのにまだ厄介な問題が出てきた。
薫は目尻を押さえて悩ましげにため息をついた。
「私も一度会ったことがあるわよ。ちょっとカタコトだったけど上手に日本語を話す品の良い人に見えたけど……まさか悪魔教だなんてね」
「儀式を行うということは拝金教の中でも上の役職なのでしょうね。大使であれば調べにくい……本当なら上手いこと潜り込ませたものです。相当気を使って慎重に調べなきゃいけませんね」
こうなると単純に踏み込んで逮捕するわけにもいかなくなった。
その場にいたからというだけではなく完全に証拠を固めて言い逃れもできないようにしてからでないと国際問題になってしまう。
「ともあれ、お名前だけでも分かったのはありがたいです。村雨さんありがとうございます」
「いえ、伊丹さんも無茶はしないでくださいね」
「ご心配ありがとうございます」
圭にできるのは名前を教えるぐらい。
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