人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~

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第四章

フィーネの初めて見る世界2

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「おお、みんなおかえり」

「今のお客様か?」

「うむ、なんだったかな、ギルド名は忘れたが引き抜きの誘いじゃよ」

「引き抜き?」

「うちのギルドで専属の鍛冶職人として働かないかとな」

 みんなで装備を工房に運び入れる。
 先ほどの男性は八重樫工房を自分のギルドに引き入れるために交渉しに来た覚醒者だった。

 装備品事情も世の中様々である。
 一般の覚醒者は覚醒者の装備を売っているお店に修理を依頼したりするが、大きなギルドになると企業と提携していたり自分のところで装備品を扱う覚醒者を雇っていたりする。

 しかし覚醒者になってわざわざ装備品を作るという道に進む人は少ない。
 そうした道において教えてくれる先達者も少ないために装備品を扱えるプロフェッショナルの数は圧倒的に足りていないのである。

 その点でいけば八重樫工房も人が殺到しそうなものだが覚醒者装備のお店としてはあまり有名ではない。
 そもそも八重樫工房の売り上げのメインは刀匠体験や見学などで覚醒者装備の売り上げも多くない。

 装備品だって最初に圭たちが出会った時のように他にある覚醒者装備のお店に置いてもらっているものが売れるぐらいなのだ。
 直接八重樫工房まで来る人はそんなに多くないのである。

 カレンなんかはもう少し宣伝して売り上げを伸ばそうとしていたみたいだが圭たちの仲間となったので計画だけしてやめていた。

「新しく設備も整った工房を用意するからというがなんで俺らが引っ越さねばならないのだ」

 和輝はぶつくさと文句を言っている。
 付き合ってみるといい爺さんではあるのだが仲良くなるまでは多少偏屈な感じがあることは否めない。

「……にしてもそれはなんだ?」

「トモダチノトモダチ、トモダチ!」

「げっ、フィーネ」

 いつの間にかフィーネが和輝の前に姿を現していた。
 フィーネは考えた。

 和輝の前に出てもいいのかを。
 和輝が圭たちの友達であるのかを。

 会話の感じや表情から和輝との関係性を推測して和輝なら大丈夫だと判断したのである。
 和輝は少し警戒している。

 明らかにモンスターに分類されるものでどうにかして荷物に紛れ込んできたのかと手を持った仕込み杖を抜こうと構える。

「ま、待ってください! フィーネは怪しいもんじゃなくて!」

「爺さん、ダメだぞ!」

 圭とカレンが慌ててフィーネを守るように前に出る。

「こやつはなんだ?」

「これは……」

 圭がフィーネについて和輝に説明する。

「トモダチ!」

「……それで連れてきたというのか?」

 和輝は渋い顔をしている。
 経緯はどうあれフィーネがモンスターであることに変わりはないのだ。

 連れてきたというのは簡単であるが何か問題が起きた時に責任を取らねばならなくなる。

「だって……放ってもおけないしね」

「かわいそうだろぅ?」

「む?」

 この場合において常識的なのはどう考えても和輝の方なのである。
 しかし圭たちはフィーネの境遇というものを目の当たりにしてしまった。

 もはや感情移入気味になっている女性陣に和輝が敵うはずもなかった。

「……どの道連れて帰ってきたのは圭だからな。責任も圭にある」

「それはそうなんですけど……」

 さらりと手のひらを返して全部を圭に押し付けた。
 圭をマスターとしていて、さらにはリーダビリティギルドとしての活動中に下された判断であるので何かが起きた時の責任の所在は圭にある。

 圭もフィーネを今から研究所に戻すつもりはない。
 ため息をつきながらも問題が起こらないように願うしかない。

「昔カレンと優斗が犬を拾ってきたこともあったな。その時も大変だった……」

「なんだかんだで爺さんも可愛がってたじゃないか」

「……まあそうだな。引き取ると決めたのなら最後まで責任を持つことだ」

「もちろん放置するつもりはないですから」

「トモダチ?」

「こんな年寄りでも良ければ友達になろう」

「トモダチ!」

 無邪気なフィーネを見て和輝が笑う。
 少し懸念していた和輝はフィーネのことをみんなの判断に任せることにした。

「ただ他には見せん方がいいかもしれないな」

 和輝は手を伸ばしてフィーネを撫でる。
 犬とは比べ物にならないがツルツルとした手触りはそれほど悪くない。

 モンスターというだけで嫌悪感をあらわにする人もいる。
 フィーネが見つかって広く知られてしまうとどうなるか和輝にも想像はつかない。

「そもそもストーンゴーレムと言ったがこやつはストーンゴーレムなのか?」

「フィーネ!」

「すまんすまん、フィーネだな」

「確かにそうだねぇ。最初はストーンゴーレムっぽかったけれど今はちょっと微妙だねぇ」

 最初フィーネはメイド服をまとった不思議なストーンゴーレムだった。
 そのためかとりあえずフィーネをストーンゴーレムと呼んでいたけれど現在のフィーネを見るとストーン要素はない。

 そういえばと圭は思い出した。
 フィーネを真実の目で見た時ストーンゴーレムだとは表示されなかった。

『フィーネ
 レベル1
 総合ランクH
 筋力G
 体力G
 速度G
 魔力F
 幸運G
 スキル:物質吸収、形態変化
 才能:貪欲な学びの意思』

「……あれ?」

「どうかしたかい?」

「いや……フィーネにステータスが」

 ゴーレム製作者の研究所で見た時にはただ情報しかなかった。
 なのに今はステータスが見えている。

 それに才能値も表示されていない。

「マスター?」

「……ほんと不思議だな」

 フィーネが何なのか、謎は深まるばかりである。
 このまま側に置いていいのかも分からない。

「まあでも様子見るしかないか……」

 ただ圭は何となく思うのだ。
 フィーネは敵ではない。

 子供のようなフィーネを導かねばならない、と。
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